先日はNHK『笑わない数学』に些か事寄せたことを書いたりしましたけれど、話に付いていけていないくせに興味だけはあるという数学。これまでに何度も初歩からやり直してみればなんとか…てな思いを抱いたことはあるものの、やっぱりどうもなんともならない。それを繰り返しているのにまた…てな具合になりましょうか。近くの図書館で手に取ったのは岩波ジュニア新書の一冊、『深掘り!中学数学 教科書に書かれていない数学の話』というものです。

 

 

中学数学といえども「深掘りする」、「教科書に書かれていない」ような発展形、応用系の問題の紹介でもあるかに見えるところながら、本書の「深掘り」の意図は「はじめに」でこう記されているのですな。

この本では中学数学で学習する内容からいくつかの話題を取り上げ、学校の授業では素通りしてしまう内容や「これはルール」の一言で片付けられる事柄について、その内容をじっくり考えてみたいと思います。

ぱらぱらと中身を見るに、この間触れました「マイマイがプラ」の掛け算がどうしてそうなるのか?といったあたりにも触れているようで、ついつい「これならば!」とほのあかりのような一筋の光明を見た次第。ですが、ジュニア向けとして極めて平易に書かれたものとは思うも、図形や計算式の記述、そして証明などに使われる独特の文法(?)には見る見るうちに置き去りをくらっていくのですなあ、いやはや(笑)。

 

食い付きどころはそこじゃない!とは分かっているのでけれど、むしろ本筋ではないところが気になってしまったりも。「AならばB」という条件文に対して、「BでないならばAではない」ということを「対偶」として紹介するにあたり。分かりやすくするためでしょう、例として引いているのが交通標語の「飲んだら乗るな 乗るなら飲むな」なのでして。

 

ですがここで引っかかってしまいましたのは、「乗んだら」という部分だけが過去形になっている点でしょうか。その点で条件が異なっているものが羅列されているわけで、交通標語としては適当であっても、ここでもし引き合いに出すのなら、「飲むなら乗るな」となっていなくてはいけんように思えてしまい…。

 

こうしたあたりが直感的に(!)気になってしまうわけですが、本書の別項にはこんな一文が出てきたりも。1/3=0.33333…の両辺に3を掛けると、1=0.99999…となるということについてです。

小数点以下に9がいくつ続いても1にはならないのではないか、考える人もいるでしょう。しかし、この「直感」は数学的には正しくありません。

この後には、1と0.99999…との間に数があるものとして証明に掛かり、結果として両者の間に数は無いと分かって「ほ~ら!」となるわけですが、「直感」に支配されている者としてはそれでもまだ得心がいかないのですよねえ。小数点以下無限に9が連なったとして、限りなく1にはなっても1そのものとイコールであるとはどうしても受け付け難いわけで。

 

話が「無限」に及んできますと、例えば「自然数と整数はそれぞれ無限個存在しますが、どちらの数の方が多いでしょうか」ということでも、直感人間は同様の印象を持つのですよね。つまり、整数には自然数に無い負の数も入っているのだから、その分だけ多いと考えるのですが、これが正しくは「両者の数は同じ」となるようなのですなあ。

 

なんとなれば、自然数の奇数の連続に0と負の整数の連続を対照させていくと、いずれも無限個で1対1の関係が続いていく。同様に自然数の偶数に1から始まる正の整数を当てていくとやはり1対1の対応が無限に続く。従って、両者の数は同じであると、「無限」の理解はかように考えるもののようです。

 

『笑わない数学』のHPに関連項目として挙がっているものが、本書に「ヒルベルトの無限ホテル」として紹介されていますけれど、無限個の客室が全て満室のホテルに宿泊希望者が現れた場合、1室目の客を2室目に移し、2室目の客を3室目に移し…ということを無限に繰り返せば、1室目に新規客を泊めることができるというものです。

 

部屋の順送りを無限にやるので1室目が空くでしょうというわけですが、そもそも無限個の客室がすでに満室なのでしょ?!というところから逃れられないのでありますよ。そもそもそれが「無限」の受け止め方を誤認しているということなのでしょうけれど、それでもねえ…。ことここに及んで、折々に数学へのちょっかいを出してきたものの、そろそろしおどきなのであるか…とも思ってしまいましたよ(笑)。