真っ暗闇というのを経験したことがあるだろうか。
私は中学の時、マンションに住んでいたが、近くで起こった小規模な火災の影響で、突然マンションは停電となった。
外に出ようとエレベーターホールに行ってみても、当然ながらエレベーターは動いておらず、外に出るのには階段を使うしかないわけで、滅多に使わない階段スペースの防火扉を開けた。
そこから入って地上を目指したのだが、自分が開けた防火扉が閉まった瞬間、未知の世界が広がった。
階段は建物の中心部に位置しており、窓がないおかげで、全く光の無いブラックホールのような状況であった。
手すりにつかまりながら闇の中を進んだが、いったい自分が何階を歩いているのかさえ分からず、なんともこれまた未経験の恐怖感みたいなのにも襲われたが、どうにか1階に到着し防火扉を開けて光というものに再開することができた。
今なら非常灯とか設置され、そんな闇を経験することもないのだろうが50年近く前の話である。
数分間の暗闇の中の歩行であったが、還暦を結構過ぎた私の人生を振り返っても、最初で最後の貴重な経験となった。
・・・おの・・・
