将棋 第3回電王戦 コンピュータ勝ち越し | Thinking every day, every night
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夢想家"上智まさはる"が人生のさまざまについてうわごとのように語る

このところ将棋電王戦の記事が続いていますが、行きがかり上、ここで口を閉ざすのもどうかと思うので...

コンピュータ将棋の2勝1敗で迎えた第4局は、先手 ツツカナに、後手 森下卓九段の対戦。
結果は、ツツカナが135手の熱戦の末勝利。これでコンピュータ側の3勝1敗。昨年に続き、コンピュータ側の勝ち越しが最終第5局を待たずに決定しました。

内容としては、プロ同士が指すような本格的な居飛車相矢倉戦。
互いにほとんど疑問手の出ない拮抗した、じりじりするような緊迫感あふれる中盤戦を経て、森下九段の僅かな疑問手を咎めたツツカナが、その隙のない指し回しで僅かな優位を保ったまま押し切りました。

■対局者プロフィール

森下卓九段は現在、名人戦順位戦のB級2組。クラスでいうとちょうど中間の位置にいますが、元A級の常連であり、タイトル戦にも数多く登場してきた実力派のベテラン棋士です。
居飛車の特に相矢倉戦に造詣と思い入れが深く、「森下システム」と呼ばれる定跡形を生み出して一時代を築きました。

対するツツカナは今大会のコンピュータ将棋側の予選会である「将棋電王トーナメント」で、ponanzaに次ぐ準優勝。敗れたのはponanzaのみで、この2ソフトが他をぶっちぎっていました。
トッププロが多用する居飛車戦法の本格派で、人間のような自然な指し回しが特徴的とされます。

■本対局への期待

この対局に対する個人的な期待としては、ぜひ奇をてらわずに、本格的な相矢倉戦でがっぷり四つに組んで、両者の持つ実力を存分に出し合ってほしいということ。

そしてそのとおりの展開になりました。

■序盤の展開

戦型は相矢倉。先手の3七銀形に対して、7四角が睨みを利かす対抗形。
35手目に先手ツツカナが3七銀を4六銀と少し挑発的な手を放つと、森下九段も許してなるかと4五歩と突き越して銀をバックさせ意地を通します。

その後、後手が5筋に、先手が4筋にそれぞれ飛車を回り、中央でのつばぜり合いの様相に。



■意外な大局観、2六歩

そんななか、意外だったのが48手目の先手2六歩
4筋と5筋での争いが続く中での、一見不急の一手に見えます。
大盤解説でもこの手は検討されませんでした。
しかしツツカナの「大局観」では、これが最善手との判断です。
ここまでの流れというものがあるので、人間にはなかなかこのような手は指せないと思われます。
といっても決してあり得ない手ではなく、むしろ指されてみるとなるほどと思える手ですね。

■驚きの5六歩

この後もほぼ互角の攻防が続き、55手目の先手5六歩がまた驚きの手。
ここはむしろ後手から積極的に出て行きたい地点。そこにあえて手駒の歩をぶつけて呼び込んだ手といえます。
しかも後手は歩切れ状態。そんな相手に歩をタダであげようというのです。
森下九段としてもこの挑発に乗らないわけにはいかないですよね。
しかしこの手の意味が私には未だによく分かりません。

結果として、後手は歩切れが解消し、盤上の銀が手駒の金に変わり、5筋の飛車先が素通しになりました。
一方、先手は、4筋の位を制圧するとともに、金矢倉が銀矢倉に変わりました。
一般に金矢倉より銀矢倉の方が防御に強い囲いと言われます。
これらの総合判断としてツツカナは5六歩を最善手と判断したんでしょうね。

しかし、先に述べたとおり、ここに歩を打たなくても、むしろ後手からこの地点に踏み込んでくる可能性も大きかったのです。
もしそうだとしたら、歩を無駄に浪費しただけにも見えます。

ここからは想像ですが、おそらく、後手に5六銀よりも評価値の高くなる手順が発見されたのでしょう。ツツカナはその手順に持ち込まれないように、5六に銀を誘導(強要)し形を決めに行ったた。

■後手の疑問手・敗着は?

その後は先手陣での駒のやりとりが何度か繰り返された後、後手が8筋、9筋に戦いの場を転回し、先手は中央の厚みで勝負といった展開になります。
結果的に見ると、先手玉の広さが際立ち、なかなか捕まりにくい形になったところを見ると、後手が62手目以降にとった中央での戦いの手順がどうだったか?
ただ、これで後手が不利になったとはいえないとも思います。

後手84手目9四歩を見て、先手は後手の9筋からの攻めを予想したのか、玉の守りの定位置である8八の位置をあきらめ、機敏に7八玉と早逃げを図ったのも秀逸。

そして99手目、先手が6五銀と後手の攻めの要になっている角に迫った手に対して、森下九段の100手目9九香成が疑問手だったか?
といっても、他には角をいったん自陣に戻すか、8六角と角銀交換するかしか手はなさそうですが。
あるいはそもそも後手84手目9四歩~9五歩~8五桂という一連の構想自体に無理があったか?

素人目には森下九段に明確な敗着の一手があったようには見えませんでした。
このあたりは識者の詳細な分析を待ちたいものです。

■存分に発揮されたツツカナの実力

最後は長手数の詰を読みきったツツカナがノータイムで指していく姿が、森下九段に負けを否応なく突きつけているようで、いたたまれない気持ちになりました。

森下九段はよく戦ったと思います。
時間の使い方もうまかったし、沈思するべきところでは深く検討し、いま持てる力を十分出し切った将棋だったのではないでしょうか?(将棋の素人が何を上から目線で語っているのやら)

ただツツカナの読みがそれ以上だったといえると思います。

たった一度の戦いでコンピュータの実力を断じるのは危険ですし、私にそんな資格はありませんが、あえて素人の勝手な放言をさせてもらえば、やはり多くの皆さんが思ってらっしゃるように、ツツカナの実力はトッププロ棋士と同等なレベルにまで達していると言っていいだろうと改めて実感できました。
そして変な先入観がないだけ、人間に見えない(指せない)部分まで見えるという利点をコンピュータ将棋は持ち合わせています。

次の第5局には、いよいよ、このツツカナが「将棋電王トーナメント」で一度も勝てなかったponanzaが登場します。
屋敷九段を前にどのような戦いを展開するか、またまた楽しみになりました。

以上です。