朝夕がだいぶ冷え込んできました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。無理せず過労を避け十分に休むようにして下さい。運動不足運動のため神社に出かけました。すると七五三のお祝いの微笑ましい姿が見られました(写真)。やはり日本の四季折々の風情は良いものです。

  

 

 さて、10月半ばから今年もインフルエンザ(以下、インフル)の予防接種が開始されました。今年は例年より早くインフルの流行が始まり、多くの方が早めにインフルの予防接種を受けようと考えておられるでしょう。何と言っても注射は子どもさんたちには嫌なことです。でも頑張って受けるようにして下さい。

 

 

 ところでインフルの予防接種の効果はどの程度あるのでしょうか。毎年何人かの人が「インフルの予防接種を受けたのに罹ってしまった」と外来で嘆くように言われます。また「毎年予防接種を受けてるのに、いつも罹ってしまう。だから受けないことにした」という諦めの声も聞くことがあります。また中には「私は一度もインフルに罹ったことがない」という羨ましい人もいます。たしかにインフルに罹る人は大人で10人に1人、子どもさんでは5人に1人といわれております。いいかえればそれぞれ残りの9人、1人はインフルに罹らないわけです。つまり大多数の人はインフルを免れるのです。しかし日本の総人口が12千万とすると1200万がインフルに罹るということになり、これはやはり物凄い患者数と言わざるを得ません。インフルに罹れば誰もが経験があるように数日は辛い目にあいます。しんどくて仕事や勉強どころではありませんし、その社会的損失は膨大なものがあります。そこでやはり社会全体としてインフルの予防接種を受け、集団免疫をつけようということになるわけです。

 話がそれましたが、元に戻ってインフルの予防接種の効果についてです。まず確認しておくべきことは、厚生労働省も示しているように予防接種は発症を完全に予防するものではありません。あくまでも重症化を予防するものです。これをまず再確認しておく必要があります。正直な気持ちをいうと効果がないようにも感じる方もおられるでしょう。せっかく予防接種を受けたのに罹ったということも効果を疑問視することにつながります。その一方で受けたから罹らなかった、予防接種はたしかに有効だと実感できる人も少ないと思います。それどころか予防接種は無意味だ、ないしは危険だと思う方もおられると思います。つまり現状は有効だ、いや無効だと混乱しているといえるでしょう。

 このような混乱の原因を明らかにするため歴史を振り返ってみました。1994年、それまで学校で実施されていたインフルの集団予防接種は中止となりました。これには1987年に報告された前橋レポートの影響が大きいとされています。同レポートはインフル予防接種の効果を否定する内容なのであります。しかし現在では、このレポートは調査方法に問題があることが指摘されています。また同レポートは医学雑誌に投稿されていないため、多くの専門医の評価を受けてないという問題点もあります。ところが集団予防接種が無効ということだけが独り歩きすることになってしまったのです。困ったことにインフルの予防接種自体の信用性が低くなったようにも思われます。私自身はインフルの予防接種について集団接種は接種後のアナフィラキシー(発症頻度は稀)を考慮すると好ましくないと考えています。しかし個別接種については勧めるべきだと考えています。これは私がインフルと予防接種に関する幾つもの医学論文を読み、有効性を確認しているからです。また有効性を自分自身の臨床経験で感じているからです。最近、堀向健太・医師の論文(https://news.yahoo.co.jp/byline/horimukaikenta/20191016-00147001/)を読み、やはりインフルの予防接種の有効性、特に小児についての有効性を再確認しました。そこで同論文のあらましを紹介させていただきます。。

 まずJefferson T達による研究報告です。彼らは1216歳の子どもさんのインフルの予防接種効果を分析した41研究を集め、延べ200,000人以上について予防接種効果の検討をしました。その結果はインフル予防接種はインフルの感染リスクを1/3近く下げるというものでした(Cochrane Database Syst Rev 2018; 2:Cd004879. )。インフル予防接種は発症抑制効果があったのです。またFlannery B等は2010年から2014年の期間において米国内でインフルによって死亡した小児358件を対象とし、分析研究を実施しました。その結果によるとインフル予防接種は6割以上も死亡リスクを減らしたというものでした(Pediatrics 2017; 1394)。インフル予防接種はインフルによる死亡リスクを下げる効果があると確認されたのです。さらにDanier J達はワクチンを受けていてもインフルに感染した子どもさんの臨床経過を分析しました。すると感染した子どもさんのうち、39を超える発熱のリスクは約半分程度でありました(Pediatr Infect Dis J 2019; 38:866-72. )。つまり予防接種を受けていると高熱の発症を阻止できたというわけです。

 以上のことをまとめると小児科領域におけるインフルの予防接種は感染リスクを1/3近くに下げること、死亡リスクを6割以上下げること、高熱を阻止できることが示されました。以上のように外国の研究報告ですが、子どもさんではインフルの予防接種効果が確認されたのです。

 では日本人におけるインフル予防接種効果は如何でしょうか。これには厚生労働省の国家の危機管理への対応(平成22年度版 厚生労働白書)が参考になります。ここには極めて簡潔にインフル予防接種の効果が書かれています。それらはインフル予防接種は健常者のインフルの発病割合は7090%減少させること、一般高齢者の肺炎・インフルによる入院を3070%減少させること、老人施設入所者のインフルによる死亡を80%減少させること、小児の発熱を2030%減少させるということです()

 このようにインフルの予防接種の有効性を既に多くの研究が明らかにしています。しかし、どうしても予防接種については納得あるいは賛同できない方が一定数おられます。そういう人では予防接種を受けないことを選択されます。このような方に対しては、私はその考え方を傾聴し理解に努めるようにしています。ただ予防接種を受けない方が多くなってしまうと、いわゆるパンデミック(感染や死亡被害が著しい事態を想定した世界的な感染の流行のこと、ウイキペディアからの引用)が引き起こされるリスクが高くなるので注意が必要です。

 何はともあれ、インフルについてはやはり日頃から手洗いうがいに心がけ、過労を避けて十分な休養・睡眠をとることが大切です。               

 ⒒月1

1 インフル予防接種の効果  平成22年度版 厚生労働白書からの引用

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/10/dl/02-01-05.pdf#search=%27%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E4%BA%88%E9%98%B2%E6%8E%A5%E7%A8%AE+%E5%8A%B9%E6%9E%9C+%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%27