前回記事。👇

 

 

 

演技のトレーニング法って。

なんで、いろんなやり方(時に、こうやって相反するやり方)が存在するのでしょう??

 

 

実は、演技法の “成り立ち” を見ていくと、この意見の対立の謎が少し解けてくるんです。

 

 

今日の世界標準となっている演技法スタニスラフスキー・システム

 

実は、これを生み出したコンスタンチン・スタニスラフスキーという人自身が、その人生において、前半と後半で演技(感情)に対する主張を180度変えていることに起因してるんです。

 

 

▲コンスタンチン・スタニスラフスキーさん。

僕らが日常的に接している現代劇の基礎を築いた、「演技のゴッドファーザー」みたいな人です。

 

 

 

……「感情とは、記憶できる。過去の感情を呼び起こせる」

そう主張していた、彼の人生の “前期” の考え方に対し。

 

「感情とは、書き留めておくことも、再現することもできない」

と、一転。

“後期” で、主張をひっくり返しているんです。

 

 

当然ながら、その方法論も逆転します。

 

 

彼の人生の “前期” の教えを受けた俳優や演技コーチたちは、感情に対し、前半期のアプローチ「自分の過去を思い起こすことで、特定の感情を引き出す」という方法を。

 

“後期” の教えを受けた人は、後半期のアプローチ「感情は、過去を思い出しても再現できない」という考え方を学んでおり。

 

 

同じスタニスラフスキーの手法やメソッド演技法を学んでいるといっても、真っ向から「感情」に対しての意見が対立することがあり得るんですね。

(そのくらい、人間の感情ってまだまだ神秘的なものなのでしょうね……)

 

 

 

「……ちょ、困りますよ。言ってることが真逆じゃないっすか」

「う、うん……ごめんな」

 

 

 

ちなみに、僕の場合は、“後期” の流れを汲んでいます。

 

一方。

前回記事でお伝えしたような「俳優に過去の記憶を辿らせて、感情を呼び起こす」方法を強く推し進めるコーチは、スタニスラフスキーの “前期” の流れ。

(※もちろん、進化の過程で複合的に混ざりあったりしてるので、くっきりと切り分けられない場合も多々あります。)

 

 

結果的に、どちらも「自分自身の経験」というのが演技にとってとても重要な要素にはなるんですけども。

「感情は再現できる」という立場から、実際の過去を使って感情解放をするという手法と。

「再現できない」という立場で、過去の経験を参考に、想像で心にアクセスしてゆく方法論とで、主張や教え方が180度変わってしまうんですね。

 

 

 

そんなわけで、僕の演技ワークショップ「EQ-LAB」は。

 

自分自身の過去を思い出す感情解放は実施しません。

 

事前に、役の状況を理解し(役作り)。

演技が始まったら、ただその瞬間の「実行すべきこと」を本当に実行さえすれば、感情は無理に再現しようとしなくても、自然と湧き上がってくる、という方法で指導します。

(スタニスラフスキー後期の方法論で「スコア」といいます)

 

 

そうやって自然と湧き上がってきた感情は、俳優自身のものであり。

同時に、役が抱いている感情でもある……。

 

 

 

 

 

 

自分と役の境界線は、そうやって「自然と」消失していく、というのが、役の人生を「本当に」演じるために必要な、無理のないプロセスだと考えています。

 

 

だから、もしかすると。

クラスの中で強引に「感情解放!」と飛び込んでいくことがないので、最初は「演技の訓練って、こんな楽チンでいいの?」と思われるかもしれません。

 

 

根性論で追い込むのではなく、一人一人の中にある感性とクリエイティビティを使って、伸び伸びと健康的な芽を育て、花を咲かせること。

それには、苦しい環境ではなく、楽しめる場所が必要です。

 

「楽だ」と感じるということは、自分にとって「自然だ」ということでもあります。

「苦しい」というのは、不自然な証拠です。

 

 

「演技の上達には、茨の道を通ってはいけない。」

これは、僕自身がコーチから何度も言われた言葉です。

 

 

厳しすぎる環境。

自分にとって難しすぎる題材。

 

 

そうした茨の道は、かえってクリエイティブな道を閉ざしてしまいます。

考え込み、思考を働かせすぎてしまうことで、本能や潜在意識の働きにブレーキをかけるのです。

 

 

進みやすい道とは、今、自分にとって最適な道。

人間が「本能的に」こっちだと選んだ道のこと。

 

 

“クリエイターやアーティストにとって、思考ではなく潜在意識を発動させることが大切”

これは、演劇の世界にとどまらず、ビジネスやスポーツなど、今日のさまざまな場所で認められていることです。

 

 

ちなみに。

上述の「スコア」という方法を用いると、演技に複雑なことを持ち込む必要はなく、

「ただ、その瞬間に、対象に注意を向ける」

という単純な方程式をトレーニングするだけで達成できるんです。

 

演じている最中も、ただただ、その瞬間に集中して実行するだけ。

 

ピアニストが、一つ一つのコードを順番に押さえれば、自然と曲になって感情が湧き上がる……。

それと同じことが、演技でも起きるのですね。

(だからスタニスラフスキーは、これを「スコア=譜面」という、音楽用語を使って説明したんですね)

 

 

複雑な方程式は、実行するために「茨の道」になってしまうため、どうしても思考を使ってしまう。

 

 

単純な方程式ほど、本能的に実行できるのです。

 

 

 

2022年1月からスタートする3ヶ月ワークショップ

潜在意識にアクセスするこの方法は、どこまでもクリエイティブで、一人一人の個性を活かせるものです。

 

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