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  このようなブログを続けていると、
私程度の者でも、読者の方からご質問やお悩み相談のメッセージを頂くことがしばしばあります。


  今回はそんな中から、乗馬の「あるある」的なお悩みとして皆さんにも経験がありそうなものを、いくつかご紹介させて頂きたいと思います。

 ご自身の経験に置き換えながら、参考にして頂ければ幸いです。




 


Q1.「駈歩になると『すわり』ができない?、というのか、お尻がはねて安定して座れず、つい手綱を引いてしまいます。」


ー 駈歩のとき、馬の走り方は、それまでの常歩や速歩のような、左右の肢を交互に均等に前に出しながら進む動きから、

外側の肢の着地直後、それよりも前に内側の肢が着地する、という動きを繰り返しながら進む「非対称歩法」と呼ばれる走り方に変わります。

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  外方後肢の次に、内方の後肢と外方の前肢がほぼ同時に着地し、最後に内方の前肢が着地する、という動きによって、

独特の「パカタン、パカタン」という三拍子のリズムと、馬の身体がシーソーのように前後に大きく揺れながら、前に跳躍して進んでいくような動きが生まれることになります。


この時、乗っている人の身体には、後ろからお尻を突き上げられるような強い力とともに、

外方後肢から内方前肢の方向へ、馬が重心を移動させていくことによる「慣性力」で、一歩一歩、上体を斜め後ろに引っ張られるような力がかかることになります。



  馬体のシーソー運動によってお尻が放り上げられて前のめりにないように、よく言われるように「身体を起こして」上体を後傾させると、確かにお尻は鞍に密着しやすくなるのですが、

それだけでは、馬の前進による慣性力で上体が置いていかれ、「手綱につかまらないと落ちてしまう」ようなバランスになりやすいものです。


 逆に、上体が遅れないようにすることを意識して前傾姿勢になると、お尻がポンポン跳ね上げられて、鐙が外れてしまったり、というようなことになりがちです。


この「ジレンマ」が、多くの初心者の方が駈歩で最初にぶつかる壁だろうと思います。


  上手な人が乗っているのを見ると、駈歩している馬の上でじっと安定した綺麗な姿勢を保ちながら、とても楽な感じで座っているように見えるものですが、

  その形だけを真似て「良い姿勢」を作ってみても、そのまま固まっていたのでは、馬の動きと慣性力によってグラグラと振られてしまい、なかなか同じようにはいかないことが多いでしょう。
 

  上手な人の綺麗な姿勢というのは、馬の動きに合わせた随伴の動作の「結果」として現れた形であり、

馬の動きと一致して動いているからこそ、じっと「動かないように見える」のです。


  ですから、綺麗な「楽そうに見える」騎乗フォームを作るためには、しっかりと馬と一緒に自分の身体を動かしながら、お尻が放り上げられないようにするための動きと、上体が馬に遅れないようにするための動きとを両立させる必要があります。


  そのための方法としては、まずは一歩一歩、お尻を前に動かして坐骨を鞍の動きに随伴させる動きを覚え、

次に、それと同じようなタイミングで、馬の前肢が着地するのに合わせて、首の付け根からみぞおちのあたりを前へ前へと押し出すようにしてみると良いのではないかと思います。


二つの動きをタイミングよく掛け合わせることで、上体を前後にあおるような感じではなく、真っ直ぐにじっと座っているように「見える」ようなフォームにちょっと近づいてきて、手綱につかまってしまうようなことも少なくなってくるでしょう。


  また、そうして両肘の間の辺りを前に随伴させることで、馬が首を振り下げるタイミングに合わせて拳を随伴させやすくなり、ハミが馬の口に衝突することによる「ガツン、ガツン」という衝撃も少なくなって、楽になってくるのではないかと思います。




Q2.「駈歩のとき、足を下におろす?落とす?というのか、鐙をしっかり踏むことが出来ません。
どうしたら鐙をに足を乗せて走れますか?」

ー 駈歩や速歩で、鐙から足が外れそうになる、というのはよくあることだと思います。

  鐙から足が浮いてしまうのは、要は鐙に荷重がかかっていないからなのですが、

よく見られるのは、鞍を膝や太腿で強く挟んだり、馬を推進しようとするあまり、脚を強く挟んだままになっていたりすることによって、挟んでいる部分で体重を支えた、いわば「鐙が要らない」感じになっている状態です。


そんな時に「鐙をしっかり踏め」と言われると、

鐙の「踏み応え」の感覚を求めて、その状態のまま、ただ足に力を入れて鐙を踏み込もうとしてしまうために、足が突っ張って前に行ってしまい、余計にうまく座れなくなったりしがちです。



  鐙を安定して踏み続けるためには、「脚に力を入れて踏みこむ」のではなく、鐙の踏み板の上に騎手の「重心を載せる」というバランス感覚がポイントになります。

  
  相撲や剣道の「蹲踞」のようなイメージで、下肢であまり挟みつけないように股関節を楽に緩めるようにして、
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自分の重心の垂直下に置いた鐙に載せた足先で荷重を支え、いつでもお尻を浮かせることが出来るようなバランスを保つことを意識しながら脚の操作や随伴の動作を行うようにしてみることで、ずいぶん鐙がズレにくくなってくるのではないかと思います。






Q3.「駈歩を習い始めて一頭目の馬は怖くなかったのに、今の馬では全く勝手が違って、難しいです。」

ー 常歩、速歩でも乗り心地は馬によって違うものですが、

駈歩になると、 馬の体型や身体の柔軟性、バランスによって生じる一頭一頭の個体差というものが、かなり大きく顕れるようになってきます。

  そのため、初めのうちは同じ馬で続けて練習した方が感覚を掴みやすい、ということで、クラブによっては「専用馬」といったような馬を指名して予約出来るシステムもあったりするわけですが、

同じ馬であっても、その日の体調や気分によっても走り方が変わってきたりしますから、厳密には「同じ馬には二度乗れない」ということも言えるかもしれません。

  前と同じようにいかなくても、それはそれで一つの経験ですから、そうしてだんだん自分の中の「引き出し」を増やしていくようなつもりで、気長に楽しんでいきましょう。



Q4.「駈歩をすると馬のテンションが上がって、止める時になかなか止まらなくてあせってしまい、怖くなってしまいます。」


ー 駈歩は、本来、被捕食動物である馬が敵から逃げたりするための走り方ですから、本能的に常歩、速歩よりもテンション
は高めになるのが自然でしょうし、

また、常歩からの駈歩発進というような運動は馬にとっては結構力の要る作業になりますから、それを行うにはどうしてもある程度はテンションを上げてやる必要があるわけですが、

  指導者から毎回のように「脚!「鞭!」「もっと強く!」言われ、いつもそうしていると、馬によってはテンションが上がり過ぎて、止まらない感じになったりすることがあります。


  馬でも人間でも、動物というのは興奮すると理知的な思考よりも本能的な防衛反応の方が先に立ちやすくなるものですから、

一度そうなってしまった馬を再び落ち着かせ、思い通りに動かすことは、初心者の方にとっては、重い馬を動かすこと以上に難しいものだと思います。

  馬を必要以上に緊張させ過ぎないようにするためには、乗っている人が手綱につかまったり脚でしがみついたりして余計な刺激を馬に与えてしまうようなことを、なるべくしないようにしてあげることが大切です。

  そのためには、上の質問のところで述べた、馬の動きに遅れない「真っ直ぐな姿勢」とか、「鐙に載ったバランス」を意識して、手綱に頼らない「自立したバランス」を保つように意識することはもちろん大切ですが、

 
それだけでなく、ブレーキをかける時の身体の使い方もポイントになります。

  ただ腕の力で手綱に引いたり、体重をかけてぶら下がるようにして後ろに引っ張るのではなく、

手綱を張ったときに馬が引っ張り返してくる力を感じたら、それを自分の腕から肩、背中、腰、下肢の骨格を通して瞬時に鐙へと伝えるようにして、
筋力や体重ではなく全身の「骨」を使ってブレーキをかけるようにすることで、
馬が「一人綱引き」をしているような状態にして、

馬自身に無駄な力を使っているということを気づかせることで、冷静さを取り戻しやすくなるだろうと思います。



  それからもう一つ、駈歩しようとすると速い速歩になってなかなか止められない、という場合、

馬のバランスが「前がかり」になって、早く次の足を出さないと転んでしまう、というような状態になっていることも多いものです。

 こうした場合には、先に述べたようなブレーキで馬を止め、その直後に後退させたり、
その後退した時のハミの高さを維持したまま、速歩から常歩に落とす移行を繰り返してみたりすることで、

馬が自然に後肢を深く踏み込むようになってきて、止まりやすい、駈歩の発進しやすいバランスになってくるのではないかと思います。


  駈歩というのは、人間も馬も、動きの中で微妙なバランスを保つことが求められ、どちらかがバランスを崩してしまうと続かなくなったりするもので、そうなると、何か恥ずかしいような、とても残念な気持ちになったりするものですが、
 
おかしなバランスで無理に走り続けようとするのは危険ですし、人馬ともに、変な癖をつけてしまうことにも繋がりかねません。

  ですから、駈歩は「長く走り続けられるのがえらい」というわけではないのだ、というように考えて、

頑張って走り続けようとするのではなく、バランスが崩れる前に自ら指示をして止めてやるくらいのつもりで、一回一回の「動きの質」を重視するようにしながら楽しんでみるのが良いのではないかと思います。