コーチング事例110 自分の人生 これでいいのか | Blog版日本プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー協会(JIPCC)

コーチング事例110 自分の人生 これでいいのか

コーチング事例110 自分の人生 これでいいのか

自分の生きる場所を見つけるのに苦労している女性、傾聴が大事なことがわかります

大手派遣会社のコーディネーターとなって3年。これまでは、仕事一筋の会社人間でしたが、昨年秋、最愛の母をなくして以来、仕事に熱中することができず、とうとう、会社も退職することにしたそうです。

「お母さんをなくされたショックから立ち直っていないことではないんですね?」

「はい、そういうことではなくて、これまで、わたしは仕事一筋だったから、母が最後を迎えて、どうしていいか、わからないことを、誰にも相談もできなくて・・・それに比べて、母の病室には、いつもお友達がいて、おかしいんだけど、終末期の患者とは思えないと、看護師さんから褒められるほど、朗らかに毎日を過ごしていて。わたし、これでいいのかなぁ~って考えたら、何か、仕事に打ち込めなくなっちゃって」

「うん・・複雑な気持ちはよく伝わってきます。ただ、だからと言って、仕事を辞めてしまうという決断は、なんとなく結びつかなかったようにも思えます」

「上司にも、そう言われました。別に辞めるこたぁないだろうって」

「決断の一番のポイントはどこにあったんですか?」

「派遣会社のスタッフさんと、向き合えなくなっちゃったことだと思うんです」

「向き合えなくなった?」

「はい、スタッフさんも真剣に生きているんです。その相談に乗るはずのわたしが揺れているんじゃ、スタッフさんに申し訳なくて・・ですね、それが一番の問題だったと思います」

「そうかぁ・・・スタッフさんに申し訳がなくなっちゃったのね?」

「はい、わたし、今までは、一生懸命仕事一筋の自分を見せてきたから、自分が迷う姿とか、悩む姿を見せまいと頑張ったんです。だけど、スタッフからの電話の最中でさえ、ふっと、自分もこのままでいいのかなぁ?って考えてしまうようになって、返事が頓珍漢だったりすると、スタッフから『体の具合が悪いなら、あす、また電話します』と言って、労わられてしまったりすると、心が締め付けられるくらい辛くなって。結局、わたし、自分の生きる場所さえ見つけられないわけだから、人の相談に載っているなんて、おこがましいと思ったんです」

「そうなんだ・・自分の仕事に誇りを持っていたからこそ、その厳しさが行動の基準になるんだろうか?」

「わたし、人から良く思われたい人なんです。っていうか、人の役に立ちたくて、それを認めて欲しいと思う人なんです。だから、人のために人のためにって、いつも優先してしまって・・・母が亡くなる前もそうだった。看病しながらも、スタッフさんのことが気にかかって、でも、母にはそれが言えなくて。どうしようもなく気持ちが乾いていっちゃった気がするんです」

「なるほど、人に対して奉仕したいと思う気持ちが高じて、自分や自分の家族をないがしろにしてしまったのかしら?」

「そうですね。それが、今度は自分の気分をふさいでしまうという、なんか、悪い循環ですよね?」

「うん・・・自分のためにも、相手のためにも、はっきり言ったほうがいいと思うんだけど、そうするには、よく思われたい自分が邪魔になるって感じかしら?」

「そうそう、まさしくそんな感じ。でも、それを相談する人もなくて、どうしたものかと考えてしまったんです」

「ん・・・これから、どんな生活を望んでいるの?」

「今っぽく言えば、ワークライフバランスの取れた生活。仕事も頑張るけど、趣味を見つけたり、友達と食事やお茶を楽しんだりってそういう生活。母のように、最期を迎えるための準備かしら」

「そのために、お仕事も変るわけですが、どんな仕事を見つけますか?」

「これまでは、人を支援する仕事だったんですが、これからもそれに変る仕事はないと思います。ただ、きちんと仕事の時間が守られるような業界にしようと思います。というか、自分で、時間の調整ができるようにしたいと思います。人材派遣の仕事は楽しかったけれど、負担も大きいから、しばらくは離れようと思います」

「そうですね。それでも、人と接する仕事がいいわけでしょう?」

「そうですね。これから、働き方なんかも含めてゆっくり考えようと思います。生きるってすばらしいと思うけど、仕事だけじゃダメなんだということを、最後に母が体で教えてくれたように思うから、大事にしたいです」

「そうですね。わたしが今後、支援をすることが何かありますか?」

「はい、もちろんです。何の仕事にしようかとか、わたしの考えをまとめる手伝いをしてください。そうじゃないと、また、とんでもなく仕事にのめり込んでしまうかもしれないですから」

「そうですね。すぐに考え方を変えても、元に戻るということもありますからね」

「自分の生き方がわからないときって、すっごく不安になりますね」

「そうですね。たしかに、不安になりますね」

「今なら、まだ、間に合いますか?わたしの人生、自分のために生きられるようになりますか?」

「大丈夫。何時からでも、人は望んだように変化することはできます。お手伝いさせてくださいね」

人の支援をすることに、自分の喜びを感じる人は、実は、自分も認められたいという強い欲求を持つことがあります。

支えている人のために生きるわけではなく、支えている自分のために、自分で生きることが大切なのです。

それに気づかせてくれたお母さんの最後を乗り越えて、力強く生きる方向を見つけてくれたら嬉しいと、

長い付き合いになることを予感しながら、セッションを終えました。