金沢城玉泉院丸、最後の発掘調査報告会☆ | sawa 's STADIUM
玉泉院丸102
この週末には、金沢城玉泉院丸の発掘調査説明会に行って来ました。
時折小雨の降るあいにくの空模様でしたが、数日前に報道向けに公開があって新聞にデカデカと紹介されてたんで、いつになく大挙250人もの人が見学に詰めかけました。

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「玉泉院丸」とは、金沢城の西ノ丸にあたる郭で、藩政期には二代前田利長の正室、織田信長の娘"永"が利長逝去後「玉泉院」と名乗って金沢に戻り、隠居屋敷に住まったところ。
その後三代利常が池泉を伴う大規模な庭園を造営し、五代綱紀、十三代斉泰がそれぞれ手を加え、明治には陸軍の施設がおかれ、戦後には石川県の体育館が建設されました。

金沢大学の移転に伴い、国から石川県に金沢城の敷地が払い下げられると、藩政期の建造物が相次いで復元される中、この玉泉院丸も再来年度末に迫った北陸新幹線金沢延伸開業に間に合わせようと庭園の復元が企画されています。

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そこで平成20年から5ヵ年にわたって発掘・遺構確認調査が進められ、大規模な池水の庭園に複雑で意匠に富んだ借景の石垣群の概要がほぼ明らかになっていきました。

しかしあまりにも大掛かりでとてつもない規模とその歴史的価値が当初から予想され、とても新幹線開業まで全面復元は間に合わない。そこで暫定整備という名のもとに、高石垣からの滝や池の主要部分などの発掘にとどめ、貴重な遺構は埋め戻し、その上部に当時を偲ぶ石垣の壁に囲まれた雄大な池水庭園を再現するという計画です。

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この高石垣は不必要に複雑に入り組んでいることから、玉泉院丸の庭園より鑑賞する借景であろうと早い段階から指摘され、発掘にともない前面の木々を取り払うことでそのすばらしい石の芸術が姿を現してきました。

右手前の石垣は、日本の近代城郭でも他に類を見ない、縦長の石を配置。正方形に見える石垣と合わせ「色紙短冊石垣」と言います。さらには中程には複雑な造形に切り出した石もあり、その意匠も見事です。

玉泉院丸105 

そして一番上部にある三角形の雨といのような石から、水を流して滝のようにしていただろう、いやあそこに水を上げるには導水路がない、とか喧々諤々でしたが、とうとう発掘によって、実際に水を流していた痕跡が発見。滝壺の石材の配置からも、見事な水を使った芸術がそこにあったことが証明されました。

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滝壺の石組みの配置です。江戸時代に何度か手を加えられたり、明治に埋められたりした中で、一部移動されたであろう痕跡もあるようですが、それにしてもすばらしいです。
わかりにくいと思いますが、手前の中央に石が並んでるところが導水路。暗渠となって庭園の池に向かって段落ちの滝になっていきます。

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5年の調査の中で、今回が4回めの調査報告。おそらく今回が最後で今年度末からいよいよ庭園造成工事が始まりまる予定です。
さっきの位置から回れ右して庭園の池に向かっての発掘現場。4次にわたってどんどん掘った範囲が広がりましたが、今回とうとう段落ちの滝の流水路が判明しました。見えにくいでしょうけど青いテープがそうで、ジグザグに複雑な流れを描きながら落ちていったようです。

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玉泉院丸は発掘が進むにつれ、常時入れる遊歩道が伸びたり狭められたり。僕も何度も足を運びましたし、説明会にも参加しました。
いつもは50人ほどでしたし、発掘現場もわりと限定的でした。ところが今回は事前告知もはっきりしてたし、解説場所も玉泉院丸全体に近く、最後ということもあってかなりの大人数。そこで4班に分かれての大移動でそれぞれの場所で解説。石川県の金沢城調査研究所や土木部公園緑地課の担当職員も相当の人数で臨んでくれました。
それでかわかりませんが、ポータブル拡声器が新品に更新されてたのを僕は見逃してませんよww

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藩政期のころからあった井戸です。今回中まで見せてくれました。
露出してる一番上は明治以降のコンクリですが、中は幅60cm、直径1mほどの石材をくり抜いてつなぎあわせて造られました。6mほどで埋まってますが、藩政期の堀の水面、8mほど下なら今でも地下水面で水が出るだろうということでした。
石材は柔らかく加工しやすい鷹ノ巣石。辰巳ダムのあるあたり、先月鉄塔のとこまで僕が登った記事の、あのあたりで産出されたそうです。昔鷹ノ巣城という山城がありました。

玉泉院丸110 
もうここまで近づけるのも今日限り。
あとは新幹線開業前の庭園暫定整備完成までおあずけです。
上面の土砂の撤去はこれくらいでおしまいのようで、基本、明治以降のガラクタ除去が主な目的で、あまり堆積物を除くと石垣が崩れる心配もあるとかで。

どんな庭園に仕上がるか、今から公開が楽しみです。その時は便利になった新幹線で、ぜひ大勢の方に金沢へ観に来てほしいですね☆