<小論文:4月1>
今月は医療系の問題です。
テーマ:医療倫理・生命倫理
<問題>
終末期医療における自己決定権と家族の役割
<はじめに>
推薦入試の小論文では、一つのテーマを多面的に考える力が求められます。
今回はこのテーマについて、異なる二つの立場から回答例を示します。
高3の受験生や、推薦入試を考えている方の参考になれば幸いです。
小論文では、どちらの立場を選ぶかよりも、理由を筋道立てて書けるかどうかが大切です。
自分ならどの立場で書くか、考えながら読んでみてください。
<回答>
【回答①:自己決定権を最優先とする立場】
終末期医療において、患者の自己決定権をどこまで尊重すべきかは重要な課題である。延命治療の選択や中止の判断は生命に直結するため、家族の意向や医療者の判断が強く影響しがちである。しかし、本来その人生を生きてきた主体は患者自身であり、最終段階においてもその意思は最大限尊重されるべきではないだろうか。
第一に、自己決定権は個人の尊厳の根幹である。医療は患者のために存在する以上、たとえ家族が強く延命を望んでも、患者が望まない治療を強いることは尊厳の侵害となる。また、事前指示書やアドバンス・ケア・プランニングの普及は、本人の意思を事前に明確化する有効な手段である。これにより、判断能力が低下した場合でも、患者の価値観に基づく医療選択が可能となる。
一方で、家族は精神的・経済的負担を担う存在であり、その意向を無視することは現実的ではない。しかし、家族の役割は最終決定者ではなく、患者の意思を推定し支える代弁者であるべきだと考える。
以上より、終末期医療においては自己決定権を最優先とし、家族はそれを支える立場に位置づけることが、患者の尊厳を守る医療倫理の基本であると結論づける。
・・・
【回答②:家族の役割を重視する立場】
終末期医療では患者の自己決定権が重要視されるが、家族の役割もまた極めて大きい。特に日本社会のように家族関係が密接な文化では、医療の決定は個人だけで完結するものではないという視点も必要ではないだろうか。
終末期には患者の判断能力が低下する場合が多い。その際、家族は長年の関係性を通して患者の価値観や人生観を最も理解している存在である。単なる代理人ではなく、患者の人生を共有してきた共同体の一員として、意思決定に関与する意義は大きい。また、延命治療の選択は家族の生活や心情にも深く影響する。家族が納得できない形で治療が進められれば、後悔や葛藤が残る可能性もある。
もちろん、家族の意向が患者の明確な意思と対立する場合は慎重な検討が必要である。しかし、医療は個人と家族の関係性の中で営まれる社会的行為でもある。
したがって、終末期医療では自己決定権を尊重しつつも、家族を重要な意思決定の主体として位置づけ、対話を通じて合意形成を図る姿勢こそが、現実的かつ倫理的な在り方であると考える。
<ワンポイント1:ラインアップ>
今回は小論文コーナーの全体図について。
このコーナー、1年かけてやってみます。
内容は大きく三つ。医療系学部の小論文、理工系学部の小論文そして文化系学部の小論文。
それぞれ四つテーマがあります。
医療系学部は、1医療倫理・生命倫理。これは四月。2地域医療・社会と医療。これは七月。3チーム医療・医療者の資質。これは十月。4医療と科学技術。これは一月。
次に理工系学部。1科学技術と社会。これは五月。2 AI・情報技術。これは八月。3環境・エネルギー。これは十一月。4ものづくり・産業。これは二月。
最後に文科系学部。1社会・現代課題。これは六月。2法・政治。これは九月。3経済・経営。これは十二月。4教育・文化・人間。これは三月。
以上のラインアップです。
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