【国鉄バスカタログ】744形(その1) | 国鉄バスカタログ

国鉄バスカタログ

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旅客用車両の紹介として、最後に取り上げるグループとなります。
国鉄バスが誇った高性能車群、「7型」です。
記録台数が増えたため、744形を2回と748形を1回、合計3回で公開します。

 

 

7型は、ハイウェイバス専用車両として導入された、国鉄バスの最上級車両。
高速路線専用車として、特殊な性能を与えられているのが特徴。
高出力、高加速、高速性能、耐久性や安全性など、当時の常識とはかけ離れた
高度な要求を満たした車だけが、このグループに入ることを許されていた。

 

 

 

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7型車のほとんどは国鉄高速路線用に新開発された専用形式で、
既存の車両とは違う概念で開発されたものとなっていた。
例えばエンジン出力については、それまでの観光バスが200PS程度だったのに対して、
国鉄ハイウェイバスに搭載されたのは350PSという高性能なもの。
当時のエンジンラインナップにこの出力のものはなく、バス製造メーカー各社は
国鉄向けとして高出力エンジンを新規開発することとなった
(ただし開発された新型機関については、のちに一部の車種にも流用された)。

 

 

出力以外にも厳しい条件が設定され、これをクリアしたものだけが
国鉄専用形式として採用されることとなった。要求としてはこのような内容。
当時の大型バスとしては考えられないものばかりである。

 

 

・機関出力320PS以上(ただし過給器付きは不可)
・最高速度140km/h以上
・0-400m加速が29秒以内、80km/h~100km/h加速15秒以内
・3速80km/h以上
・排気ブレーキ100km/h~60km/h減速22秒以内

 

 

ほかにサブエンジン式冷房の搭載やトイレの設置など、サービス面の要求も加わる。
各メーカーは、高速道路上において100km/h・20万キロの耐久試験を求められた。
開発上大変高いハードルであるが、高性能のハイウェイバスを納入することは
大きな宣伝効果につながるということで、赤字を承知で開発されたという話である。
ただし全てのメーカーが要求を満たした車を開発できたわけではなく、
いすゞ車については初回量産車のみで終わり、以降はついに1台も作られなかった。

 

 

7型は高速専用車という性格上、当時ハイウェイバス運行を担当した
東京・名古屋・京都の各自動車営業所と大阪支所のみに配置された。
性能を除いて考えても、とにかくスマートで美しいバスであった。
当時の国鉄は新幹線0系が花形の時代。
ちょうど同じ頃デビューした青函連絡船津軽丸型が「海の新幹線」と呼ばれたが、
ハイウェイバスは「バスの新幹線」として、子供たちの憧れだったのである。

 

 

 

744-4906
国鉄専用形式は、東名高速線の開業に際して新しく設定された車両群。
1969年(昭和44年)の東名高速開通から導入されている。
三菱車初代はB906Rという車。350PSを発揮するV12・20Lエンジン「12DC20」は、
すでに開発されていたV6エンジンを2基繋げた構造のもので、
実際の馬力は400PS以上と言われるスーパーバスである
(B906Rの実車は西日本JRバスの社内で保存されている)。
ゼロヨン加速は26秒を記録(23秒説もある)、驚異の性能を達成した。

 

 

 

この4906は、1974年(昭和49年)に納入されたうちの1台。
初代B906Rの後継車種「MS504」系の、最初の導入グループに当たる。
三菱のMSシリーズの本格的な量産開始は1976年まで待つことになるが、
国鉄向け特注として先行してMS系を名乗ったものである。
新形式のMS504Qとなり、これは国鉄のみに導入された専用形式。
スタイルは初代とほぼ同じで変化はないが、シャーシは完全な新型。
エンジンは新開発され、V10・18.6Lの10DC6型となった。
従来の出力を維持しながら小型化に成功。技術の進歩の成果といえる。
このエンジンは排ガス規制等による小改良を受けながら、長い期間
国鉄ハイウェイバスの心臓として使われ続けることとなる、まさに名機だった。
公称値(市販形式ではないので完全なデータは一般向けには公開されていない)は
350馬力とされているが、やはり実馬力はそれ以上と言われている。

 

 

MS504Qの初回ロットは4901~4910の10両が製造されたようだが、
1986年の時点では4905~4908(東京)と、4910(京都)の5両が残っていた。
ドリーム号仕様として生産された車で、側窓は最前部の一つを除き固定式。
窓配置やリアスタイルは初代の名残が色濃く、MS504系の中でも異色の車であった。
特筆すべきはその性能。MS504系はこの後8年に渡り増備が続くが、
1974年に導入の初期型のみエンジン出力が異なるのである。
諸元表によると、この車の出力は375PS。実馬力はさらに高性能という噂で、
400PSだとか420PSという驚異的な数値すら聞いたものである。
歴代の高性能ハイウェイバスの中でもっとも高出力な車両であったということだ。

 

 

最高速度は145km/h。観光バスの多くは6速ミッションだが、
高速加速・巡航に特化した国鉄専用形式は5速仕様で、セッティングも独特。
この形式の場合、各シフト位置における許容最高速度は
1速29km/h・2速45km/h・3速80km/h・4速115km/h・5速145km/hという刻み。
高速本線上の短いバスストップで停止状態から加速しても、本線合流の時点で
すでに80km/h近くまで達しているという、すさまじい性能を持っていた。

 

 

国鉄バスは通常10年で引退する原則だったが、この車は国鉄解体まで生き残った。
ドリーム号仕様車は、夜間は東京~名古屋・京都・大阪、
そして昼間は東京~静岡や大阪・京都~名古屋の間合い運用と、
昼夜問わず走り続けるというきわめて過酷な条件で使用されていた。
この車は13年の長きに渡り走り続け、引退時の走行距離は240万kmに達したという。
性能も耐久性も、国鉄が要求したものをしっかりと満たしていたことを証明した。
軸距6.4m・全長12mのフルサイズのボディ、現代のハイデッカーとは明らかに違う
低いフォルム。今のバスには見られないスマートで優雅なスタイルが、とても美しい。

 

 

744-4906 三菱MS504Q (富士重) 東京自動車営業所
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744-5904
7型といえば「国鉄専用形式」を連想するが、例外もある。
この車は大阪に配置されていた中国高速線用の車両である。
1975年式(昭和50年式)、形式はB907N。エンジンは8DC6(300PS)。
国鉄用に開発されたものではなく、市販形式をそのまま採用した。
同型車はほかの営業所にもあり、それらは6型として導入されている
(644形(その1)「644-4901」を参照)が、この車は高速専用の7型で登録された。
比較的短距離の中国高速線用ということでトイレは設置されていない。
外観ははMS504系と酷似しているが、軸距5.7m・全長11.33mとやや小ぶりであり、
車体が短いぶん側窓が一つ少なくなっている。

 

 

 

744-5904 三菱B907N (富士重) 京都自動車営業所大阪支所
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744-7904
1977年度調達。7901~7920の20両を、東京・名古屋・京都に投入している。
MS504Qについては1975・1976年度の配置はなく、3年ぶりの増備となった。
1974年車はドリーム仕様だったが、この年度は昼行便仕様車。
補助席付きとされ、全ての窓が開閉可能な引き違い式である点が異なる。
搭載エンジンは引き続き10DC6だが、この年度から最高出力が350PSとされた。
ただしこれは公称値、実馬力は相変わらずそれ以上という話だが…。
非公式かつ未確認の情報だが、MS504系は「140km/hは楽々出た」らしい。
レッドゾーン直前まで回せば、最高速度は公称値の145km/hを上回るようである。
民間観光バスの中には多少のチューンナップを施した車両もあったそうだが、
国鉄高速車には全く太刀打ちできず、あきらめて道を譲ったと言う話もよく聞く。

 

 

 

744-7904 三菱MS504Q (富士重) 京都自動車営業所
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744-9904・9906
1979年度に中国高速線専用として投入したグループで、9901~9909の9両を新製。
従来は既存形式のB907Nを導入していたが、この年の導入分からは
東名・名神高速線と同型のMS504Qでの調達となった。
トイレについては引き続き設置されず、その分定員を多くとっている。
無線を装備しないため、屋上のアンテナも省略されたのが外観的特徴といえる。
国鉄末期、中国高速線の車は新塗装へのリニューアルが進められていた。
MS504系のシルエットに釣り合っていたかは微妙だが、意欲的な取り組みだった。

 

 

 

744-9904 三菱MS504Q (富士重) 京都自動車営業所大阪支所
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744-9906 三菱MS504Q (富士重) 京都自動車営業所大阪支所
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744-9909・9911・9916・9917
上記9904と同じく1979年度に導入された車だが、こちらは東名・名神高速線用。
9909~9918の10両が新製され、東名高速専用として東京自営に配置された。
トイレや無線アンテナも装備され、国鉄ハイウェイバスらしい外観である。
昼行便仕様で補助席付き。側窓もドリーム号仕様と異なる開閉式のもの
(法規上補助席装備車は非常時脱出用の意味合いで固定窓にはできない)。
ただし開閉式になっているのはあくまで法律上のものであり、運行中は開閉禁止。
窓にも「この窓は開けないでください」のようなシールが貼ってあった記憶がある。
こっそり開けると運転席に表示灯が点灯し、運転手にわかる仕組みとなっていた。

 

 

 

・744-9909
浜松行急行として運行前、東京自営で待機する姿。
国鉄ハイウェイバスを象徴する、すらりとしたスマートなボディが印象的。
外観だけではなく中身も徹底的に洗練されていて、特に軽量化に注力されている。
シートは軽量素材を多用。ボディも軽合金を積極導入、屋根は磁石が付かないそうだ。
特殊な合金でリサイクルが難しく、引退後も解体業者が敬遠したという逸話がある。

 

 

744-9909 三菱MS504Q (富士重) 東京自動車営業所
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・744-9911
名古屋11時20分発の18便特急で、夕暮れの東京へ戻ってきたところ。
右隣りに写っているのは出発待ちの急行静岡行きで、こちらは日産ディーゼル製。
国鉄ハイウェイバスの車体構造はほぼ統一されており、外観はそっくりである
(ただしシャーシが異なるため床構造に違いがあり、シートピッチが微妙に違うので
側窓の寸法もいくらか異なっている)。

 

 

744-9911 三菱MS504Q (富士重) 東京自動車営業所
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・744-9916
東京自営で休息中。名古屋往復だと1運用で700km以上という長距離になる。
担当の各営業所ではハイウェイバスの点検整備が丁寧に行われていた。
余談だがMS504系各車の燃料タンク容量は250L。東京~大阪行でも無給油運行
だったから、リッター当たり4km以上の燃費性能は持っていたようである。
フロントグリル内、左右のライトを結ぶように付けられた直線のモールは、
ラインがレッド・ブルー・ブラックの3種が存在したようだ(この車はブルー)。

 

 

744-9911 三菱MS504Q (富士重) 東京自動車営業所
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同車のリアビュー。当時の観光タイプのボディとしては洗練されたものだが、
今の車と違いルーバーが開口しているなど、この頃の車は武骨で力強さがあった。
国鉄最終日の撮影。同車の国鉄所属時代最後の姿である。

 

 

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・744-9917
左も右もMS504。国鉄ハイウェイバス全盛期には当たり前だった光景。

 

 

744-9917 三菱MS504Q (富士重) 東京自動車営業所
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特急名古屋行として運行中の同車。足柄SAで休憩中の記録と記憶している。
東名高速線では足柄SAと浜名湖SAを休憩地に設定、それぞれ7分間停車した。
乗務員については静岡で交代、東を東京が、西を名古屋が担っていた。

 

 

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744-0905・0906・0907・0911・0914・0915・0920
1980年度(昭和55年度)導入車。
この年度は744-0901~0922までの22両と、多くの車両が新製されている。
排ガス規制などの関係でこの年から形式が変わり、MS504R(K-MS504R)となった。
MS504Qの改良車という位置づけで、エンジンスペック上は大きな変化はない。
最高速度については140km/hに変更されたが、適正化といえるかもしれない。
0901~0920については東名・名神高速線仕様で投入されたもので、
東京のほか京都や静岡にも配置された。

 

 

 

・744-0905
東京自営で休息中の姿。後に見える壁は両国国技館である。
かつての東京自営は両国駅至近、国技館のすぐ裏にあった。
現在JRバスの車庫は江東区へ移動、旧東京自営の敷地には江戸東京博物館が建つ。
四半世紀を経て、風景もすっかり変わってしまった。

 

 

744-0905 三菱MS504R (富士重) 東京自動車営業所
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・744-0906
浜名湖SAにて小休止中の名古屋行特急。約350kmという長い運用の合間である。
休憩場所では乗客の多くが下車し、休憩をとった。乗務員にも大切な
リフレッシュタイムである。車両の点検をしたりストレッチをしたりという姿を
よく眺めたものだ。お仕事ご苦労さま。

 

 

744-0906 三菱MS504R (富士重) 東京自動車営業所
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・744-0907
同じく浜名湖SAで途中休憩中のようだが、こちらは上り線。
特急26便は名古屋駅14時発・東京駅20時06分着というダイヤである。
浜名湖で日没間際ということは、冬至前後の撮影か。
これから夜の高速をひた走ることになる。

 

 

744-0907 三菱MS504R (富士重) 東京自動車営業所
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・744-0911
上の0907と同じ位置、運行便も全く同じ26便のようだ。
朝の始発で東京から名古屋まで乗ると、折り返しがこの時間帯になる。
当時は往復割引を利用して、こんなとんぼ返りの旅を時々していたようである。
路面が濡れているが、雨上がりだろうか。
ちなみに国鉄7型の全車はブレーキに「アンチスキッド」機構を備える。
今でいうABSだが、じつは日本の自動車として初めてABSを装備したのがこの7型。
当時の自動車メーカー各社はこの技術を実用化できておらず、
国鉄の研究部門「鉄道技術研究所」が開発した新技術を採用したもの。
運転席に「普通の路面」「滑り易い路面」と書かれた切り替えスイッチがあり、
恐らくはこの操作で反応の度合いを2段階切換できたようである。

 

 

744-0911 三菱MS504R (富士重) 東京自動車営業所
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・744-0014
これまた浜名湖SA、26便特急の画像。やはり冬至前後の撮影に見える。
左右共にアームを介して前方に突出したミラーが、国鉄ハイウェイバスらしい。
都市部や狭隘路で曲がるとき支障になりやすいため、運転席側ミラーは
突出しないよう側面窓側に取り付けるのが普通だが、国鉄バスの7型車については
あくまで高速路線専用車であり、旋回時性能の悪化を承知でこの形態にしている。
高速運行中乗務員の視線移動を最小限にとどめ、安全性向上と疲労低減を狙うもの。
スピードメーターについてもメーターパネル上部に取り付けられており、
やはり視線移動を最小限に保ったまま速度確認できるような配慮をしている。

 

 

744-0914 三菱MS504R (富士重) 東京自動車営業所
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・744-0915
東京駅八重洲南口ハイウェイバス乗り場にて降車扱い後の様子。
「312」の表示が見える。静岡を9時45分に発ち東京に13時に着く急行のようだ。
近年丸の内側の開発が著しいが、八重洲はこの頃すでに完成されていた感がある。
ちょっと見た感じ今とあまり変わらない。背後の八重洲ブックセンターも今なお健在。
ただし金融機関の変化は大変なもので、四半世紀で大きな変化を遂げている。
住友信託銀行と日本興業銀行が見えるが、いずれも合併を繰り返し現存しない。
日本がバブル景気のピークを迎える前、まだ好景気の中を突き進んでいた時代。

 

 

744-0915 三菱MS504R (富士重) 東京自動車営業所
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同車の民営化後の姿。引き続き東京にあり、塗装もそのままで東名を走り続けた。
フロントグリルのモールのカラーが変わっている。整備時に他車のものと
入替えでもしたのだろうか。

 

 

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・744-0920
1980年度のロットの中で、ただ1台静岡に配置となった車。
所属としては名古屋自営だが、静岡駐在を使用の本拠地として登録されたもの。
このように本来の自動車営業所と別拠点に置かれる昼行便仕様車が少数存在する。
民営化後もそのまま静岡に留まり、東名高速線専用として活躍を続けた。

 

 

※この画像は民営化後の撮影

 

 

744-0920 三菱MS504R (富士重) 名古屋自動車営業所
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744-0921・0922
上記と同じく1980年度(昭和55年度)導入のMS504Rだが、0921と0922の2両は
中国高速線仕様として調達され、大阪支所への配置となった。
トイレなし・無線なしの特徴は79年度導入分のMS504Q中国高速線車と同様である。

 

 

 

・744-0921
大阪駅前に到着した急行便。満席だったようで、お客さんが続々と降りていた。
中国高速線は乗客が多く、トイレ設置より座席を増やすメリットを重視した。
神姫バス共同運行という性格もあり、国鉄バスの従来車もリニューアルを実施。
東名や名神には見られなかった新塗装だが、中国高速線は殆どが塗装替えされていた。

 

 

744-0921 三菱MS504R (富士重) 京都自動車営業所大阪支所
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・744-0922
中国高速線のリニューアル車両は、塗装変更と同時にフォグランプも交換されている。
ちなみにこの車の製造シリアルは「MS504R-50022」。
MS504Rは50000番台のシリアルを持つが(MS504Qは20000番台)、国鉄専用形式と
いうことで他の事業者には納車されておらず、ゆえに初年度調達分の1980年式車は
固有番号の末尾2桁ととシリアルの末尾2桁の数字がぴったりと一致している。

 

 

744-0922 三菱MS504R (富士重) 京都自動車営業所大阪支所
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大阪駅から落合インターに向けて間もなく出発する急行便。
後に見える従来塗装の7型は、後発の名古屋行名神線だろうか。
ホームには立派な屋根があるが、これが「スーパーハイデッカー泣かせ」である
(背の高いスーパーハイデッカーはたびたびこの屋根に接触した)。

 

 

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1981年度以降の744形については、次回にまとめます。