不倫され苦痛を受ける人たちの合理化/正当化が進む過程 | 日本心理教育院 www.jip.ac

 

配偶者の不倫で苦しんでいるときは何をしても思考は常に不安定な状態です。そのために「こうしたほうがいいのか?」「ああしたほうがいいのか?」という考えが芋づる式につながり、関連情報を必死で探します。これは現在不安定な思考を何とか明確にさせるための努力です。

そうするうちに、何らかの情報に接して「これか!」と言いながらその情報に確信を持ちます。



しかし、今は外傷トラウマが発生して悪化していく過程なので、自分の確信は外傷トラウマによって悪化された心が下す確信です。つまり外傷トラウマの見方になってくれる情報(外傷トラウマを悪化させる情報)に接したとき、それが正しいと考え確信を持つということです。外傷トラウマを悪化させない情報に対してはむしろ抵抗を感じたり、信頼が持てないのです。

まだ外傷トラウマ作用よりは健康な心の作用のほうが大きいトラウマの初期には色々な情報に接したとき、「そうかもしれない」と思うくらいですが、外傷トラウマがますます悪化されるにつれそれは確固たる確信に変わり、自分の状況と比較をしながら疑いも大きくなっていきます。そのような情報を自分の状況に適用しながら恣意的解釈が繰り返されるにつれ外傷トラウマが悪化していくのです。

時間とともに自分の外傷トラウマ基盤の考えは確固たるものになりますが、これは莫大な傷をベースに傷に対する補償を受けられるものだけが正しいと判断したり、傷を悪化させるものだけが正しいと判断する状態を意味します。そのため、不倫とは無関係な日常までもを強力な傷を基盤にした考えをもって生きていくようになり、結局はそのような考えによって自分の人生が破壊されていきます。また、強力な傷に対する補償を受けるもの、傷に蓋をするもの、傷を悪化させるものに対して心理的安定感を感じるようになり、ひいては自分の傷に対する補償を受けるため、傷に蓋をするため、傷を悪化させるために他人に被害を与えながら本人は人生に自信をもって楽しいと感じるようになります。

それで外傷トラウマが悪化する過程でカウンセリングを受けると、本人の考えを合理化させてくれる方向にカウンセラーの返事を誘導する現象が起ります。例えば「それよりは○○なのではないでしょうか。」「でも○○なんですけど」と言いながら、いくら不倫の本質について伝えようとしても結局は自分が聞きたい答えが返ってこないと聞く耳をもたないのです。カウンセラーが自分の話に共感を示してくれたり、慰めてくれると、本人は楽にはなりますが、しかし外傷トラウマの治療機会は遠退いていきます。


すると、結局は「人生大したことない、楽しむのが一番」という考えに強い確信を持って自分の考えを合理化しながら、またそれによる自分の言動を正当化するようになります。



重度心理障害である関係依存は「人間関係を破壊する心理疾病」です。この関係依存の破壊力より数十倍から数百倍の破壊力を持つのが外傷トラウマです。外傷トラウマは、自分の人生全体を揺るがす強力な傷だからです。この傷を自分で合理化して正当化する場合、その破壊力は強力になり自分、配偶者、子供たち、家族、みんなの人生を崩していきます。

そして外傷トラウマが悪化され完全な合理化が進むと、もう治療の機会は喪失されてしまいます。苦痛が感じられなくなったからです。治療は自分が苦痛を感じるときにのみ可能です。自分が現在苦痛を感じているとき、こころ治療を始めて外傷トラウマを治療した後、幸福な人生に転換しなければなりません。

こころ治療をとおして幸福能力が身につくと、不倫をした配偶者の存在は、もはや皆さんの人生に大きな影響を与えることはありません。不倫をした配偶者とは関係なく、自分自身で幸せに生きていく力が備わっているからです。皆さんの外傷トラウマが完治された時に、もし配偶者が自分を治療する気がなく不倫を続けているなら、皆さんは淡々と夫婦関係を整理することができます。

ただ皆さんが外傷トラウマが治療され幸せになると、関係依存の配偶者はある日ふと自分の問題について認識する時がくる可能性が高くなります。関係依存による歪んだ幸福ではなく、真の幸福を皆さんから垣間見ることができるからです。すると、配偶者自ら夫婦関係の危機、自分の人生の危機を察して自分から治療をはじめようとします。これが治療の機会を与えることの意味です。

したがって、皆さんは数多くの不倫に関する情報に対して正しいと考えたり、自分が正しいと思った方向に物事を推し進めてはなりません。そのような考えに確信を持たせる外傷トラウマが治療されると、自分の考えがどれほど危ないものだったか自ら悟る日がきます。