地方には、大きなパチンコ店が
いくつもある。

競合店との争いも熾烈だ。

絶対に風が強かったのだと思うが
朝行くと、入り口の窓ガラスが
割れていることなんかもよくあった。

オープン時は賑わっていた
ぼくらの店も競合店を前に
だんだんとお客さんは減っていった。

幹部たちは日に日に
ピリつき出していった。

そんな時に迎えた給料日。

「おつかれさん!」

と、手渡しで封筒を渡された。

ヤケに薄い…

中を確認してみると

言われていた金額より
余裕で少ない。

半分もない。逆破格バイト料だ。

はい、思った通り〜

「ど、どうするよ?」

仲間と二人で話し合う。

幹部たちは

絶対に何も聞いてくるんじゃねぇ!

と、いつものように念力を飛ばしている。

しかし、これは解釈の違いではなく
明らかに話しが違う。

恐る恐る聞いてみる。

清水の舞台から飛び降りたのは
この時がはじめてだった。

「あの〜、会長に言われていた金額と
 違うんですけど〜」

「は?知らねぇーし
 そんなん聞いてねぇーし」

「…ですよね〜」

知らないのなら仕方がない。

じゃねぇーし!!

これはさすがに引き下がれない
なんせ1ヶ月働いたのだ。

新台入れ替えで、夜中から
次の日の夜まで働いたことだってあった。

労働基準法なんて
なんのそので働いたのだ。

「ふざけんな!
 話しが違うじゃねぇーかっ!!」

とは、とても言えなかった

だって、怖いんだもん。

このまま泣き寝入りしかないかと
諦めていた時、奇跡が起こった。

1ヶ月間、1度も顔を出さなかった会長が
現れたのだ。

なんでだろう
会長には、ちゃんと話せそうな気がした。

黒の中で、グレーを見ると
やけに白く見えるみたいなことなのだろうか
会長には、ちゃんと話せそうな気がした。

「会長!言われていた金額と
 違うんですけどっ」

会長は、それどころではない感じで

「あとで振り込んでやるから
 今日はそれ持って帰れ。」

と言う。

幹部を引き連れ
バタバタと事務所に入っていく姿に
それ以上、声はかけられなかった。

それから1週間働き
三上は会長の言葉を信じ
東京に帰えることにした。

もう少し働くように進められたが
かぶせ気味に断った。

しかし、一緒に行った仲間は
もう少し残って働くと言う。

信じられない…

たぶん、催眠にかかり易いタイプ
なのだろう。

心配だったが、仲間を残し
パチンコ店をあとにした。

そして

肝心な給料はというと…

後日、奇跡的に振り込まれた!

やはり会長は白かった…

どうなることやらと思った恐怖のバイト
だったが、結果としては様々な体験をし
芸の肥やしになったのかなと思う。笑

パチンコ店の皆様
いろいろお世話になりました。
ありがとうございました!




しかし



この話には後日談がある。

一緒に行った仲間の名前を
伏せているのもそのせいだ。

三上が去ったあと
2ヵ月もしないうちに
そのパチンコ店は潰れた。

仲間は
その2ヵ月の間に起きた出来事を
未だに話そうとはしない。

三上も、あえて聞こうとはしなかった。

いったい何があったのか…

真相は謎のままだ。


どうしても気になる人は

鈴木優介に聞いてください。

…あっ