三次と江津を江の川沿いに結ぶJR西日本のローカル線の三江線。2018年4月1日の廃止が迫り、お別れ乗車で異常な混雑を見せているという話がネットでたびたび流れてくるようになりました。思い出深い三江線。宇都井駅もまだ行っていない。だけどいまさらそんな混雑した三江線を乗り通したくもない…。

だけど、ここにだけ最後にもう一度行ってみたいと思い続けていた駅が一つありました。それが川平駅でした。

2月末日、午前5時を過ぎた頃、浜田駅前のホテルをチェックアウトし、浜田駅から山陰本線の上り始発列車に乗り江津駅へ。本当は江津駅前に1件あるビジネスホテルに泊まりたかったのですが、三江線廃止特需のためか連日満室状態。三江線は江津発5時55分の始発を逃すと、次の列車は12時34分の浜原行き。その列車さえも、その先の接続は悪く、三次まで行こうとなると、江津15時15分まで待たなければいけません。

江津駅3番線、三江線の始発・三次行き

江津駅で、5時55分発の三次行きに乗り換えました。鉄道ファンの姿はありましたが、2両編成の列車は、青春18きっぷ期間前のためか、かなり余裕がありました。

江津発の三江線列車、夜明け前の川平駅に到着。

列車は夜の闇の中を走り、川平駅に到着しました。乗ってきた人はいませんでした。

夜明け前の川平駅を発つ三江線・三次行き列車

列車は三次へと旅立っていきました。幸いにも降りたのは私だけで、折り返しの7時42分の列車まで、心ゆくまでこの駅との…、私にとっては三江線との別れの時を過ごせそうです。

川平駅、夜明け前の木造駅舎

こんな早い時間に川平駅にやってきたのは初めて。明け始めた夜空の中に佇む木造駅舎に見入りました。

川平駅、夜明けを告げる赤い空

そして、赤く染まった東の空が、川平駅に夜明けを告げます。

川平駅、さざんかの花

駅舎の左側に、さざんかの木が何本も植えられ、ちょうど花盛り。桜にばかり気を取られ、いままで気にとめていませんでした。

川平駅、桜の木と池庭の植栽

駅舎の前、賑やかに植栽が植えられている場所には、池のある庭がありました。一時期、枯れていたのですが、奇麗に整えられ金魚さえも泳いでいました。しかし、廃止を前にし、池の水は空に…

三江線・川平駅の木造駅舎、待合室 川平駅、駅舎ホーム側 川平駅、木造駅舎と古いベンチ

大好きだった駅舎を、いとおしむように眺めます…。

川平駅の木造駅舎、改修部分

待合室や外壁の一部とか、せっかく修復されたのに廃止なってしまうとはなんとも残念…

川平駅近くの道路

少し駅前を歩いてみました。すると、道路北側に立ち並んでいた家屋がほとんど取り壊されていました。代行バスを乗り入れさせるため、道の拡張工事でもしているのでしょうか?

川平駅の木造駅舎と桜の老木

例え咲いていなくても、この大きな桜の老木は強い印象を与え、駅の主の風格。私を深く魅了した桜風景。もう一度、駅である内に、咲き誇っている風景を見たかった。だけど、それももう叶わな願い

川平駅、駅本屋の建物財産標

駅舎車寄せの柱には「本屋1号 昭和5年4月」と標された建物財産標が取り付けられています。川平駅は1930年(昭和5年)の4月、三江線が江津‐川戸間で最初に開業した時に、川戸駅と共に設置された、三江線でいちばん古い駅の一つ。当時は江津市ではなく、まだ川平村でした。

三江線・川平駅、威容と趣き溢れる駅舎ホーム側

十数年前に廃止となった反対側のプラットホームに渡り、威容あり木造駅舎らしい趣き溢れる姿を眺めました。

三江線、川平駅を去り行く列車

そして遂に、立ち去る時間となってしまいました。もう現役中には来る事はないのだなと感慨を覚えつつ、離れゆく列車から川平駅を見つめました。

帰宅後。変わりゆく川平駅

その日の内に帰宅し、何気にネットで川平駅の情報を漁っていたら、ツイッター上で、3月1日に、あの桜の老木が伐採される事を知りました。大きな衝撃と落胆にお襲われ、呆然とするしかありませんでいた。何でも、代替バスを駅前に乗り入れさせるのに邪魔だったからとか…。もしかしたて桜の開花が早まると、廃線前に花を添えてくる事だろうと、淡い期待をしていました。しかし、その期待さえも打ち砕く形で、あの桜風景を奪われる事になろうとは思いも寄りませんでした。

代替交通機関確保のため、住民の方々も受け入れた処置だったよう。せめてもの慰めが、住民に見守られながら命を終えられた事だろうか…。

でもぎりぎり1日前に間に合った事は、川平駅との奇妙な縁を感じずにはいられませんでした。

そしてその後、池庭と周囲の植栽も除去され、駅前に舗装されバスロータリーが整備されました。桜の老木の側にあった駅周辺の地図が、ロータリーの真ん中に置かれたのが、失われ行く川平駅の風景へのオマージュに映りました。

2016年春に訪れた時、枝垂桜がほどんど切り取られていて、毎年、桜の時期に駅中に巡らされていた提灯は、もう吊るされていませんでした。そして2018年、桜の老木の伐採、池庭の除去、ロータリーの整備、そして廃線…。川平駅が川平駅でなくなっていくような移り変わりに、ただ寂しさに支配されました。責めて、あの木造駅舎だけはそのままでいて欲しい。ただそう願うばかりです。

思い深い平駅訪問の記録

  1. 2004年7月 - 駅猫と戯れ…
  2. 2007年4月 - 代行バスで訪問
  3. 2011年4月 - 夜桜風景
  4. 2016年4月 - 第1回目wのお別れ訪問※訪問記ナシ