2019年医師国家試験の神経内科の分野を解いてみた(A問題のみ) | KMMのブログ

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人口700人程の村にある僻地診療所での勤務が終わり、現在は大学病院で勤務しています。
診療を通じてたことや、個人的に気になったことなど適宜書いていこうと思います。

お訪ねいただきありがとうございます。

医師国家試験と検索したところ、厚生労働省のHPから2019年の医師国家試験の問題がみれることに気が付きました。

 

私、現在は家庭医療の分野を専門にしていますが、その前は神経内科医として大学病院で勤務していたこともあり、国試の神経内科の分野だけちょっと解いてみました。

 

神経内科専門医試験の問題と比べると、医師国家試験は本当に素直でわかりやすい問題ですね(笑)

 

さほど難しくないという印象ではありますが、ただ少し悩んだ問題はありました。

 

今回私なりの解釈を加えて、神経内科の分野の問題を振り返ってみようと思います。(A問題だけです)

 

さっと見ただけなので、全部網羅できてないかもしれませんが、そこのところはご理解を。

(解いた印象で難易度もつけてみました。

1‐10の10段階評価でつけています。

1: 間違えたら絶対ダメ 

3: まあ間違えない 

5: 最低限の知識があれば間違えない 

7:悩む、一癖ある 

10:神経内科専門医レベル 

という風に私なりの解釈に基づき評価してみました)

 

筋強直性ジストロフィー(MYD)は臨床していると時々出会いますね。

偉い先生は顔の雰囲気で「多分MYDだね」とか言われたりします。

手を握るとなかなか開けない、Grip myotoniaが一番わかりやすい症状かなあとは思います。

筋エコーで、胸鎖乳突筋が萎縮していることなんかも診断の一助になります。

でも一番は針筋電図ですね、刺したら一発で診断できます。

針を刺したときにバイクをふかした時のような「ブーーン」みたいな音、国試的には有名な急降下爆撃音がします。

針筋電図で診断がついたら、あとは糖尿病や白内障、心筋伝導障害などを一つずつ精査していく感じで進めます。

Aは緑内障でなく白内障ですね。

筋肉の病気なので当然進行すれば嚥下困難や呼吸困難もみられます。

なのでcの嚥下障害が答えですね。 

難易度:3

 

 

aは当然選べると思います。

気持ちが高ぶったり、びっくりした時に脱力を呈する情動脱力発作を知っていればcも選ぶのは難しくないかと。

ちなみに神経内科専門医試験だと髄液のオレキシンが低下しているなんかも出ます。

dはむずむず脚症候群の訴えですね。

難易度:4

 

 

この問題、間違えてしまいました。私はa,cを選択してしまいました。間違えると悔しいですね。

眼瞼下垂で一番有名なのは重症筋無力症ですが、他疾患も鑑別出来る必要があります。

複視や眼瞼下垂など眼の症状訴えて神経内科受診した場合、スクリーニングで甲状腺機能を測定することは多いです。なのでcを選択してしまいましたが、確かに甲状腺眼症で眼瞼下垂があるかと言われたら、ないのかなぁとも思います。

dは滑車じゃなくて動眼神経麻痺ですね。動脈瘤などで生じる眼瞼下垂の場合に鑑別に上がるかと思います。

加齢で眼瞼下垂が生じるのも、何となく予想出来るかなあとは思います。

コンタクトレンズ長期装用??って思いましたが、調べたら最近コンタクトレンズ長期装用による眼瞼下垂が注目されているとあり、正答はeなんですね。

難易度:7

 

 

 

なかなか派手な画像ですね(笑)

脳室内に穿破しているのは明らかですし、脳室ドレナージを選ぶのは間違わないかと思います。

ただ25歳女性ってのがすごく気になります。

背景疾患として何か意図しているのかなあ? と思いましたがよくわからないです。

難易度:2

 

顔面神経麻痺に耳介部の疼痛や水疱の時点でRamsay-Hunt症候群であることは明らかかと思います。

顔面神経なんで脳神経のⅦなんですが、隣接するⅧ 内耳神経にも影響して症状が出現することを知っていれば

e 平衡障害を選ぶのは間違わないかと思います。

dはわざわざ「伝音」とつけてくれているので、間違って選ぶこともないでしょう。

難易度:4

この問題がALSの症例であることは疑いようがないかと思います。

上位運動ニューロン徴候として腱反射亢進やBabinski徴候陽性が、下位運動ニューロン徴候として線維束性収縮や筋萎縮を認めており、針筋電図でも線維自発電位や陽性鋭波から急性の、筋収縮時の高振幅電位から慢性の脱神経所見を呈していることがわかります。

リルゾールとエダラボンは両方ともALSの治療に使われます。リルゾールは1日2回内服するお薬ですが、エダラボン(脳梗塞の治療でも使われます)は定期的に数日間連続して点滴する必要があり、非常に患者負担も大きい治療です。

どちらもALSに著効するわけではなく、数か月寿命を延ばす程度の効果しかありません。

この問題でまず検討すべきことと言われたら、嚥下造影検査で造影剤の梨状窩への貯留を認めており、嚥下障害を来していることは明らかなので胃瘻造設を選ぶのは難しくないかと思います。

難易度:3

 

胃全摘患者に末梢神経障害や貧血が出ている時点で、VitB12欠乏であることは明らかだと思います。

難易度:2

幻視と認知機能低下、Parkinsonismを呈していることから、この問題がレビー小体型認知症(DLB)であることは迷いようがないと思います。

DLBで後頭葉の血流低下があること、それにより幻視などの視覚障害が出現することを知っていればSPECTを選ぶのは難しくないと思います。

ちなみにアルツハイマー型認知症(AD)では後部帯状回の血流低下があるので、SPECT施行すればある程度ADかDLBかの予測はできます。

難易度:4

これはCIDPですね。CIDPという疾患について知っていれば間違わないかと思います。

2ヶ月以上の経過で末梢神経障害が進行・持続している点から気づいてほしいですね。

画像は見なくてもCIDPとわかるので、d,eを選べるとは思いますが、神経伝導検査も明らかな脱髄所見を呈しています。

ギラン・バレー症候群だとステロイドは効果がないので使用しませんが、CIDPだとステロイド・免疫グロブリン大量療法・血漿交換いずれも効果があり、first lineで使えます。

難易度:4

この問題は少し悩みましたね。

写真の赤丸の部分に異常があるのは一目瞭然だと思います。

これが小脳橋角部のあたりということはわかるので、聴神経鞘腫か何かかなぁとは思いました。

そう考えると聴神経に関連する症状ということでc,eと判断しました。

難易度:6

 

以上になりますかね。

10問中9問正解という結果でした。

1問間違えてしまいましたね。なかなか臨床してても全問正解するのは難しいです。

言い訳すると「間違った問題は神経内科と関係ない問題だった」になりますが、私の知識不足です。

ただ自分の知識の整理にはなった気がします。

 

私の気が向くか、反響があればB問題も解いてみようと思います。

 

ではでは