ABO式血液型で性格診断を行うような会話がなされることがあります。「私は典型的なA方だから几帳面なんです。」とか、「あなたはO方には見えないね。」などという会話を聞いたことがあるでしょう。

このような、「ABO式血液型で性格診断」で「性格」が、客観的、科学的に説明できるのかどうか考えてみましょう。

 

 そもそも、ABO式血液型というのはどのようなものなのでしょう。「高校の遺伝の授業などで習った」という方もいらっしゃるかもしれませんが、遺伝の授業では、ABO式血液型の遺伝方式については取り上げますが、それぞれの血液型は、血液の何が異なるのかまでは踏み込まないことが多いので、ここで改めて確認しておきます。

生物は細胞を生命の最小単位としています。そして、細胞の表面には、「糖鎖」と呼ばれる、様々な「糖」が連なった鎖状の物質が結合しています。血液の中に存在する赤血球も細胞の仲間なので、その表面にも糖鎖が存在します。その糖鎖の先端に結合している糖の違いによって、血液型が異なっています。それをまとめると、以下のようになります。

 

 A型:N-アセチルガラクトサミン

 B型:ガラクトース

 O型:N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース共に持っていない

 AB型:N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース共に持っている

 

 このようなことから、なぜ「O型」は、AやBという記号を使わないで表記をするのかということもわかると思います。

 

 一方、ABO式血液型が上述のように、科学的根拠をもって4種類にきっちり分けられるのに対し、「性格」は実際何種類に分けられるのでしょうか。「おおらか」、「几帳面」、「神経質」、「頑固」、「社交的」...挙げればきりがありません。また、「几帳面」という性格一つとっても、判断する基準をどこに置くのか、「几帳面な人」と「そうじゃない人」の判断を客観的にできるのか、など、曖昧な部分がとても多いことがわかります。

 仮に、「血液型」と「性格」を、統計学的手法を用いて結びつけられたとしましょう(これまでの歴史の中で、そのような研究も数多く行われてきたようです)。そうした場合、次に、「赤血球の表面に存在する糖鎖の先端の糖の違いが、どのようにして性格に影響するのか」を、科学的根拠をもって説明できなければなりません。個人調べですが、このような研究はこれまで行われてこなかったようですし、単純で客観的に説明できる血液型の違いに対して、性格の違いは複雑で、曖昧で、主観的な要素も多々含まれてきます。

 以上のことから、言わずもがなですが、「血液型」と「性格」を、科学的に結びつけることにはかなり無理があることがわかります。

 

 ただかくいう私も、自分と同じAB型の人に会うとなんだか親近感がわきますし、血液型と性格についての話題がコミュニケーションツールの一つにもなっていることは事実です。しかし、「血液型性格診断」を心から信じてしまい、結婚や就職など、人生のなかでとても大きな選択の材料として用いてしまうことがないことを願うばかりです。

 

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