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抜粋
現在の21世紀で中東問題の要は、中国が推し進める「一帯一路」構想なのだ。
2013年に中国が発表したこの構想は、世界70カ国以上を鉄道や航路のネットワークで結びつけようとするものだ。該当する各国の思惑もあり、今後はいろんな展開がありうる。
中国が提案した一帯一路に、もはや石油だけでは食っていけない中東諸国がその解決策の一つとして乗りかかろうという理由がある。
まず、一帯一路は北緯と南緯に分かれる。北緯は、中国からモンゴル、ロシアを横断してヨーロッパへ向かうルートだ。中国、カザフスタン、ポーランド、ドイツ、フランスへと、物流にかかる時間がこれまでの最長60日から18日までに短縮される。
一方の南緯は、中国からウズベキスタン、タジキスタン、イラン、イラク、トルコを結ぶ。こちらは石油や天然ガスといった重量の大きな貨物の輸送ルートとなる予定だ。いわゆる「マラッカ・ジレンマ」(中国のエネルギーや物流にとって死活的な意味を持つマラッカ海峡の安全航行がアメリカなどに事実上管理されている現状のこと)を回避でき、アメリカ海軍の影響が及ばないルートだと言える。これが実現すれば、物流コストを現在の7割水準にまで下げることができるとされている。
南緯が通過するイランは、現在はアメリカによる経済制裁下にある。また、イラクも治安が悪いため、南緯構想は進んでいないのが実状だ。
その代わりに2020年12月8日、トルコのイスタンブールからジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンを横断して中国の西安まで結ぶ鉄道貨物輸送ルートが開通した。これにより、1カ月かかっていた輸送期間が12日に短縮された。
解説
1.中国の西安から中央アジアを通じてトルコのイスタンブールまで鉄道が通じたのは、シベリア鉄道に対抗するだけでなく旧シルクロードの再開である。
2.中国の一帯一路構想の狙いは、ユーロ、基軸通貨ドル
に対抗する人民元取引圏拡大計画である。物流と貿易の拡大は、商圏の拡大と人民元通貨圏の拡大でもある。
3.鉄道の開通は、ロシアに対する牽制でもある。中央アジアからの天然資源の輸入を容易にさせる。加えて、イランとの取引も容易になる。物流コストの削減だけでなく米国の圧力を抑止できる。
つまり、シーパワーの米国の力が及ばない。中国のランドパワーの強化に繋がる。