【免疫暴走の巻】 | くろしんのブログ

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世田谷梅ヶ丘 くろしん接骨院 の ブログです。

前回は『抗体』について解説しました。今回は『ワクチン』がテーマの予定でしたが、変更して『免疫暴走』に

ついて解説することにいたしました。どうぞご了承ください。

 

本来守ってくれるはずの免疫ですが、時には悪さをすることがあります。
身近なものだと花粉症などアレルギーやリウマチなどの自己免疫疾患がそれにあたりますが、

実は新型コロナが重症化するケースも免疫が犯人であることが分かっています。

 

下図をご覧ください。

 

BMJ 2020;371:m3862より

ウイルス量のピーク時は発症前後であり、中等、重症となっていくにしたがって激減していますね。

一方の免疫、ここでは抗体量ですが、これは症状悪化に伴って増えていくのが分かります。

つまり、ウイルスは発症の引き金に過ぎず、その後は自らの免疫によって痛めつけられるのです。

本来守ってくれるはずの免疫ですが、このように暴走し、逆に自らを危険な目に合わせてしまうことがあります。

その代表例をいくつかご紹介します。

 

「アナフィラキシーショック」はご存じの方も多いと思います。

複数の臓器や全身にアレルギー反応が起こり、血圧低下や意識状態の悪化など危険なショック症状が起きることです。てこれは蜂毒や食物でよく見られますが、後者の方が圧倒的に多いようです。(ワクチンでも女性に多く見られています)

 

「サイトカインストーム」は最近なにかと話題に上がりますね。

 

“サイトカイン”とは感染細胞が放出する炎症物質の総称です。

細胞が感染するとS0S信号として出されます。出されると免疫細胞が感知して現場まで駆けつけ、そこで活性化した免疫細胞により更にサイトカインが放出されます。

 

この一連の仕組みが過剰になって制御不能に陥ると、病原体だけでなく自分の正常細胞をも攻撃してしまいます。

この時サイトカインが、吹き荒れる嵐の様に体内で大量にみられる様子から“サイトカインのストーム”(嵐)と呼ばれているのです。

又、血中サイトカインが過剰に増えると、血栓が出来やすくなります。

これは新型コロナ重症例で多く見られ、肺炎に併発した塞栓症や下肢深部静脈血栓症や脳梗塞が多数確認されています。

 

「ADE (Antibody-Dependent Enhancement)も紹介しておきましょう。

 

 

 

日本語で「抗体依存性感染増強」と言いますが、文字通り、抗体の存在がかえって感染を増強させてしまう恐ろしい現象のことです。

前号にて解説したように、抗体はウイルスだけでなく免疫細胞にも結合します。本来それでウイルスをやっつけるのです

が、逆にウイルスの味方をしてしまう抗体があるのです。(悪玉抗体

ウイルスが結合した悪玉抗体を通して免疫細胞内に侵入し、あろうことかその中で増殖してしまいます。結果感染が拡大するのですが、これに対抗すべく抗体がさらに産生されます。しかし、ここで悪玉抗体が増えてしまうと更に感染悪化と言う悪循環に陥ってしまうのです。

 

この時には恐らく「サイトカインストーム」も発生しており、どちらも本質的には同じ免疫の暴走状態と言えるでしょう。

「ADE」も新型コロナ重症例で確認されており、悪玉抗体の存在も先ごろ大阪大学荒谷チームによって発見されています。

  今回は、本来なら強き味方である免疫が時として暴走して自らを攻撃してしまうと言うことをご紹介しました。
次回こそは「ワクチン」について解説いたします。専門用語が多くてすみません。