まもなく節分の日(今年は23)がやってきます。日本の伝統的な行事、節分の豆まきは子どもさんには楽しいイベントでしょう。豆まきの風習は、すでに室町時代の看聞日記(1425年)という書物に記載があり、古くからある行事だということが分かります。

穏やかな冬の日々を過ごしていたところ、冷水を浴びせかけられるようなニュースが飛び込んできました。それは中国の武漢における新型コロナウイルス(以下、2019-nCoV)による新型肺炎の発生・流行という衝撃的ニュースです。現在、幾つもの情報が飛び交い、全貌がまだよく分かりません。根拠がなく、ただ不安をあおることを目的とした不適切な情報もあります。正しい情報を把握し、最適な対処をしていくことが大切です。町の一臨床医である私もぜひ正しい知識を持ち、皆様に的確な情報発信をしていきたいと思います。そこで2019-nCoVによる新型肺炎ついて現在分かっている範囲で調べてみました。

 

 

 コロナウイルスは1965年に発見されたRNAウイルスです(写真1)。コロナウイルスは人だけでなく動物にも感染します。いわゆる人畜共通感染症を引き起こすウイルスなのです。まずコロナという名前が付いた理由です。それは太陽の周りにある光の環、これをコロナというのですが、これに由来します。コロナウイルスの周りにはトゲのような王冠が取り囲むように存在し、この王冠が太陽のコロナと似ているのでコロナウイルスと名付けられたのです。

コロナウイルスには6種類が知られており、通常の風邪症候群の原因ウイルスとなるもの、重症急性呼吸器症候群(SARS、サーズ、Middle East Respiratory Syndrome)、中東呼吸器症候群(MERS、マーズ、Severe Acute Respiratory Syndrome)の原因ウイルスとなるものなどがあります。普通の風邪の原因となるコロナウイルスは、大人しく罹っても予後は極めて良好です。ですから私は以前、コロナウイルスとはヒトが罹っても軽症であり、自然治癒する何でもないウイルスだと思っていました。しかし近年になってSARSMERSというコロナウイルスによる重症疾患が出現し、私の認識は完全にひっくり返されました。それはコロナウイルスが変異し、人間に感染するとSARSMERSを発症するからです。SARSはコウモリから人間に、またMERSはヒトコブラクダから人間に感染した重症の呼吸器疾患です。SARS2003年に中国、MERS2015年に韓国や中東諸国で流行し、私たちの記憶にも新しいところです。幸い何とかSARSMERSの流行阻止に成功し、日本でも大流行はありませんでした。そんなところに突然、2019-nCoV肺炎の大流行という衝撃が人類を襲いました。中国での患者総数は7711人、死亡者数は170(130日現在)に達しているとのことです(ただ実数は流動的で不正確な印象があります)。今後も世界レベルでの2019-nCoVの感染者の増加が危惧されます。

困ったことに新型コロナウイルスはヒトからヒトへの感染があり得ることです。しかも症状のない潜伏期でも感染する可能性があり、これは極めて厄介です。ここ数日の報道でも、中国への渡航歴のない人に2019-nCoV肺炎が発症しており、すでにヒト・ヒト感染による二次感染が日本でも確認されています。現時点(131)で三重県、京都府でも2019-nCoV肺炎患者さんが新たに確認されています。現在、毎日新しい情報が飛び交っており、実に混乱した現状となっています。私も本ブログを書きながら新しい情報に日々接している状況です。

そこで我々は差し当たってどうすればよいのでしょうか。残念ながら今のところ予防接種も有効な抗ウイルス薬はありません。そこでまずは咳エチケット、手洗い、マスクの着用、アルコールによる手指消毒そして十分な休息と睡眠など日頃の感染対策をしっかりすることが基本です。原則、飛沫感染であり空気感染ではないので、これらの対策が有効と考えられます。そして正しい情報を入手すること、デマに煽られないこと、過度な不安を持たないこと、パニックにならないことが大切です。2019-nCoVの感染力は通常のインフルエンザなみ(1人が2.6人に感染させる)のこと、死亡率は5パーセント以下であると報告する研究者もあり、過度に恐れることはないかもしれません。

もし「2019-nCoV肺炎かな」と思ったときの対応です。国立感染症研究所によりますと発熱と呼吸器症状があり、暴露歴に留意すべきです(1)。これらに該当する時はポスター(1)に示すように医療機関を受診する前に電話を入れて下さい。これは医療機関の中で感染を拡大させないためであり、重要なことであります。疑わしい人は、保健所や指定病院での対応が必要です。2019-nCoV肺炎は21(28日であったが前倒しとなった)からは指定感染症となり、強制入院などの措置(医療費は公費となる)も実施されることになります。これにより感染症数の把握や制御が容易になるかと期待されます。

今年、オリンピック・パラリンピックを迎え、多数の外国人が日本を訪れるため様々な感染症が持ち込まれると考えられます。これに対し日本感染症学会・日本環境感染学会は感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU(ふせぐ)2020」を発足させたところです。

感染症に対して「常に人類は覚悟が必要」ということを改めて肝に銘じている今日この頃です。

 

 

 

写真1 MERSコロナウイルスの電子顕微鏡写真 
ウイルス周囲に王冠がみられます  国立感染症研究所公式サイトより 
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html

 

 

1 新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応  国立感染症研究所による

https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/nCoV_200117.pdf

 

 

 

1 当院の入り口に掲示されているポスター