秋が深まりつつあります。コロナ禍が落ち着いてきたので少し外出を増やしています。ウォーキングを目的に足の向くまま神戸市内を巡っています。すると兵庫区にある工場前に展示されている新幹線の「ひかり」号、その横に従来線の「こだま」号に出会いました(写真)。ひかり号には本当にお世話になりました。役目を終え、静かに佇んでいる姿には心が惹きつけられました。

 

写真 神戸川崎重工業の兵庫工場で展示されている「ひかり」と「こだま」

初代新幹線0系車両のひかり号には懐かしさ一杯です

 

   我が国ではコロナの新規感染者が急激に減少しています。皆様も少しほっと一息もされていることでしょう。しかし油断はなりません。何故なら日本とは真逆に外国では現在、コロナ禍が大流行しているからです。

WHOの事務局長が「我々は再び感染の震源地にいる」という深刻な感染状況なのです。世界の新規感染者数は8月には減少傾向にあったものの、10月後半からは再上昇しているのです。イギリスでは1日の新規感染者数が4万人以上、ドイツでは同5万196人(11月11日)という凄まじい状況なのです。

これに対し日本の新規感染者は最近、1日200人を切っています。11月7日では1年3ケ月振りに死亡者は0でした。日本はコロナの小康・小休止状態にあるのです。「コロナ禍は終息したか」とさえ思って (あるいは錯覚して) いる日本人は外国での感染状況にはピンとこないところです。

このような日本の感染者数激減に外国から驚きの目が向けられています。例えばイギリスの新聞ガーティアンは日本を「崖っぷちからの復活、驚きのサクセスストーリー」と評価しています。また韓国は「日本ではPCR検査が少ないのに感染者数が激減していること」に疑念すら呈しています。

   では何故、日本では短期間で新規感染者が激減したのでしょうか。これについては専門家が様々な意見を述べています。しかし本当のことは不明です。私は日本のワクチン接種状況が独特なかたちで進められたことが、ひとつの原因ではないかと推論しています。それは次のような推論です。

   日本のワクチン接種の開始時期が先進諸外国に比べ約2ケ月遅れことが、結果的に現在の感染抑制に繋がったという推論です。厚生労働省がワクチンを承認し、医療従事者の先行接種が開始されたのが2月17日、高齢者の接種開始は4月12日と外国に比べて2ケ月以上の出遅れでした。ところが日本では接種がはじまると世界最速のスピードで実施が進みました。接種率の大逆転劇が実現されたのです。この猛速こそが、コロナ阻止のキーポイントとなったのです。つまり猛速のワクチン接種とデルタ株の流入がほぼ同時に重なり、ワクチン効果を持つ人が急速に増加したのです。その結果、コロナを抑制できたというわけです(もちろん私はワクチン接種開始が遅れたことを称賛しているわけではありません)。

反対に早く接種が開始された外国では一時的に感染が抑制されたことにより人々の緊張が緩みました。加えて早期に接種が完了していたため、時間の経過とともにワクチン効果が低下していました。そのスキに付け込むように感染力の強いデルタ変異株が襲来してきたのです。特に早期接種を完了した高齢者ではワクチン効果の低下のため一挙にブレイクスルー感染がおこったのです。

 

   それにしても日本では猛速のワクチン接種が何故、可能だったのでしょうか。それは日本人が報道などでコロナを強く恐れたこと、外国にあるような反ワクチン運動が少ないこと、そして何よりも日本人の知性が予防接種を理解し受け入れたこと等々が考えられます。現在では70%以上の日本人が2回接種を完了しています。諸外国では打ち破ることが難しい70%の壁を私達は簡単に乗り超えたのです。これは日本人の歴史的な子孫に誇りうる一大快挙だと私は思っています。

 

   しかし、ここで安心してはいけません。私達は第6波を抑制せねばならないからです。小休止の今こそ、次のパンデミックを阻止する準備が必要です。それには世界一のワクチン先進国イスラエルが参考になります。同国では昨年の12月19日に世界に先駆けて接種を開始し、集団免疫が期待されるまでになりました。ところが再びデルタ変異株によるパンデミックに襲われ、大規模なブレイクスルー感染やクラスター発生がおこりました。これに対し3回目のブースター接種が7月から開始され、致死率の急激な低下がもたらされました(図1)。ブースター接種の効果が大きいことが示されたのです。

ですから今、大事なことは3回目のブースター接種の実施であります。すでに日本政府は2回接種完了して8ケ月経過した全ての人を対象とし、希望する人には12月以降に無料でブースター接種をすることを決定しています。岸田政権はコロナに対しフットワークが良く、期待しています(因みに菅・前政権はコロナ対応には、それなりの功績があったと私は評価しています)。堀内ワクチン担当大臣は来年3月以降には一日あたりの接種回数が90万回を超えると想定しています。これは一大国家事業です。人類の未来のためには成し遂げるべきです。私も接種業務を出来る限り応援をしたいと思っています。

 さてブースター接種に効果はあるとしても副反応が心配だという方もおられることでしょう。2回接種の完了後に高熱を出し、そのため3回目を躊躇される方もおられると思います。しかし過度の心配は要りません。それは前回接種から8カ月が経過すると免疫発動状態は緩んでおり、そのため3回目接種後の副反応は少ないことが知られているからです。イスラエルでファイザー社が2回接種者2682人、3回目接種者289人を対象として副反応の調査をしました。その結果によりますと3回目の副反応は2回目と同じくらいか、少ないということが示されました(図2)。少なくとも3回目に強い副反応が出るということはありません。過度な心配は不要と言えるでしょう。

 

   なによりも大切なことは第6波を抑え、世の中の動きを元に戻すことが重要です。そのためには小康状態の今こそ、十分な備えをするべき大切な時です。

 

図1 イスラエルにおけるによる致死率の急激な低下

       ブースター接種は本年7月11日から接種開始

 

図2 NHK 首都圏ナビから転載引用させていただきました

https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20211111b.html