鑑定人になる前の筆跡鑑定の勉強をしている頃から「伝統的筆跡鑑定法」では筆者識別はできないと考えていた。今なお,伝統的筆跡鑑定法が主流となっていることで,ますます筆跡鑑定の信憑性が低下し続けているのは言うまでもない。

 

これまで,「伝統的筆跡鑑定では筆者識別ができない」と述べた鑑定人は,私の知る限り誰もいない。なぜなら,ほとんどの鑑定人がこの鑑定手法を採っているので,それゆえ自らの鑑定法を否定することになるからだ。

 

しかしながら,何十年もの間,警察系研究者やこの鑑定法を採用している鑑定人が何の疑問も持たなかったことが不思議でならない。余程,筆跡鑑定にセンスも素養もない者が行っているのであろう。

 

それでは,『伝統的筆跡鑑定法では筆者識別はできない』ことを証明しよう。

 

 

図の上段5文字は,Aさんが10年以内に,場所や筆記用具,感情等などが異なる様々な場面で書いた「大」という文字の筆跡である。まず,図4をご覧いただきたい。ご覧の通り,時と場合によって画の長さや形状などの変化が見られる箇所である。

 

次に,図5をご覧いただきたい。時と場合によっても筆跡に変化が起こりにくい箇所であることがお分かりいただけるであろう。そう,これが時と場合によっても変化のしにくい筆跡個性なのである。

 

頭の良い方であれば,図4のような都度変化する特徴をいくら比較しても意味がないことなど容易に理解できると思われるがいかがであろうか。伝統的筆跡鑑定法を採用している鑑定人は,この理屈が分からないので,こんな意味のない箇所を一生懸命比較しているのだ。だから,筆者識別はできないのである。

 

つまり,比較対象とするのは時と場合によっても変化の起こりにくい筆跡個性を特定し,その比較を行わない限り筆者識別などできない。この業界はこんな簡単なことを何十年も疑問すら湧かず,伝統的筆跡鑑定法で鑑定をしているのだ。こんな者が,裁判所から指定された筆跡鑑定人と自慢しているのである。こんな鑑定人でも裁判所から指名されているのが現状だ。

 

本当にアホらしい業界なのである。