インボイス導入の理由でよく言われているのが、「税制の不公平の是正」である。
つまり、小規模事業者は本来納めるべき消費税を納めていないのは不公平だからという理屈だ。
「俺たちの払った消費税を着服しているのはけしからん!」という論調があるよね。
ただ、インボイスの制度をよく見ると、どうも色々この理屈がおかしいことに気づく。
まず、免税事業者は課税事業者になるかどうか選択する自由があるのだ。
この時点で「あれ?」と思うでしょ。
「税制の不公平の是正」が目的なら、なぜ一律に課税事業者にしないのよ。
インボイスって、業者間の取引において仕入れにかかる消費税はこれまで免税だったのに対し、これからは課税するという制度なんだけど、
個人事業主と個人事業主と取引のある企業のどちらが消費税を負担するのかという話なんだよね。
今まで仕入れ(例えば飲食店は問屋からお酒を仕入れ、問屋はメーカーから仕入れている)にかかる消費税は免税だったのに課税するという話で、
個人事業主がインボイス適格事業者になれば自動的に課税事業者になるわけで、今まで免税されていた消費税を納めなければならなくなる。
反面、免税事業者のままでいると増える消費税の支払いは企業が負担することになる。
免税事業者のインボイス登録割合って増えてるの?6月末時点最新情報
現在免税事業者のインボイス登録は約15%程度。当たり前だよね。選ぶ自由があるのに、わざわざ自分に不利なことをするのかって話。
結局増えた消費税の支払いは企業が負担することになるわけだが、企業としては、それでは利益が下がってしまう。
それならどうするかって言うと、「消費者に価格転嫁」するんだよ。
もう一度言うけど、「消費者に価格転嫁」するの。
免税事業者がインボイス登録するかしないかは企業との力関係によると言われていて、
たとえば美容業界とかは人気業種なので、なりたい人が多く個人事業主間の競争が激しいので、インボイス登録を迫られるケースが多くなりそうだといわれている。
良くインボイス反対で言われているクリエイターや声優、アニメ業界なんかもそうだよね。
反面、運送業界などは個人事業主が多いけれども人手不足で、企業側が無理にインボイス登録を勧めると、トラックドライバーは登録をしなくてもいい企業に流れていく可能性が高いので無理には言えない。
ではその代わりに、「消費者に価格転嫁」しようという話になるわけ。
最近物価がどんどん上がっているけど、運送業界って幅広いモノの値段に影響するでしょ。
この物価上昇の何割か何パーセントか分からないけど、その原因の一部はインボイス導入なんじゃないかと僕は疑っている。
直接的には、ゆうパックの料金がインボイス開始と同じ10月1日から値上がりする。
ガソリンの値段も上がっているし値上がりの理由はこれ!と名指しはできないけど、少なくともインボイス導入は物価上昇要因にしかならない。
インボイスは実質的な増税で、それは物価上昇というサイレントな形で行われる。
これだけ物価が上がっていたら普通の政府なら物価抑制策を打ち出すのだけど、よりにもよってこの時期に実質的な物価上昇につながるインボイス導入を進めようとしている政府は、正直言って「アタオカ」としか言いようがない。
また、インボイス登録するしないの自由があるという、「税制の不公平の是正」という謳い文句からは全くかけ離れた欠陥的な制度、政府を批判せず、身近のちょっと得をしているかのように見える他人を批判する(実際はそんなことはないのだけど)国民も、「愚民ここに極まれり」という感じだよ。
結局その愚かさのツケは、物価上昇という形で自分たちが払わされるんだから、何とも言えない気持ちになるね。