人の苦楽は比較で生じ、全体愛(慈悲)は自分こそを幸福に | 上祐史浩

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 人の苦楽は比較で生じ、全体愛(慈悲)は自分こそを幸福に

 

①人の苦楽は比較の産物。それに翻弄されている

 

 例えば、昇給は嬉しいが、高給取りの人でも頭打ちなら苦しむ人もいる。被災すると平穏無事が一番の幸福と感じるが、平穏無事な人は、自分は負け組・不遇と悩む人も多い。
 一方、毎日が被災状態なのが途上国。その人たちが先進国に来れば最初は正に天国と感じるが、移住してしばらくすると、その中で負け組だと悩んで自殺する人もである。
 こうして、人は、比較による苦楽の転変に翻弄されている。

 

②比較による喜びは、後の苦しみの原因となる

 

 時々の比較で生じる苦楽。今の自分と、少し前の自分や友人を比較して苦楽を感じる。そして、前より良くなった時は、前との比較で喜ぶが、だからこそ、その後更に良くならなければ、頭打ちだと逆に苦しみ始める。更に、前に逆戻りなどすれば、良くなる前よりも逆に苦しむ。
 こうして、過去の喜びの経験が、未来の苦しみの原因となる心理構造がある、すなわち、比較による苦楽には、実体がなく、苦楽が表裏一体となっている。

 

③比較による喜びの裏にある様々な苦しみ

 

 苦楽は比較で生じるから、人は今よりもっと、他人よりもっと、と際限なく求める。しかし際限なく求めるほど、得られない苦しみ、失う苦しみ、他の人との間で奪い合って憎み合う苦しみが生じる。
 お金も名誉も異性も何でも、より多くより良いものを求めるほど、競争・奪い合いも激しくなって、得られない・失う・憎み合う苦も増えていくのが、上は少なく下が多いピラミッド構造の人類社会の現実だ。

 

④比較による苦楽:人生後半の方が苦しみは多い

 

 更に悪いことに、人生後半の方が得られない苦しみ・失う苦しみ・奪い合う妬み憎しみの苦しみが多くなる。実際に、高齢者の鬱・自殺は、若者よりずっと多いというのが統計的な事実だ。
 なぜならば、年を取るにつれて、今まで出来たことができなくなるし、伴侶や知人との別れも増えるし、若者には勝てない。いわゆる「喪失体験」が加齢とともに増大する。
 自分の未来は、今より幸福にと誰でも願うし、それは人情だが、決して甘くないのが現実で、それ対処する智恵が必要ではないか。

 

⑤自己愛・比較の苦楽と、全体愛の喜び

 

 比較で生じる苦楽の本質は、自己愛の(自己中心的な)苦楽。今の自分と、前の自分や友人を比較して、今の自分が優っていれば喜び、劣っていればと苦しむ。
 一方、これとは違って、自分だけではなく他者をも愛する全体愛による幸福がある。分かりやすく言えば、広い心を持つことの幸福だ。
 これは、得られない・失う・憎み合うという苦しみがない。そして、それらが高齢期ほど大きいという問題もない。これが一つの突破口なるのでは。

 

⑥慈悲:他の苦を悲しみ取り除けば自分の苦が和らぐ

 

 仏教が説く全体愛は「慈悲」と呼ばれる。多数の他者の苦しみを知って、それを悲しみ、なるべく取り除く心と実践を「悲」という。これこそが、自分自身の苦しみを和らげる。
 他の苦しみを広く知れば、自分の苦しみなどは、たいてい小さく見えて来る。むしろ自分の得ている恵みへの感謝と恩返しの心が生れる。
 また、他の苦しみを取り除く手伝いをすれば、自分の未来の苦への備えとなる。他は皆教師だ。そして、最後に、自己の苦しみの経験は、自分だけのものではなく、同じ苦しみを持つ他者への慈悲の源だと悟る道に向かう。苦しみが神聖な体験、喜びに変わっていく。

 

⑦他の幸福を願い喜べば自分の幸福が増える

 

 他の幸福を願い、妬まずに喜ぶ心(慈・喜)は、自分の幸福を増やす。
 まずは、他の幸福を喜ぶという広い心の喜びがあり、それは実際に生理的に心地よい。
 また、優れた他を妬まずに、すなおに見習えば自分が成長して幸福になるし、そうした他を全体の幸福のために活かして皆が幸福になる道がある。こうして他の喜びは自分の未来の喜びの源になる。
 そして、一人しかない自分よりも、無数の他者の幸福を自分の喜びにすることができれば、無限の幸福(=仏陀の幸福)への道が開くことになる。

 

⑧自己愛・比較の苦楽と、全体愛=慈悲の幸福

 

 自己愛を充足する喜び(自他を比較して自己が優位になることによる喜び)は、その裏に自分が他に劣った場合の苦しみがある。そして、人生後半は、苦しみの方が増えて、人生が尻すぼみとなる。
 一方、全体愛・慈悲の喜びは、その裏に苦しみはなく、逆に苦を和らげ性質がある。そして、それは訓練し続ける限り、加齢と共に増大して、死の直前に絶頂になる可能性もあって、人生が尻り上がりになる。
 自己愛の比較の喜びの不確かさ・まやかしに気づいて、真の幸福へ扉を開ける。

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