筋金入りの極辛口 | 緑家のリースリング日記 ~Probieren geht über Studieren~

筋金入りの極辛口

実のところ、我が家にあるリースリングの大半は甘口や極甘口である。
にもかかわらず日常消費するのは辛口ばかり、しかも最近ますます辛口志向がエスカレートしていると感じる。
でもこれって日々リースリングを追いかける生活を続けている限り、必然の成り行きではないかと。
毎晩(たまに昼も)食事しながら飲むのに甘いのや高価なのは必要なく、晩酌には軽い辛口が最適である。
特別な美味しさよりも強いて言うなら飽きの来ない面白さを、つまり非日常よりも日常が食卓には求められる。

もうひとつ。ボトルに籠められたテロワールや生産者のメッセージを読み解く際、最も邪魔になるのは甘さである。
よく甘口を飲んでミネラル云々を語っているのを見聞きするが、いやはや驚くべき味覚の持ち主だなと感心する。
自分の凡舌には決して真似の出来ない芸当で、赤ワインに於けるタンニンの如く
たっぷりの残糖はその奥にある本質を見事なまでにぼやかしてしまう。勿論それは若いワインでの話であり
興味深い事に、甘口であっても熟成により甘味はテロワールを語る側へと立場を変えるのだけれども。

昔ながらのドイツワイン愛好家の向きからすれば
「甘口にこそドイツワインの真髄があるのに、わざわざ甘くないのばかり探して来て飲んでるなんてアホな奴ちゃ」
てな事になるんだろうが、こちらからすれば
「そんなにリースリングが好きなのに、なぜ食事の時になると別のワインになるの?
辛口リースリングはシャルドネやピノ・ノワールに負けず劣らずテロワールも良く出てて面白いのになぁ」てな感じ。

日本の食事(敢えて和食とは言わない)にリースリングがよく合う、なんて口が裂けても言えないし
当然ながら日本酒には敵わないのだけれども、やっぱりとことん残糖を絞った極辛口仕立てのリースリングとか
元々残糖を絞った造りのジルヴァーナーなんかが、日常的には一番ハズレが少なくて無難なんだろうとは思う。
尤もただただ残糖を絞れば良いってものでもなく、そこには糖分以外の充分な旨味が必要であり
素人が言うのもナンだが、そこらへんが極辛口リースリングの難しいところではある。

今夜の相棒はプファルツの名匠、レープホルツ醸造所の2015年産リースリング・トロッケン・エコノミーラート。
「補糖もせず除酸もせず、手を加えないでとことん発酵させた辛口」
これが辛口・エコノミーラートのコンセプトである。


スクリューキャップ。外観は軽く緑がかった明るいレモンイエロー。
洋梨や青リンゴ、擦り下ろしリンゴなどの果実の香りにどことなく過熟のニュアンス。
口当たりは溌剌とした酸。意外に伸びないけれどもボリュームは充分。果実味は中肉で酸の勝ったバランス。
残糖はそれほど絞られた感は無く、普通によくある辛口の範疇に感じる。
ミネラル味は地味な方で、しっかりした酸と相俟って口内に軽い収斂感。
小ぢんまりと纏まった良い辛口だがあまり印象的でもない。

これが翌々日は一転、カテキンっぽい摩擦係数の大きい渋みが前に出て、酸も本領を発揮。
なるほど果実味や残糖は完全にどこかへ追いやられてしまった感じで
それでいてワインとしての旨味は充分に備えている。このリースリングのコンセプトに相応しい味わいだと思う。
残糖0.3g/lは前年産と変わらないが、総酸量は9.2g/lでこのヴィンテージは酸の値が明らかに高い。85/100

結局、辛口リースリングの行く着く先ってこういうモノなのかもしれないなぁ...。
それが見極められれば、甘口へと回帰するのはそれほど遠い先ではないかもしれない。

2015 Riesling Qualitaetswein trocken - Oekonomierat -
Weingut Oekonomierat Rebholz (Siebeldingen/Pfalz)

A P Nr 5 069 105 006 16,Alc 11.5%vol,9.92€