『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で面白いのは、カート・ラッセルとゾイ・ベールが夫婦役で、それも共にスタントマンとして出演しているところだ。タランティーノ監督ファンとしては周知だろうが、この二人、同じスタントマン役ながら、『デズ・プルーフ in グラインドハウス』では、命を張った丁々発止の修羅場を演じた間柄だ。『バニシングin60』に登場したフォードマスタングエレノアで趣味のカースタントに興じるゾイ・ベールらを執拗につけ狙い、一時は彼女の命を奪うかに見えたカート・ラッセルが、その後逆に彼女らのこってりとした反撃を喰らい、“チョムチョム(by『あしたのジョー2』)”状態でKOされる……そんな命がけのバトルを繰り広げた2人が、同じスタントマン(ウーマン)キャラのまま、同じタランティーノ監督作品で、ちゃっかり夫婦役を演じるとは……流石タランティーノならではの“お遊び”といえる。

 

 さて、かつて『キル・ビル Vol.1』において、戦闘シーンでのウマ・サーマンの“ボディダブル”を演じ、タランティーノ監督の覚え目出度いゾイ・ベールは、先の『デズ・プルーフ in グラインドハウス』の活躍もあってか、『エクスペンタブル・レディーズ』で主役を演じている。このタイトルからして、スタローンプロデュースの『エクスペンタブルズ』シリーズの“パクリ”ともいえる作品の中で、彼女は『ターミネーター3』のクリスタナ・ローケンや往年の香港アクションヒロインであるシンシア・ロスロック、更には“本家”『エクスペンダブルス』のスタローンの元妻ブリジット・ニールセンと競演しながら、無敵のヒロインを嬉々として演じている。物語のベースが『エクスペンダブルズ3』の模倣というのが、如何にも“柳の下のドジョウ”を狙うハリウッドのしたたかさを感じさせてGoodなんだけど、ヒロインアクションに特化したノリなんで、私も楽しませてもらった作品だ。

 

 

 そんなゾイ・ベールが同じタランティーノ監督作品で、“セルフパロディ"を演じるのは観ていて実に楽しいし、ホロッとさせられる(;^_^A 過去のキャリアを考えても、おそらくずっと 『ワンス・アポン~』のブラット・ピットのように、有名俳優の"ボディダブル"を演じ続けていたであろう彼女を、いっぱしの女優として登用し、彼女のキャリアアップに繋げたタランティーノ監督の心意気を、今改めて感じ入る次第だ(;^_^A