突然ですが、「かばん語」というものがある…というより、「かばん語」という言葉を始めて知って、
「ほぉ~、この手の言葉のことを言うのか」と、ひとつ利口になったと申しましょうか。


きっかけは職場内で見かけた文書に「マルウェア」という言葉を見かけて、
情報系には疎いものですから検索してみますと、Wikipediaでは
「不正かつ有害な動作を行う意図で作成された悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称」

とあった上で、「マルウェア(Malware)」の語源をこのように説明していたのでありますよ。

マルウェア (malware) は、「悪意のある」という意味の英語「malicious(マリシャス)」とsoftware」を組み合わせて創られたかばん語である。

こうなるともう「マルウェア」よりも「かばん語」の方がよほど気になることになってきて、
「かばん語」のリンク先を見てみるということに。


上の例のように二つの言葉の部分を組み合わせて作り出された新造語のことを指して、
学術的?には「混成語」というようですが、「かばん語」とも言われるそうな。


しかしまあ、何がどうして「かばん」語なのかと言うことになれば、
こうした言葉遊び的なことをルイス・キャロルが「鏡の国のアリス」でやっており、
いろんなものを詰め込んでひとつにパッケージした「旅行かばん」のようなものとしたのだそうで。


この旅行かばんに相当する英語が「ポートマントー(portmanteau)」で、

(ま、元々はフランス語でしょうけれど)本来の旅行かばん

(船旅にでも持っていった、小さなタンスのような両開きトランクのイメージ)の意のみならず、
「ポートマントー」=かばん語とも理解されるようになっているようなのですね。


で、使用例としては「smoke」+「fog」で「smog」とか

「breakfast」+「lunch」で「brunch」とかがありましたですが、
そうした類いなら日本語にはいっぱいありそうではないか、「パソコン」とか「スマホ」とか…。


ですが、この「パソコン」とか「スマホ」とか言うのは、

かばん語(混成語)ではないのだそうでありますよ。
何となれば「パソコン」は「パーソナル・コンピュータ」の略、

「スマホ」は「スマート・ホン(フォン)」の略でしかない。


「かばん語」の方はといえば

「スモーク・フォッグ」という一語(複合語)があって「スモッグ」になったわけでも、
「ブレックファスト・ランチ」という言い方あって「ブランチ」に縮まったわけでもないですものね。


どうやら「パソコン」や「スマホ」といった、

それこそ日本語(果たしてそう言い切っていいものやら…)の中で
山のように見かけるこちらの例は複合語の短縮というべきもののようであります。


確かに元から組み合わされた二つの言葉(複合語)の部分を取って短縮したものに違いない。

では、日本語の中に複合語の短縮は膨大にあるものの、

かばん語は無いのかというとそうでもない。


例示されていたものには「やぶる」+「さく」で「やぶく」、

「つかまえる」+「とらえる」で「とらまえる」、
果ては「あたりめえだ」+「べらぼうめ」で「あたぼう」なんつうのもありましたですが、

どうも全て今風ではないですなぁ。


後は商品名などには見つかるケースがあるとのことで、
電気製品の「GOPAN」てなネーミングはまさにかばん語なのかもと。


他にもあれこれ考えてみたですが、結局「イノブタ」くらいしか思い浮かばずじまい。
(類似の「ライガー」や「レオポン」は元は英語ですものね)


これは日本語が元来表意文字である漢字 を使用しているために、
なかなか単純に音を組み合わせて新語を作るわけには行かないという事情が

あるのではないかと思われますですね。


例示にあった「やぶく」も「とらまえる」も似た意味の言葉が混ざってしまった、
はっきり言って言い間違いの世界ですし、

「イノブタ」も「イノシシ・ブタ」の短縮と考えてもおかしくないわけで。


また「GOPAN」の場合にも、この新造語が

「ごはん+パン」を意味としてなるほどと思う何かしらを意味するものではないと考えれば、
先の「スモッグ」や「ブランチ」とは一線を画したものであるなと思うわけです。


まあ、「かばん語」という言葉を知ったものですから、ついつい日本語の中に探してみたくなり、
あれこれ考えるもおよそ出て来ず…となると「なんだ、無いのかよ」とも思ってしまうところながら、
それもまた日本語の個性でありましょうね。


「かばん語」があんまり無さそうな代わりに、複合語の短縮はそれこそ膨大にある。
これもまた日本語の個性ということでありましょうか。


あ!今思い付きましたが、「こどな(こども+おとな)」は純粋かばん語ですな!