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  団塊ジュニア世代の自分が子どもの頃、「ラジコンブーム」というのがありました。

 「ラジオコントロール」、すなわち無線操縦の車や飛行機、船などのニューモデルが各社から次々に発売され、週末にはあちこちでイベントや競技会が行われ、TV放映もされていたものでした。


 そんなラジコンを操作するために必要なのが、『プロポ』と呼ばれる送受信装置です。

 プロポの送信機には、機体をコントロールする電波を発信するためのレバーがついています。


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  車や船のラジコンであれば、前進・後退と、左右への旋回の二種類の信号があれば十分ですが、本格的な飛行機やヘリコプターになると、エンジンの出力、ラダー(舵)、エレベーター(水平尾翼)、エルロン(主翼)、あるいは、ローター(プロペラ)の回転軸の傾きや、羽根のピッチ角など、多数の制御機構を同時並列で操作するために、それぞれに別の信号を割り当てる必要があります。

  プロポが何種類の操作を同時に行うことが出来るのか、ということを表すのが「チャンネル数」で、車や船では2ch、飛行機やヘリコプターでは4ch、多いものでは8chくらいになります。


  2chの車のラジコンでも、後退時や自分に向かって走ってくる場合などにはちょっと頭が混乱したりしますから、3次元の空間を飛び回る飛行機やヘリコプターを、4〜8chの操作を同時並列で行いながら操縦するには、相当な訓練が必要になります。


  ・乗馬も、多チャンネル

  このような「多方向同時並列」の操作というのは、乗馬の扶助にも通じるところがあるのではないかと思います。


  乗馬でも、初心者のうちは精々頑張ってアクセル、ブレーキとハンドル操作だけだったりしますが、上手になるに従って、馬の前後のバランスや、左右の肩への荷重、後肢を踏み込む方向など、「多チャンネル」の操作を同時並列で行うことを求められるようになってきます。


  手綱の使い方だけを見ても、初めのうちは、後ろへ引っ張る、左右に開く、という程度の操作だったのが、上手な人では、馬の頭の高さや前後のバランス、鼻梁の角度、左右への首や肩の張り出し具合などを微妙にコントロールするために、常に様々な方向に向かって拳を使っています。

  

  ・混ぜるな危険?

    脚や騎座による入力、あるいは随伴などでもそうなのですが、特に「ハミ」には、上記のように、見た目以上に様々な方向への力が作用することになり、それらの力が互いに混ざり合ってしまうことで、騎手の意図しない方向への合力が発生し、馬に扶助が通じにくくなることも考えられます。


  武術の世界には、多方向の力を混ぜずに同時に働かせるようにすることで、より技に威力が出る、という考え方があります。

  例えば、剣術で、袈裟斬りで斜めに斬りおろす場合、刀を斜めに振るのではなく、下方向へ振りおろす動きと、身体が向き変わる左右方向の動きとをそれぞれ別々に働かせるようにすると、ただ斜めに斬るよりも格段に威力が増し、相手には斜めに振り下ろそうとしているようにしか見えないのに、払って躱すことが出来なくなります。

  上下、左右、前後方向への力を、混ぜてしまわず、それぞれをバラバラに、かつ同時に働かせる(『三元同立』)ことで、
見た目の「混ざった動き」の方向(下図の点Aの方向)への動きとして受け止めようとしても、止めることが出来ないわけです。
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  この時「受け」の人が体験する、脳がちょっとしたパニックを起こしたような感覚というのは、馬が初めて「折り返し手綱」で顎を抑えられた時の気分にも近いものかもしれません。



・「大勒頭絡」の目的

  レッスンで手綱を持つ時にも、理想的な姿勢やバランスを保持しながら、馬のモチベーションを高めるような絶妙なコンタクトを実現するためには、

①馬の顎を手前方向へ向かって抑えるような方向への入力と、

②口角から耳の方向に向かってハミをかけ、馬の頭の高さを保持するような上向きの力、

③馬がハミを押し返し、首を使って動こうとするのに合わせて拳を随伴させる腕の動き、

というような別方向の動きを同時並列で行う必要があるわけですが、

たった一本の手綱でそうした操作を実現するのが非常に難しいということは、ある程度乗馬経験のある方であればおわかりだろうと思います。


  そのような、複雑な多方向の操作を同時に行いやすくするために生まれたのではないかと考えられるのが、「ダブルブライドル」(大勒頭絡)です。





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 これはダブル、すなわち2つの頭絡を同時に取り付けたように、大小2種類のハミとそれぞれを操作するための手綱がついている頭絡で、2つの手綱を同時並列で操作することによって、より精妙な扶助操作が出来るように考えられているものです。

  例えば、力強く動く競技馬を制御し、収縮した姿勢で運動させるには、作用の強い大勒ハミによって、抵抗するよりも力を抜いて顎を譲った方が口が楽になる、ということを馬が気づかせ、顎を譲るようにさせるような必要が出てきますが、

そうするうちに、馬は今度は顎を深く巻き込んで、前のめりにハミにもたれたり、あるいは、運動がしんどくなってくると顎を引いてハミを外し、前に出なくなったりします。

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  これをそのまま大勒ハミで起こそうとしても、銜身からオフセットされた位置に手綱がついているために、馬は顎を余計に巻き込んだり、ひどい場合にはその場に膠着したり立ち上がったりというようなことになります。

  ですから、馬の体勢を起こしたり、ハミに出てくれるよう誘う時には、オフセットのない普通のハミを使うわけです。

  このように、用途によって2種類のハミを使いわけることで、多方向のコントロールを同時に行えるようになっているのです。

  見た目はいかにもゴツくていかつい感じで、複雑そうなイメージのある大勒頭絡ですが、ハミが分離独立していることで、むしろ水勒単一の場合よりもそれぞれの方向への入力を「混ぜないように」並立させやすいのではないかと考えられます。

  騎手にも、馬にとっても、わかりやすい扶助操作ができる、という意味では、「ダブルブライドル」はその見た目のわりに、じつは馬にも人にも、優しい頭絡だと言えるのかもしれません。


  馬場競技に馴染みのない方も、機会があれば体験してみてはいかがでしょうか?








 

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