(前回の続き)


通帳に記帳された毎月50000円のカード会社への支払い。

それが何を意味するものか、

なんのためのお金なのか、まったく検討もつかないまま

家族そろって久しぶりに食卓を囲みました。


食事も終わり、片付けもしてのんびりしていました。


こんな風に家族がそろってこんな時間に

のんびりするのなんて、どれくらいぶりだろう・・・



せっかくの団欒タイムを崩したくない思いもありましたが、

はっきりさせなければ・・・



旦那に恐る恐る、もう一度尋ねました。



「ねぇ、給与明細と通帳持ってきてよ」


「やけん、ごめん。営業所においてるって」


「もしかしたら持って帰ってきたりしてるかもしれないやん。

スーツのジャケットに入ってたりとかさ・・・」


「ないよ」


「じゃあ、とりあえず見るだけ見てみようよ!」


と、私が立ち上がると

私の前に立ちふさがる旦那。


「ごめん。ホント、勘弁して。

 こんな時だから勘弁して。

 来週持って帰ってくるけん」



ここで、

実はカバンの中に通帳と明細が入っているのを見たと

言うべきか言わないべきか・・・


カバンを開けて見たといったら

これから旦那はカバンを無用心に家におくこともなくなるかもしれない。

それは、困る・・・



言うべきか言わざるべきか・・・




「じゃあ、これに毎月の給料がいくらなのか書いてよ」


と紙とペンをさしだしました。



おとなしく従う旦那。




  『26~27』



数字を書いて

「だいたいいつもこんな感じ」と言いました。



私がこっそり見た通帳には毎月だいたい30万前後の給与振込み。


その差額は何?


その差額と、毎月カード会社に支払ってる5万円が

妙に一致してたりして・・・。




旦那の口座から引かれているものは、

携帯電話代とガソリン代。

それは合計で3~4万ほど。


26~27万の給料だから、携帯代とガソリン代を

差し引いて、いつも22万持って帰ってきてる。


旦那はそう説明しました。



携帯代とガソリン代で何千円か余分にあまることもあるけど

それはもらってた・・・と。



まぁ、それくらいはヨシとしよう。




でも、納得がいかない。



通帳も明細もあるのに見せようとしない。



私は

「やっぱり、カバンも見てみようかな~」

冗談まじりに立ち上がりました。


「ホントにないって!お願いやけん、やめて!!」

必死で抵抗する旦那。


こりゃ、腹すえて話し合うしかないかな。。。



「さっき●●(次男)が、仕事のカバンをあけてしまったんやけど

その時に、通帳も明細も入ってるのが見えた。

なのになんで嘘つくの?」



「入ってないって!」と、それでもごまかす旦那。



無言のまま数分がすぎ、

旦那が堰を切るように話し始めました。



「ごめん・・・

まだ言ってないことがある。」




担当店の売り上げによって、本部からお店の家賃の一部が支払われるという

システムがあるらしい。

ギリギリのところだったけど、「多分大丈夫ですよ!」とお店に

話していた旦那。

売り上げが悪いときに申請しても、家賃は払ってもらえないので

いい時のタイミングをみはからって申請をしなければならない。


そんなときに、怒涛のごとく押し寄せてきた仕事。

ただでさえ殺人的な通常業務に加え大きなイベントが続き

まわりから見ても、酷すぎる仕事の量でした。


言い訳にすぎないけど、

そのせいでその申請にも手が回らず、

手をつけようとしたら売り上げが届かず申請できない・・・

ホントにタイミングを逃してしまったらしくて。


店には「大丈夫ですよ!」と言っていた手前

今更、家賃がでないとはいえない状態になってしまったらしい。


かといって、当時それを相談できるような上司は一人もいない。

そんなことを言えば

「きさまぁ!」と罵声を浴びせるような上司だったからね。


追い詰められた旦那は、その家賃を自分が負担することを決意。


キャッシングして毎月8万円の家賃をお店に渡していた。


「本部から出ましたんで!」といいながら・・・


だいぶん前からそれをしていて、

今回、担当店がかわり、その店へ行った別の同僚に

お店が

「今月、家賃まだですか?」

とたずねたらしく、

もちろん、その同僚も

「は?」 ナンノコトデスカ?状態。


それで発覚してしまったということらしい。


毎月8万、キャッシングしながら5万の返金。

当然3万円は着実に利子とともに積もっていくわけで・・・


「じゃあ、給料をごまかして持って帰ってきてたということ?」


「ごめん・・・」


「なんでそんなになる前に誰かに相談しなかったの!」


でも、相談できるような上司がいなかったんだよね・・・それは本当に気の毒。



信頼してたのに、裏切られた!という気持ちが

最初はすごく強くて、頭の中が真っ白になりました。


だけど話をしていくうちに

誰にも言えず一人で抱え込んで、会社にも家族にもばれないように

膨れ上がっていく借金を目の前にどれだけ苦しんでいたことか・・・と

思うと、せつなくて。


「人がよすぎるんだよ!!

 人のために会社からですって給料からお金を店に渡して。

 自分は借金を重ねて、苦しんで・・・バカすぎる!」



「誰にも言えなかった・・・」



「死のうって何度も思って・・・

 だけど、judyも頑張ってるしそんなことしたらイカンと思って・・・




そこまで思いつめてたんだ・・・


正直ショックでした。

夫婦なのに、そんなに悩んでいたことまったく気づかずにいた自分に

腹がたつやら、旦那が情けないやら・・・。


明るくて、クヨクヨしない。

どんな逆境にも立ち向かえる。


そんな風に私は旦那のことを思っていたから。


だけどそれは、うわべだけだったんだ。

弱いとこを見せまいとそう思わせていたんだ。



旦那がこんなに泣いているのは知り合って11年たつけど

初めてでした。


あと借金は100万くらいあるようで・・・



私はお金を借りるのが、絶対に嫌な人なので

簡単に借金を作ったりする人の気持ちがまったくわかりません。


借りたものは返さないといけないのに・・・


だけど、今の我が家の経済状態からは

そんな金額どこからも出てきません。


すると旦那が


「部長が、それは会社からって言って渡してる金で、

店も受け取ってたんだから、会社はおまえに返さなくちゃいけないって言ってた」と。



そりゃあ当然ですとも。

働いて頂いた給料の中から、

会社に還元してたんですからね。



申請のタイミングを失った旦那はズルズルと

借金生活にはまっていき

時間がたてば経つほど誰にもいえない状態へ追い込まれていったわけです。


「でもさ、キャッシングしにいく時間があったら、

 なんでそこで誰かに相談しないの?!」



そんな不祥事起こしたんだから

そりゃあ、仕事もさせてもらえないのは仕方ないかもしれないよね。


今までコツコツとあんなに頑張って積み重ねてきた

信用を、旦那は自らの手で崩してしまったんだから。


きちんと反省すべきことは反省して、

それでも前に進まなくちゃいけない。


子供もいるんだから、これからは逃げないで

ちゃんと向き合って頑張っていこうよ!という

話し合いでその日は終わりました。


旦那の前では、しっかりしてなくちゃいけない。

そう思っていた私の心の中は、

喪失感が蔓延していました。


給料をごまかしていた旦那を責めたい気持ち、

その5万円を持って帰ってきてくれていたら

どれだけ余裕のある生活になったか・・・、

誰にも言えずずっと悩んで追い詰められていた旦那、


どこにも怒りを向けることのできないむなしさがありました。



とうとう、旦那の隠していたことが全て

はっきりし、これからは前を向いてしっかり

向き合っていかなくてはいけません。


だけど、これから

前を向かせない現実が次々と私たち夫婦に

押し寄せてくるのです。