コーチング事例113 ワンマン社長の気持ちを探る | Blog版日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー協会(JIPCC)

コーチング事例113 ワンマン社長の気持ちを探る

梅雨の空模様になりました。

低気圧を敏感に感じ、気分が乗らない・・・なんて自分を感じることがありますか?

さて、今日の最初の質問は、

「この季節、体と心を安定に保ち、やる気を高めるために工夫をしていることはなんですか?」

皆さんのアイデアをお寄せいただくことで、他の人に気づきを与えることができる。

コーチ冥利に尽きますね。


今週は、ワンマンな社長の気持ちを探るセッションについてです。

皆さんなら、どんなコーチングをなさいますか?



【背景】

飲食店を経営する社長、68歳。この道一筋46年。地域でも信頼の厚い紳士として名高いのですが、実は、オフィスの中では、相当なワンマンで、奥さまはもとより、社員は全員「イエスマン」ばかりか、または、社長の意向を無視して、自分の信念を貫き通すベテラン社員ばかりです。

なぜ、社員が信念を貫き通すことができるかといえば、それが社長の口癖だからです。

「人として生きる者、信条を持たずして生きてはならない」と、毎朝の朝礼で訓示されることをいいことに、社員は、「それがわたしの信念です。教えを元に、信念を持つことができたのは、社長のおかげです」と、こんな調子です。

これまでの経営はとても順調だったのですが、新規出店の準備の際、新規店要員として新たに採用した社員4名のうち、3名が退職したいと申し出たそうです。理由は、店長が働かないのに、ワンマンにふるまうことが承服できないということでした。

しかし、この人事は、前々から新規店の店長にするからと言って、無理な仕事をこなしてもらっていた腹心の部下の問題だけに、どうしても、店長から外すわけにはいかないと考えた社長は、これまで、3度、新規採用者とのミーティングを持ちました。

ところが、意見を聞いてもらえると思って参加していた新規採用者は、2度ほどは、ミーティングに期待を持って臨まれたようですが、3度目のミーティングの後、「あなたの考えにはついていけない。あなたも信頼できない」と言って、3名揃って、辞表を出されてしまったそうです。



【コーチングの方向性】

私は信条に従って仕事をしている。だから、店長は代えられない。しかし、皆さんにも一緒に働いてもらいたいという自分の気持ちを伝えるためにどうしたらよいかを考えるコーチングを希望する


「社長、お元気そうですが、いつになく、ご機嫌が悪いように見えますが?」

「あんたは、いつもはっきりモノを言うねぇ・・」

「ありがとうございます。直観で人の心を受け止められるようになりたいというのが、私のコーチとう仕事上の目標です。今年は、私が感じたことを、正直に申し上げ、それが的を得ているのか、的が外れたのかを教えていただくようにしています・・・ということは、前にもお話しさせていただいたと思うのですが・・・」

「そうだったね。あんたも信念を持って生きているということだねぇ」

「はい。しかし、今日は歯切れが悪いですね」

「そうだね。わたしは、これまで、みんなの考えの及ぶことは、大概は理解してきたつもりだが、

今回だけは、困ったよ。みんなに私の思いが伝わらないばかりか、わたしも理解できない」

「理解できないことに何を感じるのですか?」

「理解できないことにかね? 苛立つだけだよ、まったく、今どきの若いものは、礼儀も知らないし、まったく、せっかちで困る。入社して半年で、何がわかるんだろうね」

「入社して半年で、社長の信念を理解することはできないと?」

「そうだよ、まったく。仕事というのは、いやなことも引き受けて、初めて自分の身になる。そんなことも理解せずに、ただ、あの人の下じゃ嫌だというのはわがままだろう。そうは思わんかね?」

「そう思いますといいたいところですが、わたしに同意を求めるということは、何か迷うところがあるのですか?」

「いやぁ、今どきの若いものは、そんなものかと思って。わからんねぇ・・今の若い者は」

「社長が今の若い人がわからないように、若い人も、社長がわからなかったのではないですか?」

「ん??・・」

「どのくらい、話をされる機会をお作りになっていましたか?」

「いやぁ・・・わたしは忙しいので、新規店のことは、店長から情報を得ていた。店長からは、新しいスタッフが、なかなか、当社の理念や行動になじめず、わたしは苦戦している。他店舗から、一人でもいいので、わたしのことを理解している人材を回してほしいとか、とにかくやり辛い、

言うことを聞かない。新参者のくせに、自分に反抗するといったことを聞かされてきていたので、一度、新入社員と食事でもと思っていた矢先に、3人そろって話があると申し入れてきた。だから、ミーティングの機会を3度も持ったのに。我慢ができないんね、今どきの若いもんは」

「もし、その気持ちを、相手が感じたとしたら、社長に信頼を寄せると思いますか?」

「わたしは、これまで40年以上も、これで経営してきたんだよ。失礼じゃないかね?わたしが、自分の気持ちを、相手に悟られるはずはないよ」

「確かに、そうでしょう。しかし、読み取られまいとして、心を閉ざしていて、相手の心を受け入れる隙間を作っていないとしたらどうでしょう」

「・・・・・それは、・・・・」

「もうひとつ確かめたいんですが、今どきの若い人のイメージって、どんなイメージですか?

おっしゃるように、我慢ができず、失礼な奴らということですか?」

「まぁ、それはそうだろう・・?」

「では、そんな若い人は、まったく信じられないということですか?」

「・・・つまり、わたしが相手を信じてないことが、問題だというのかね?」

「お互いに問題があったのではないかということです。お互いがお互いを信頼し合う前に雇用関係が終わってしまったということです」

「確かに、そうだなぁ・・」