人生100年時代クリニック ブログ
  • 22Aug
    • 高尿酸血症の第3回目です。

      高尿酸血症の第3回目です。高尿酸血症は、心血管病の独立した危険因子であることは、欧米諸国では、以前から報告されてきました。わが国においても、同様な報告が相次ぎ特に、急性冠症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症などの重症虚血性心疾患)患者様においては、報告が多いようです。下図は、急性冠症候群患者において、急性期にステント植え込み術を施行した患者様において、血清尿酸値と予後(心血管病の発症)との関係を、男女別に検討した報告です。前回も報告したように、血清尿酸値は、男女でかなり異なります。この機序に関しては、未だ不明な点がありますが、女性ホルモンが、腎臓からの尿酸排泄に関与している可能性が示唆されています。どうも、尿酸の排泄促進作用があるようです。図からも、明らかなように、男性では、血清尿酸値が6.0 mg/dL、女性では、7.0 mg/dL以上になると、心血管病のイベント発症率が高率になることがわかります。高尿酸血症の定義は、前述したように、7.0 mg/dLを越えると診断されるわけですから、それから言うと、実際は随分低い値から、イベントが発症することになり、代謝という意味での、高尿酸血症の定義と、急性冠症候群患者様のように重症な虚血性心疾患患者様における、血清尿酸値の管理目標値が著しく異なることがわかります。また、下図は、健常者における、血清尿酸値と心血管病死亡リスクとの関係を示したデーターです。男性においては、血清尿酸値が高値であると、リスクが高まりますが、一方、逆に低値である例もリスクが高まることが示唆されました。これは、前述しましたが、尿酸の持つ、抗酸化作用を反映している可能性があります。すなわち、低値であることも、高値であることと同様に、危険因子となることが示唆されます。一方、女性は、血清尿酸値とリスクは、極めて、線形に上昇するようです。その男女別の機序は不明です。ただし、女性も、閉経後は、急速に血清尿酸値が高値になる例が多く、注意が必要です。https://jinsei-100nenjidai.com/人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕

  • 21Aug
    • 高尿酸血症の第2回目です。

      高尿酸血症の第2回目です。高尿酸血症は、日本人男性の約30%にみられる頻度の高い疾患です。一方、女性の頻度は少なく、せいぜい、数%と推定されています。尿酸とは、何でしょうか?尿酸は、ヒトにおけるプリン代謝の最終産物です。プリン構造を有する化合物にはさまざまな物質が含まれます。遺伝子の本体であるDNAや、細胞内代謝に不可欠なRNAは、プリン(アデニン、グアニン)または、ピリミジン(ウラシル、チミン、シトシン)を有しています。アデニンは、エネルギー代謝で重要な働きを有するATP、補酵素のNADH、細胞内での、いわゆるセカンドメッセンジャーであるcAMPなどにも含まれているのです。このように、プリン構造を有する化合物を総称してプリン体と呼んでいます。アルコール飲料や、食品には食材に由来する細胞内の核酸(DNAやRNA)などが含まれています。したがって、これらの摂取することは、プリン体を摂取するという事になります。食事やアルコール飲料由来のプリン体は、消化管内で酵素により分解され、ヌクレオシドや塩基となり吸収され、プリン代謝経路を介して体内で利用され、一部は尿酸へと代謝されます。尿酸は、産生と排泄(尿中に2/3、便中に1/3)のバランスによって維持されています。産生を増加させる因子として、特殊な遺伝疾患や、プリン体の多い食品(レバー、白子、一部の魚、干物、一部の健康食品など)、アルコール飲料(発砲酒はビールに比べて少ない傾向、焼酎、ウィスキー、ワインや日本酒は少ない、地ビールは多いようです)の過剰摂取、過度な運動、強いストレス、肥満(メタボリックシンドローム)なども関与しています。多くの、疫学調査によると、血清尿酸値の中央値は、男性は6.0 mg/dL前後、女性は4.5 mg/dL前後との報告が多いようです。本来、尿酸は、強力な抗酸化作用を有するため、生体にとっては、極めて重要な物質と言えます。最近の研究では、尿酸値の低い例では、アルツハイマー病の発症率が高いとの報告もあり、生体にとっては、重要な物質と言えます。しかし、尿酸には、二面性が有り、尿酸が高値になると、一転して、炎症作用を有し、動脈硬化症を促進するなど、悪い一面が有ることが最近注目されています。この点に関しては、次回また、触れてみましょう。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

    • 今回は、高尿酸血症について説明します。

      今回は、高尿酸血症について説明します。高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0 mg/dLを超える場合と定義されています。高尿酸血症は、尿酸塩沈着症と呼ばれる、痛風関節炎、腎障害などの病因となります。性、年齢は考慮されません。ここで、痛風関節炎とは、関節内に析出した尿酸塩結晶が原因として起きる関節炎です。急性痛風関節炎は、別名痛風発作と呼ばれています。一般的には、足の中指、足の関節などに好発します。治療としては、痛風発作時には、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が有効で、炎症が沈静化した場合は、尿酸降下薬を使用する。治療の原則は、生活習慣の改善が大切であり、飲酒制限、肥満の解消、高プリン食(あん肝、レバー、モツ、白子、牛肉ヒレ、ロース、えび、かにみそなど、主に動物性食品に多く含まれています)を控える、有酸素運動の励行が基本原則となります。以下に高尿酸血症の治療指針を述べます。合併症とは、腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどです。以下の図から参考になります。基本的には、痛風関節炎が有る場合や、痛風結節を認める場合は、血清尿酸値が8.0 mg/dL以上で、合併症を有する場合は、血清尿酸値が8.0 mg/dL以上で、合併症が無くても、血清尿酸値が9.0 mg/dL以上であれば、薬物療法の適応となると理解していただいて結構です。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 09Aug
    • 糖尿病と生命予後(寿命)との関係について

      今回は、糖尿病と生命予後(寿命)との関係について説明します。日本人の平均寿命は世界のトップクラスです。一方、糖尿病患者様の死亡原因に関しては、十分なデーターが無いのが現状でした。その後、日本糖尿病学会の学術調査研究が進み、10年単位での、結果が公表されるようになりました。1991~2000年における、わが国の平均寿命は、男性が77.6歳、女性は84.6歳でした。一方、糖尿病患者様の平均死亡時年齢は、男性が、68.0歳、女性が71.6歳でした。当然、平均寿命と、平均死亡年齢を単純に比較することは困難ですが、男性では、約10歳、女性では、約13歳短いことが判明しています。その後、2001〜2010年の10年間の日本人の糖尿病患者の平均死亡年齢は、男性が71.4歳、女性が75.1歳で、前の10年間に比べ、男性で3.4歳、女性で3.5歳延びたことが、日本糖尿病学会の「糖尿病の死因に関する調査委員会」による調査で判明しています。下図に、わが国の糖尿病患者様の平均死亡年齢(男女別)と調査時期との関係を示しています。この研究は、愛知医科大学糖尿病内科の中村二郎教授らが、医学誌「Journal of Diabetes Investigation」に発表しています。  対象患者は、45,708例(男;29,801例、女;15,907例)です。糖尿病患者様の死亡原因は、第1位が、悪性腫瘍(癌)の38.3%、次が、感染症で17.0%、第3位は、血管障害(虚血性心疾患、脳血管障害、慢性腎不全)の14.9%でした。悪性腫瘍において、死亡原因として最も多かったのは、肺癌、肝臓癌、膵臓癌でした。感染症の死亡原因疾患は、肺炎が多数を占めました。血管障害では、脳血管障害が6.6%と最も多く、次いで、虚血性心疾患(心筋梗塞)が4.8%、腎不全は、3.5%でした。上記の結果に関しては、一般の日本人における傾向と類似しています。すなわち、脳血管障害や虚血性心疾患の死亡率の減少が明らかです。しかしながら、その発症率は、一般の日本人に比べて高率であることは、変化がありません。今後は、糖尿病の管理を厳重に行っていく必要がありますが、特に、大血管合併症を更に減少させる必要があると思われます。日本糖尿病学会は、血糖管理以外にも、BMI (Body mass index)は22、血圧は130/80 mmHg(家庭血圧は125/85 mmHg)未満に管理し、脂質管理に関しては、DLコレステロールは、120 mg/dL未満(冠動脈疾患を合併時には100 mg/dL未満)最近では、70 mg/dL未満を推奨しています。また、中性脂肪、HDLコレステロールは、それぞれ、150 mg/dL未満、40 mg/dL以上を推奨しています。また、前述したように、糖尿病患者様は、悪性腫瘍の合併率が高値です。かつ、日本人全体の悪性腫瘍の死亡率が増加しており、今後は、血糖管理以外にも、積極的な健診(特定健診、高齢者健診等)の励行、また、人間ドックなどによる、悪性腫瘍に関連した精査も必要と思われます。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 08Aug
    • 今回は、糖尿病と悪性腫瘍(癌)との関係です。

      今回は、糖尿病と悪性腫瘍(癌)との関係です。従来から、糖尿病と癌罹患リスクに関しては、報告が多かった。そこで、わが国においても、日本糖尿病学会と日本癌学会の共同の委員会が設立された。米国においては、米国糖尿病学会(ADA; American Diabetes Association)と米国癌学会(ACS; American Cancer Society)が以下の、9項目の推奨事項をまとめて発表しています。下図は、日本も含むメタ解析と日本において集積された結果を示します。1.糖尿病(主に2型糖尿病)は、上図のごとく、肝臓癌、膵臓癌、子宮内膜癌、  大腸癌、乳癌、膀胱癌などのリスクの増加と関連しているが、前立腺癌とは、  逆にリスクの減少と関連している。2.健康的な食事、運動、体重管理は、2型糖尿病および、いくつかの癌の罹患リスクを  減少し、予後(生命予後)を改善する可能性があり、推奨すべきである。3.医療従事者は、糖尿病患者様に対して、性別・年齢に応じて適切な癌の  スクリーニング検査を推奨すべきである。4.糖尿病治療薬と癌罹患リスクに関しての、一部報告があるが、現時点では、  糖尿病治療薬を選択する際に、癌の発症リスクを主要な検討項目にするべきではない。 日本においては、何らかの癌に罹患するリスクは、男性では1.27倍、女性では1.21倍であった。図には示していませんが、男性では、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌のリスクと関連し、女性では、胃癌、肝臓癌と関連していた。統計学的に、有意では無かったが、子宮内膜癌、卵巣癌との関連が示唆されました。このような糖尿病と癌発症リスクの機序は未だ不明な点が多いですが、いくつかの機序が推定されています。1.インスリン抵抗性に伴う、高インスリン血症は、発癌や、細胞増殖に関与する  シグナル伝達系を活性化することが報告されています。   また、高インスリン血症は、インスリン様増殖因子蛋白(癌発症に関与する  細胞増殖因子)の産生を抑制する作用が報告されていますが、  その結果、フィードバック機構が作用し、結果的にインスリン様増殖因子活性が  亢進することも報告されています。2.高血糖状態は、酸化ストレスの亢進状態を惹起し、DNA、ミトコンドリアに障害を  与え、DNAの修飾・変異に影響を及ぼし、癌化に関与する経路も示唆されています。今後の、更なる研究が待たれます。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 07Aug
    • 糖尿病とアルツハイマー病との関係(第2回目)

      糖尿病とアルツハイマー病との関係の2回目です。前回は、ミクログリアについて、説明しました。最近の研究では、ミクログリアは、マクロファージと同じように、炎症を惹起する、神経障害性のM1型と、炎症を鎮静化するM2型(神経保護性)が存在し、ADのような、神経変性疾患では、M1型が優位であり、ミクログリアの持つ、神経細胞等の保護作用が失われている(抑制されている)可能性が示唆されています。この機序に関しては、未だ仮設の域を脱していません。この理由としては、動物を使用した疾患モデルの作成が非常に難しい事や、ヒトとの互換性にも問題があるかもしれないという点で、研究者の頭の痛い部分です。糖尿病における高中性脂肪血症、インスリン抵抗性は、遊離脂肪酸(FFA)の増加を招きます。FFAは、自然免疫系に関与する一連の経路を刺激して、全身の炎症反応を惹起し、前述の炎症性サイトカインの産生が亢進状態となるようです。また、持続する高血糖状態は、終末糖化産物(advanced glycation end-products; AGE)や、その受容体である(RAGE; receptor for AGE)の関与が示唆されています。コントロール不良な、糖尿病患者様においては、AGEやRAGEが高値な症例が多く認められます。最近の研究では、RAGEは、Aβ蛋白の受容体である可能性が示唆されており、RAGEはAβ蛋白の産生を亢進させることが報告されています。このような、インスリン抵抗性に関連した、FFA、AGE、RAGEの高値は、血液脳関門(BBB)を破綻させる可能性が示唆されています。この結果、脳内の、ミクログリアは刺激を受けて、通常は、おとなしい、静止型ミクログリアは、豹変して、炎症性サイトカインを大量に産生して、神経細胞に障害を与えるようです。一方、インスリン抵抗性になると、インスリン分泌が過剰状態となり、インスリン自体の持つ作用である、Aβ蛋白の分解を抑制する作用が顕著となり、結果的に、Aβ蛋白が蓄積された状態となるようです。ここで、AGEとは何でしょうか?AGEとは、蛋白が糖と反応して、シッフ塩基やアマドリ転位生成物などの前期反応生成物を経て、最終的に生成される蛍光、褐色、分子架橋形成を特徴とする物質です。食品としては、肉やバターなどに多く含まれています。調理方法では、焼く、揚げる、ローストするなどで、増加することが知られています。一般に、加齢とともに増加しますが、糖尿病患者様、特に管理不良状態の患者様では、高値を示します。AGEは、マクロファージを活性化して、炎症性サイトカインや、酸化ストレス物質の産生を亢進させ、様々な細胞に障害を与えます。糖尿病患者様においては、糖尿病性網膜症の原因物質とも考えらえており、動脈硬化症の発症・進展、老化、AD発症に深く関与している可能性が強く示唆されています。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

    • 今回は、糖尿病とアルツハイマー病について説明します。

      今回は、糖尿病とアルツハイマー病について説明します。日本における、2012年時点での65歳以上高齢者における認知症有病率は15%(462万人)と推計されており、2025年には、675万人、2040年には、802万人、2060年には、24.5%(850万人)に達すると推計されています。このうち、アルツハイマー型認知症(AD)が67.6%、血管性認知症(VD)が19.5%と報告されています。以前から、糖尿病とADとの関係に関する報告は多く、報告者によって差はありますが、1.3倍から2.3倍と言われています。VDに関しては、糖尿病に伴う血管の動脈硬化症が原因と推定されていますが、ADと糖尿病の関連については、未だ不明な点が多いようです。VDは、糖尿病患者様には、しばしば認められ、明らかな、脳梗塞の症状が出なくても、頭部CTやMRI検査を行うと、いわゆる、隠れ脳梗塞と呼ばれる、多発性脳梗塞の所見が見られます。この結果、ゆっくりと、進行性の認知症が見られる例が多いようです。最近の研究では、糖尿病に伴う、インスリン抵抗性が注目されています。通常、我々の脳は、血液脳関門(Blood brain barrier;BBB)によって、物質の脳組織への移行は厳格に管理されています。したがって、脳におけるエネルギーは、主としてブドウ糖に依存しています。(ケトン体も移行可能です)AD患者の脳内には、アミロイドβ(Aβ)蛋白質の蓄積が特徴的です。最近、Aβ蛋白質の蓄積像の周辺に、ミクログリアと呼ばれる、細胞の集積が多数観察され、その意義が検討されています。ミクログリアは、マクロファージと同様に、骨髄に由来する細胞と考えらえてきましたが、最近の研究では、胎生期7日齢には卵黄嚢にマクロファージ様の前駆細胞が発生し、胎生9日までに神経系に移動してミクログリアになることが判明しました。上図は、ミクログリアの顕微鏡像を示します。正常時のミクログリアは、小型の細胞体の形態を有しており、静止型ミクログリア呼ばれています。一方、ミクログリアは、神経細胞の損傷や感染などによる脳内の病的変化に速やかに反応し、細胞は大型になり、マクロファージと同様に、病原体や、損傷された神経細胞、組織を貪食して、いわゆる、お掃除役を果たしていることが判明しています。その他に、前述した、炎症性サイトカインである、腫瘍壊死因子(TNF)や、MCP-1を産生、放出することも分かっています。また、実験レベルでは、培養ミクログリアは、Aβ蛋白を認識して、貪食することも確認されています。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 05Aug
    • メタボリックシンドロームと血栓症(第2回目)

      今回は、メタボリックシンドロームと血栓症の第2回目です。前回、血栓症の生成には、組織因子(TF)が重要な役割を担っている事、TFの主たる産生細胞が、末梢血中の単球と組織中のマクロファージであることを説明しました。我々は、メタボリックシンドロームの患者様を対象とした研究を、当時の東京薬科大学との共同で行いました。コントロールとして、健診にて来院された患者様から、許可を頂き、組織因子活性を比較検討しました。下図のAは、その結果です。メタボリックシンドロームの患者様の組織因子活性は、同年齢で性も一致させた、健常者(コントロール、血圧、血糖、脂質等が正常)のそれに比べて、有意に高値であることが判明しました。つまり、メタボリックシンドロームの患者様は、血液が凝固し易い、血栓が出来やすい事がわかったのです。我々は、さらにHOMA-IR(homeostasis model assessment insulin resistance)に関しても検討しました。これは、前述しましたが、インスリン抵抗性の重要な指標です。HOMA-IRが2.5以上は、インスリン抵抗性が強く示唆されます。図の右Bにお示しいたしたように、単球由来の組織因子活性は、HOMA-IRと有意な正の相関関係があることがわかりました。つまり、インスリン抵抗性が重症である患者様ほど血栓が来やすいということになります。このような事実は、メタボリックシンドロームの患者様が心血管病のように、血栓が強く関与している(心筋梗塞、脳梗塞ともに、血栓がつまる疾患です)疾患になりやすい事と、深く関係している可能性が示唆されました。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 04Aug
    • メタボリックシンドロームと血栓症(第1回目)

      今回は、メタボリックシンドロームと血栓症(第1回目)について説明します。マクロファージは、組織マクロファージと単球由来の炎症性マクロファージに分類されます。前回、マクロファージの機能の中で、血栓症(血液のかたまりが出来ること)の中心的な役割を果たす、組織因子(TF: tissue factor)を産生すると説明しました。実は、TFはマクロファージだけではなく、末梢血中の単球も産生しているのです。我々の生きている現在は、医療レベルが向上して、感染や外傷(出血)には、速やかに対応可能です。それは、あくまでも最近の話であり、我々の祖先(100年以上前?)は、外傷(出血)を負うと、致命的であった可能性があります。この時、大切な事は、血液がかたまる(凝固する、または止血される)ことであった考えられています。つまり、古来、ヒトにとっては、血液が凝固することで、生き残れた(生存出来た)とも換言できます。血液は凝固することが本来の機能であるとも言えるのです。下図は、複雑な、凝固系の経路を示します。凝固系は、多くの凝固因子から成る、内因系と、組織因子(TF)から成る外因系があります。最近の研究では、血栓形成(凝固)には、外因系のTFが中心的な役割を果たしていることが判明しています。カリフォルニア大学では、TFの研究が盛んです。詳細は、省きますが、一分子のTFから、10の9乗個のフィブリン(血栓)が生成されることが報告されており、しかもこの反応は、数秒単位で終結するようです。つまり、TFは血栓形成の中心的な役割を果たしていることが、お分かりいただけたと思います。TFは、単球、マクロファージが主たる産生細胞ですが、最近の研究では、血管内皮細胞、平滑筋細胞からも一部産生され、動脈硬化症のプラーク内、特に、不安定狭心症や心筋梗塞患者様においては、高率に認められています。我々は、単球由来の、組織因子活性値をある方法(詳細は省きます)で、測定し、男女ともに、年齢とともに、上昇することを報告しました。興味深いことに、男性は、年齢とともに、徐々に上昇していきますが、女性は、閉経後の、50歳以降に急激に上昇していく事が判明しました。閉経後の、患者様に、女性ホルモンのホルモン補充療法を行うと、TFの活性値が著明に低下することも分かり、女性ホルモンの関与が強く示唆されました。どうも、高齢者は、特に、閉経後の女性の心血管病の増加には、TFが一部関与している可能性が示唆されました。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

    • マクロファージの続編になります。

      マクロファージの続編になります。マクロファージは、組織に存在する組織マクロファージと単球由来の炎症性マクロファージに分類されます。組織マクロファージは、脳であれば、ミクログリア細胞と呼ばれ、アルツハイマー型認知症や、筋委縮性側索硬化症の発症に重要な役割を果たしていることが判明しています。病原体や、死細胞、変性したLDLコレステロールなどを貪食し、マクロファージ内に存在するライソゾームで消化分解し、サイトカインを分泌し、周囲の細胞を刺激しています。また、血栓症に大きな役割を果たしている組織因子やプラスミノゲン活性化阻害因子(PAI)を産生し、止血や血栓形成に深く関与しています。 サイトカインとは、何らかの刺激を受けた細胞(マクロファージなど)から細胞外に放出されるタンパク質で、近傍の細胞表面に存在する受容体に結合し、様々な情報(シグナル)を伝達します。サイトカインは、細胞同士がお互いにシグナルをやりとりする、一連のたんぱく質です。サイトカインには、Th1タイプと、Th2タイプに分類されます。Th1サイトカインには、腫瘍壊死因子(TNF; tumor necrosis factor)、インターロイキン6(IL-6)、IL-12、IL-1、インターフェロン(IFN)などがあり、炎症性サイトカインとも呼ばれています。動脈硬化症、心不全などに関与しています。一方、Th2サイトカインには、IL-4、IL-10、IL-13などがあり、抗炎症作用、アレルギーに関与します。また、マクロファージは、IFN-γ などのTh1サイトカインによって活性化されたものをM1マクロファージ、一方、IL-4,IL-13などTh2サイトカインによって活性化されたM2マクロファージに分類されます。M2マクロファージは、更に、IL-4, IL-13によって誘導されるM2aマクロファージ、膠原病に関与する免疫複合体などによって誘導されるM2bマクロファージ、IL-10などで誘導されるM2cマクロファージに分類されます。M1マクロファージは、TNFα、IL-6、IL-12などの炎症性サイトカイン産生や、酸化ストレスに関与する活性酸素種の産生に関与し、抗菌、抗腫瘍作用を発揮します。一方、M2マクロファージは、IL-10などの抗炎症性サイトカインを発現し、炎症の沈静化や炎症後の組織の修復などに関与します。次回は、もう少し、疾患とマクロファージとの関連に関して説明します。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 03Aug
    • メタボリックシンドロームの病態に関わるマクロファージとは何でしょうか?

      メタボリックシンドロームの病態に関わるマクロファージとは何でしょうか?マクロファージの起源に関しては、未だ不明な点が多いのが現状です。従来は、血液中の白血球の一種である単球から分化するという説明が一般的でした。しかし、実際は複雑のようです。最近の研究では、胎生期の卵黄嚢に由来し、その後、胎生期に、大動脈領域(Aorta gonad mesonephros)に移動し、胎生期の肝臓へと移行して行くことが分かってきました。さらに、他の血球成分と同様に、骨髄が、マクロファージの発生の場となるようです。胎生期の骨髄において、まずは、造血幹細胞と呼ばれる、様々な血球成分に分化可能な細胞が生成され、その後、マクロファージ前駆体細胞に分化し、単球前駆体と呼ばれる単球の言うならば、赤ちゃん細胞が作られるのです。この、単球前駆体は、血液中に循環することになり、単球へと分化するようです。下図は、動脈硬化症の発症についての図になります。我々の、血管には、内皮細胞と呼ばれる細胞が存在します。健常な血管内皮細胞からは、様々な物質が放出され(詳細は控えます)その結果、血管内では、血液は凝固(血液がかたまる事)しません。しかし、図のように、加齢(Aged)、変性した悪玉コレステロール(Ox LDL)、ある種の細菌(infection)、その他、酸化ストレス(後日説明します)などで、血管内皮細胞が障害されます。障害を受けた、血管内皮細胞上には、様々な化学物質が発現します。その中には、セレクチン(Selectin)、前述したケモカインのMCP-1、接着因子(ICAM、VCAM)などが有名です。血管内に存在する、単球は、動脈内では、血圧の影響で、当然ながら、末梢へと一方向に、流れていきます。ところが、血管内皮細胞を障害させた実験では、単球が、血管内皮細胞上を、コロコロと転がっている状態が観察され、不思議なことに、障害された血管内皮細胞の方向に、多くの単球が向かって行く光景が多数観察されました。(培養液内では、単球は特定の方向に移動することはありません)。さらに興味深いことは、血管内皮細胞上をコロコロと転がっていた単球は、ほとんど、再び離れて、流血中に戻り末梢へと流れて行ったのですが、単球の一部に、血管内皮細胞上に、ピッタリと、くっ付いて、離れない状態の単球も観察されたのです。この現象は、極め異例なことで、前述しましたが、細胞は、培養液中では、換言すると、血液中では、ある特定の方向に、走向することはありません。そこで、研究者は、いったい何が起こったのか、大変興味を持ちました。その結果、単球の、コロコロ転がる(Rolloing)には、セレクチンが関与し、障害された血管内皮細胞に単球が、走向したのは、MCP-1が、血管内皮細胞上に、くっ付いた(固着)には、接着因子が関与している事が判明したのです。さらに、興味あることは、障害された血管内皮細胞の隙間に単球が、形を変えて血管内皮下に、侵入していく光景が観察されました。下図は、電子顕微鏡所見です。単球は、自ら大きく変形して、血管内皮下に侵入していく姿が観察されます。血管内皮下に侵入した、単球は、マクロファージになって(分化)して行くわけです。マクロファージの機能は、後日説明しますが、基本的には、掃除屋です。細菌、ウィルス、死細胞等の処理です。 マクロファージは、細菌や、死んだ細胞の処理だけではなく、変性した悪玉コレステロール(酸化LDLコレステロールなど)を貪食(どんしょく、際限なくドンドン食べてしまう:Phagocytosis)して、処理する、いわば、お掃除担当細胞なのです。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 02Aug
    • メタボリックシンドロームに関してもう少し説明しましょう。

      メタボリックシンドロームに関してもう少し説明しましょう。メタボリックシンドロームの病態生理をまとめると以下の図のようになります。過栄養と運動不足は、脂肪蓄積、内臓脂肪型肥満を惹起します。この結果、脂肪組織においては、脂肪細胞の巨大化が起こり、悪玉サイトカインの過剰産生、善玉サイトカイン(アディポネクチン)の産生低下が認められるようになります。この結果、糖尿病にみられるようなインスリン抵抗性が惹起され、結果として、脂質異常症(高中性脂肪血症)、高血圧、耐糖能異常(糖尿病)状態となり、動脈硬化症の発症・進展が起こり、最終的には、心血管病が発症してしまうのです。我々のクリニックでは、下図のような、最新型の超音波断層装置(エコー)の機器を有し、心エコー検査や、頸動脈エコー検査等が可能です。血管の動脈硬化症を評価することは、中々困難です。理由は、血管はそもそも身体の深部に存在するからです。しかし、頸動脈は、首の比較的浅い部位に存在するため、容易に血管を描出出来るのです。下図は、左が、簡単な解剖学な説明で、右は、実際の検査方法です。総頸動脈から、外頸動脈と内頸動脈に分岐して、前者は、顔面や、額部(あご周辺)に血液を送り、後者は、頭蓋内に入り、頭の血管になるのです。頸動脈エコーで描出可能な部位は、図の円印に示した部位で、総頸動脈が、外頸、内頸動脈に分岐(別れた)あたりを見ることができます。図でお分かりのように、内頸動脈は、その後、5~10cm後には、頭蓋内に入り、脳の動脈になるため、頸動脈エコーの所見は、ある意味では、脳血管を反映しているとも言えます。頸動脈エコー検査は、もちろん、痛みを伴う検査ではありません。上図の左のように、左右の検査になりますが、15~20分程度で終了します。下図は、頸動脈の血管内腔の説明図です。左が実際のエコー所見で、右は、説明図です。血管は、そもそも3層に分類できます。(顕微鏡で見ないともちろんわかりませんが)、内膜、中膜、外膜です。このうち、外膜は、全体的に白っぽい画像で、鑑別しやすいのですが、内膜と中幕の差は、エコー検査上は、鑑別は困難であるため、この両者を合わせて、IMT(Intima-media thickness)と呼んで、頸動脈の動脈硬化症の指標としています。世界中の国で、IMTの測定が行われ、年齢とともに、増加することが判明しています。ただし、健常者では、人種を問わず、1.0 mm以上にはならないことがわかりました。ほんの、些細な差ではありますが、このわずかな差が重要で、心血管病と関連性が有ることが報告されています。下図は、具体的な例をお示しいたします。左は、健常者の所見で、血管壁もスムーズで、IMTも肥厚(厚くなっている)していません。一方、メタボリックシンドロームの患者様を右に示しますが血管がポジティブリモデリング(血管が外側に拡大して)し、かつ、プラーク(コレストロールの蓄積像)が認められます。このような、プラークは比較定容易に、破裂(やぶれて)して、プラークがとんで、脳梗塞の原因になってしまいます。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com

    • 今回は、メタボリックシンドロームの続編です

      今回は、メタボリックシンドロームの続編です。前回は、内臓肥満に伴い、脂肪細胞の巨大化が起こり、脂肪細胞の本来の機能である、エネルギーの蓄積が失われ、悪玉サイトカインの産生が増加し、善玉サイトカインのアディポネクチンの産生が減少して、動脈硬化症が進展し、心血管病の発症のリスクになることを説明しました。以前に、動脈硬化症の発症には、マクロファージが深く関与していることを説明しました。最近の研究では、メタボリックシンドロームの本態は、脂肪細胞の巨大化だけでは無く、どうもマクロファージが、深く関与していることが分かってきました。下図は、マウスの実験モデルですが、図の左に健常マウスの脂肪組織を示し、右にメタボリックシンドロームマウスの脂肪組織を比較しています。左図の健常マウスでは、脂肪細胞の大小不同が少なく、図内の矢印に示す、マクロファージの数が少ない事がわかります。一方、メタボリックシンドロームマウスでは、脂肪細胞の巨大化と、大小不同と共に、マクロファージの数が多い(脂肪組織内へのマクロファージの浸潤と呼びます)事が認められ、やはり、メタボリックシンドロームの本態は、マクロファージで有ることが分かってきました。それでは、どうようにして、マクロファージは、脂肪組織に入って(浸潤して)来るのでしょうか?これには、MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)という、サイトカイン別名、ケモカインとも呼びますが、関与していることが示唆されています。詳細は、割愛させていただきますが、MCP-1の存在が、脂肪組織内へのマクロファージの浸潤に大きな役割を果たしていることが強く示唆されています。下図は、その説明図になります。図の、左が、健常人の脂肪組織とお考え下さい。次第に、内臓脂肪が蓄積始め(中図)、その後、メタボリックシンドロームの病態になると、右図のように、巨大化した脂肪細胞と、マクロファージが沢山脂肪組織内に浸潤してきます。このような状態になると、浸潤したマクロファージから大量の悪玉サイトカインが産生され、脂肪細胞からも悪玉サイトカインも産生され、その結果、血管の動脈硬化症が発症・進展して、血栓(血液のかたまり)が出来やすくなってしまうのです。下図は、メタボリックシンドロームの患者様と、メタボリックシンドロームでは無い患者様とで、心血管病の発症リスクを検討したデーターを示します。図のごとく、1.8倍も、心血管病の発症頻度は多い事がお分かりいただけると思います。その結果、心血管病の発症が起きやすくなるというわけです。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 01Aug
    • 糖尿病に密接に関連したメタボリックシンドロームについて

      今回は、糖尿病に密接に関連したメタボリックシンドロームについて説明します。内蔵肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が重積(組み合わさった)状態になると、心血管病(虚血性心疾患や脳卒中など)の動脈硬化性疾患をまねきやすい病態です。下図は危険因子数と、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳卒中による死亡リスクの関係を示しています。危険因子が無い(ゼロ)ケースを1とすると、危険因子が多い程、危険性が増す事がわかります。日本人も肥満の人が増えてきています。このうち、肥満のうちでもおなかに脂肪がたまる内臓脂肪型肥満(内臓脂肪蓄積)が動脈硬化を進行させる原因のひとつであることがわかってきました。内臓脂肪蓄積があれば、糖尿病、高血圧、脂質異常症などが発症し、かつ、これらの疾患が重複(重積)すると、その数が多くなるほど、動脈硬化症が発症し、進展する危険が高まるという考え方です。以前から、いわゆる悪玉コレステロールである、LDLコレステロールが高値な患者様は、特に、LDLコレステロールが180 mg/dL以上であると、高率に、心血管病が発症することが判明しています。一方、内臓脂肪蓄積に加えて、空腹時血糖が高値である例(110 mg/dL以上)または、善玉コレステロールであるHDLコレステロールが低値(特に40 mg/dL未満)または、中性脂肪が高値(150 mg/dL以上)または、血圧が高値(130/85 mmHg以上)の患者様は、LDLコレステロールが高値の患者様と同様に、心血管病の発症頻度が高率であることが示され、かかる例に対して、メタボリックシンドロームとして、取り上げるようになりました。すなわち、メタボリックシンドロームは、LDLコレステロールとは、無関係な心血管病の危険性をはらんだ病態として、とらえていただければ良いと思います。診断基準は下図に示します。下図に示すように、脂肪細胞は、エネルギーを蓄える貯蔵庫、かつ供給源です。健常者(左)の脂肪細胞は、大きさが均一で、小型です。一方、内臓脂肪が進行すると、(右)のごとく、脂肪細胞が巨大化し、かつ大小不同が顕著になります。健常者の脂肪細胞は、様々なサイトカインを産生して、生体の恒常性を維持するために良い働きをしています。すなわち、下図のようなサイトカインも必要です。巨大化した、脂肪細胞は、それぞれのサイトカインの過剰分泌を来たし、また、アディポネクチンのごとく、善玉のサイトカインは逆に減少してしまい結果として、下図のように、動脈硬化症を発症、進展させ、血栓(血液のかたまり)が出来やすくなってしまうのです。その結果、心血管病の発症が起きやすくなるというわけです。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 31Jul
    • 糖尿病に関連した肝疾患である非アルコール性脂肪性肝疾患について

      今日は、糖尿病に関連した肝疾患である非アルコール性脂肪性肝疾患について説明します。肝臓は、全身のエネルギー代謝、生体の恒常性を維持するために最も重要な臓器です。最近、注目されている、糖尿病に関連した肝疾患に、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD; nonalcoholic fatty liver disease)があります。この疾患は、明らかなアルコール摂取歴(飲酒歴)が無いにもかかわらず、アルコール性肝障害による病理所見(一般に、肝生検により診断します)に類似している疾患です。糖尿病に認められる、高血糖、脂質異常症(高中性脂肪血症)、インスリン抵抗性の存在が、NAFLDの発症、悪化に深く関与していることが判明しています。そもそも、肝臓は、どのような働きをしているのでしょうか?肝臓は、糖代謝を管理している重要な臓器です。具体的には、糖を産生し、吸収しているのです。肝臓における糖産生には、肝グリコーゲンの分解と糖新生によって行われています。ここで、糖新生とは、ピルビン酸、乳酸(骨格筋から供給されます)や、一部のアミノ酸、脂肪細胞からの中性脂肪の分解によってもたらされたグリセロールを基にしてグルコースが合成されることを言います。一方、インスリンは、肝からの糖新生や、グリコーゲンの分解を抑えて、肝臓におけるグリコーゲン合成を促進する役割を果たしています。したがって、2型糖尿病患者様において、食後高血糖状態になり、インスリンの作用が十分に発揮出来ない病態(一般に、むしろ高インスリン血症になります)である、インスリン抵抗性に陥ると、肝臓における、グリコーゲン合成が抑制され、さらに高血糖状態になってしまうのです。元来、肝臓はコレステロールの合成、取り込みに関与していますが、中性脂肪の合成や遊離脂肪酸(FFA: free fatty acid)の代謝にも深く関与しています。最近の研究では、肝臓における脂肪肝の原因には、肝臓に蓄積された脂肪組織からのFFAが主たる成因であることが判明しています。他に、肝臓における中性脂肪合成や、食事由来のFFAが関与していることがわかっています。FFAは、血管の動脈硬化症を促進し、脂肪細胞からの、悪玉サイトカイン(腫瘍壊死因子など)の産生を増加させ、善玉サイトカイン(アディポネクチン:抗動脈硬化作用、抗炎症作用を有します)の産生を減少させるなど、諸悪の根源です。かかる、FFAの肝臓内での蓄積、中性脂肪の蓄積が、脂肪肝を惹起してしまうのです。以前は、脂肪肝は、予後良好な疾患と考えられていましたが、NAFLDは、肝硬変や肝臓がんが発症してしまう例が、少なからず存在することが判明しており、糖尿病と関連した、重要な疾患であることが注目されているのです。肝生検(肝臓に、特殊な針を刺して、組織の一部を採取する方法)を行うと、肝細胞の風船様変性や、線維化、炎症性細胞の浸潤などが認められ、その程度(重症度)によっては、将来肝硬変に進展するリスクが評価されます。NAFLDの病態は、未だ十分に解明されたいのが現状ですが、糖尿病患者様に認められる、インスリン抵抗性と密接に関連していることが強く示唆されています。NAFLD治療の原則は、食事療法、運動療法などで生活習慣を改善することによって、背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を是正することです。まずは、糖尿病のコントロールが大切です。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 29Jul
    • HbA1cと心血管病との関係に関して(続報)

      今回は、HbA1cと心血管病との関係に関しての続報になります。糖尿病のコントロール指標には、HbA1c値が用いられ、合併症予防の目標値は、7.0%未満と明記されました。(日本糖尿病学会編、糖尿病治療ガイド)これは、私見ですが、日本においては、HbA1c値と心血管病との関係についての研究が少ないのが現状です。中西らは、J Diabetes Investig 2019; 10: 290 において、後ろ向きの検討ですが、2型糖尿病患者様のHbA1c値と、小血管合併症(糖尿病性網膜症、腎症など)、大血管合併症(心血管系疾患)との関係に関して報告しています。これは、後ろ向き観察研究で、約3,300名の2型糖尿患者様の検討です。若年者(Younger patients: 65未満)と、高齢者(Elderly patients: 65歳以上)に分類して検討もおこなっています。この研究で、判明した事は、若年者においては、HbA1c値と、心血管系疾患との間には、明確な関連があった点です。上図Aは、HbA1c値により、K1(HbA1c < 6%), K2 (6% ≤ HbA1c <7%)、K3 (7% ≤ HbA1c <8%) 、K4 (HbA1c ≥8%)の4群に分類して、大血管合併症(Macroangiopathy; 脳血管障害、心筋梗塞、狭心症)との関係を検討しています。図Aのごとく、K2群の心血管系疾患の発症危険率(HR;hazard risk)を1として検討すると、若年者群においては、K1群とK2群とでは差は無いが、K3、K4群の心血管系疾患発症率は有意に高率であることがわかります。また、図Cにおいて、E1(HbA1c < 7%), E2 (7% ≤ HbA1c <8%)、E3 (8% ≤ HbA1c <8.5%) 、E4 (HbA1c ≥8.5%)の4群に分類して、大血管合併症(Macroangiopathy)との関係を検討しています。E1群の心血管系疾患発症の危険率を1とすると、E2、E3群の心血管系疾患の危険率は、有意に高値であることも判明しました。以上から、本研究に於いて、若年者に限定されますが、HbA1c値は、7%未満にすることが、心血管系疾患の発症を抑制することが示唆されました。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

    • 今回は、HbA1cと心血管病との関係に関して説明します。

      今回は、HbA1cと心血管病との関係に関して説明します。前回は、HbA1cについて説明しました。糖尿病のコントロール指標には、HbA1c値が用いられ、合併症予防の目標値は、7.0%未満であることも、説明しました。ところで、このような、数字は、どこから来たのでしょうか?以前から、欧米諸国、日本、中国などで、HbA1c値と、心血管病との関係について、様々な研究がありました。ただし、検討方法がまちまち(前向き研究、後ろ向き研究、対象が、糖尿病患者、非糖尿病患者など)であったため、特に、日本では、HbA1c値と心血管病(脳血管障害、冠動脈疾患)との関係は、明確な指標が無いままでした。実際に、日本の上記両者の関係を明確に、説明できる研究、論文は少ないようです。ただし、参考になる研究が有りますので、一部ご紹介します。後藤ら(Medicine 2015; 94:1)は、研究開始時に心血管疾患(脳卒中や虚血性心疾患)に罹患していなかった29,059人(男性10,980人、女性18,079人)を対象として、HbA1cと心血管疾患発症との関係を前向きに検討した観察研究です。研究対象はHbA1cを用いて、5.0%未満、5.0~5.4%、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の6群に分類し、心血管疾患(虚血性心疾患、および脳卒中)の発症リスク(平均追跡期間9.4年間)との関連を分析しました。平均追跡期間9.4年間において、935件の心血管疾患が発生しています。年齢,性別、居住地域,BMI,収縮期血圧,HDLコレステロール, non-HDLコレステロール,喫煙歴,飲酒歴,身体活動を調整したうえで、統計解析を行っています。脳血管障害(脳梗塞+脳出血)においては、下図Aのごとく、HbA1cが高い群だけでなく、低い群においても心血管疾患リスクの上昇と関連しています。一方、虚血性心疾患(狭心症+心筋梗塞)に関しては、下図Bのごとく、HbA1cが高いほどリスクが高くなることが判明しました。この理由は、明らかではありませんが、HbA1cの低値の例では、低栄養状態であったり悪性腫瘍、重篤な肝疾患患者様が含まれている可能性が示唆されます。今後の検討が待たれます。図Aの脳血管障害の場合は、HbA1c値が5.0%から、6.5%程度の発症率が低く、それ以下や、それ以上の発症率が高くなることが示唆されました。一方、虚血性心疾患の例では、HbA1c値は、高値である程、発症頻度が高率になるようです。この理由は、明らかではありませんが、中国の報告(Wan EYF et al. J Am Coll Cardiol 2016; 67: 456)においても、ほほ同様な報告がなされています。Wanらの報告では、虚血性心疾患の発症率は、HbA1cが6.0%から7.0%値が低率で、高値になる程、高率になるようです。また、興味深いのは、心血管系疾患による死亡率は、HbA1cが6.0%から7.0%程度が、低率で、それ以下、または、それ以上で高率となるのです。糖尿病患者様に限定した研究(アメリカ、オーストラリアなどの大規模研究)では、心血管系疾患の発症は、上記の図Aと同様な結果が認められ、かかる理由は、HbA1cが、低値な例は、低血糖発作を起こしている例が高率である事が報告されています。低血糖状態になると、交感神経が賦活化(亢進状態)となり、血圧の上昇、心拍数の上昇などが惹起され、結果として、心血管系疾患の発症頻度は高率になると推定されています。次回は、糖尿病患者様に限定した、日本の研究をご紹介します。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 27Jul
    • ヘモグロビンエーワンシー(Hemoglobin A1c; HbA1c)について

      今回は、ヘモグロビンエーワンシー(Hemoglobin A1c; HbA1c)について説明します。血中ヘモグロビンは、単一の組成ではありません。最近の研究では、約90%が成人型ヘモグロビンA0(α鎖2本とβ鎖2本)、約7%がヘモグロビンA1(ヘモグロビンA0のβ鎖にグルコースやリン酸化糖が結合)、約2%がヘモグロビンA2(α鎖2本とδ鎖2本)、約0.5%がヘモグロビンF(α鎖2本とγ鎖2本からなる胎児型ヘモグロビン)です。ヘモグロビンA1は、さらに、A1a1、A1a、A1b、A1cなどに分画され、ヘモグロビンA1c分画が最も多く、総ヘモグロビンの約4%を占めます。基本的には、HbA1cは、赤血球に含まれるヘモグロビンA1c分画と血液中の糖が結びついた糖化タンパク質です。HbA1cは、過去1~2か月間の平均的な血糖値を反映すると考えられています。また、診察時の食事の影響を受けにくいため、日常生活や症状を把握でき、血糖管理が良好であるかの判断には欠かせない検査となっています。健康診断は、空腹時に行われることが、原則ですが、やむえず、食後で、お受けになる際には、HbA1cのデーターが有効です。糖尿病の治療目標とは、血管合併症(大血管、小血管)の発症、進展を防止して、日常生活の質の維持と健康寿命の確保です。ただし、治療目標は、年齢、糖尿病の罹患期間(糖尿病歴)、臓器障害の有無、低血糖の危険性、患者様を取り囲む周囲のサポート体制などを考慮して、当然、個別に行われるべきです。下図は、日本糖尿病学会が編集している、糖尿病治療ガイドラインを参考にした、血糖コントロール目標で、前述した、HbA1c値を基本的な指標として考慮した数値になります。ただし、高齢者では、認知症の障害の程度によって、別に目標値は設定されています。糖尿病の治療原則は、食事療法、運動療法です。このような、生活習慣の修正のみで管理可能である場合、薬物療法をおこなっている患者様においては、低血糖などの副作用が無い状態での、管理目標値となります。また、糖尿病合併症を予防する観点から、HbA1cの目標値は7%未満とし、空腹時血糖値は130 mg/dL未満、食後2時間血糖値は、180 mg/dL未満をおおよその目標値としましょう。高齢者糖尿病患者様の血糖管理目標値は、年齢、薬物療法、認知機能の障害の程度により細分化されています。したがって、詳細は、糖尿病専門医の指導下に、十分な管理が必要です。また、糖尿病治療ガイドラインを御参照ください。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 26Jul
    • 今日は、安静時狭心症について説明します。

      今日は、安静時狭心症について説明します。別名、異型狭心症または冠攣縮性狭心症と呼ばれる狭心症で、文字通り、安静時(早朝、夜間、静かにしている時など)に起きる狭心症です。一般に、冠動脈造影(冠動脈のカテーテル検査で、造影剤を用いて、冠動脈の状態を評価する方法です)を行っても、冠動脈が狭窄している場合が少ないのが特徴で、原因は、冠動脈の攣縮(冠動脈が収縮してしまう)ために、生じる狭心症で、決して、珍しい狭心症ではありません。特徴は、決った時間(早朝や、夜間など)に、安静時に起きることが多く、その際に、不整脈(心室頻拍、心室細動など)を伴い、胸痛後に、心臓突然死を来す例が見られる重篤な疾患です。診断には、アセチルコリンという薬剤を冠動脈造影中に冠動脈内に注入すると、冠動脈が収縮する現象(冠攣縮)が誘発されることで、診断できます。最近、AED (automated external defibrillator)と呼ばれる除細動器が、普及しています。正式には、自動体外式除細動器と呼ばれています。駅や公共施設、病院、診療所などで、御覧になったことが多いかと思います。このAEDの使用法に関して、一般のみなさんが、講習を受けて、使用法を熟知して頂き、心室細動のような致死的な不整脈から生還される患者様が多くなっています。以前に、AEDで救命出来た約20名の患者様に関して、その原因疾患を調べた結果約2/3の患者様が、冠攣縮性狭心症であることが判明しました。いわゆる、心臓突然死の原因疾患は、急性心筋梗塞だけでは無く、冠攣縮性狭心症も念頭におくべき心疾患と言えます。我々の検討では、冠攣縮性狭心症の患者様は、血糖値が高い例が多く、かつ、血中のインスリン値も高値である例が多い事が判明しました。つまり、インスリンが膵臓から過剰に分泌されている例が多い事が、研究の結果わかったのです。また、脂質異常症を有する患者様が多く、いわゆる善玉コレステローである、HDLコレステロールが低値である例が多いことも、判明しました。冠攣縮性狭心症の原因は不明な点が多く、病態は、十分に解明されていませんが、冠動脈の血管障害(血管内皮細胞の障害)の関与が示唆されています。健常な血管内皮細胞は、NO(一酸化窒素)を放出していて、血管の拡張作用が保持されています。しかし、動脈硬化症が出現、発症・進展すると、NOが十分に放出されなくなり、血管の拡張作用が減弱すると指摘されています。一般に、インスリンは、血管に関しては、拡張作用があることが報告されています。ただし、それは、健康な人の場合で、血糖が高値な患者様(耐糖能障害)や、糖尿病患者様では、インスリンは、逆に、血管を収縮させてしまう作用が有ることが、報告されています。どうも、糖尿病患者様は、動脈硬化症に伴う、労作性狭心症の発症頻度が高率であるだけでは無く、安静時狭心症の発症頻度も、高くなるようです。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/

  • 25Jul
    • 糖尿病の大血管合併症の冠動脈疾患について

      本日は、糖尿病の大血管合併症の冠動脈疾患について説明しましょう。冠動脈は、下図のように、心臓の表面に有り、心臓の筋肉(心筋)に血液、酸素、栄養を送る大切な血管です。冠動脈は、大きく分けると、右冠動脈、左冠動脈に分類されます。右冠動脈は、主として、心臓の下(下壁)に血液を送り、左冠動脈は、すぐに、左前下行枝(ひだり ぜん かこうし、心臓の前;前壁と呼びます)と、左回旋枝(ひだり かいせんし、心臓の横;側壁と呼びます)に分かれて、それぞれの心筋に血液、酸素などを供給します。したがって、便宜上、我々は、心臓には、3本の血管(冠動脈)が存在すると説明します。この3本の冠動脈は、お互いに独立していています。したがって、それぞれの冠動脈が、細く(狭窄と呼びます)なったり、完全につまって(閉塞と呼びます)しまうと、それぞれの冠動脈から、心筋へ十分な血液、酸素、栄養などを供給出来なくなってしまうのです。前者の様に、冠動脈が狭窄して心臓(心筋)に必要な酸素が行き渡らなく場合は、狭心症(特に、労作性狭心症と呼びます)であり、冠動脈が閉塞して、心筋に酸素が全く供給されなくなり、心筋が死んでしまう病態を、心筋梗塞と呼びます。つまり、狭心症は、一過性に冠動脈の血流不全(心筋虚血)が起きるのに対して、心筋梗塞は、心筋が死んでしまい、その死んでしまった心筋(梗塞部位と呼びます)は動かなくなり、心臓としての、ポンプ機能が著しく、低下してしまうのです。したがって、梗塞に陥った部位が、広いほど(心筋梗塞の範囲が広範であるという意味です)、心臓のポンプとしての機能が著しく低下してしまいます。このように、心臓のポンプ機能が低下した状態を心不全と呼びます。このような病態となると、多くの患者様が死に至ります。したがって、狭心症と心筋梗塞は、危険度から説明すると、大きな差が有ります。狭心症は、大きく分けて、労作性狭心症と安静時狭心症に分類されます。前者は、文字通り、労作中(運動中)に発症する、狭心症で、冠動脈の動脈硬化症(糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙など、単独、あるいは複合的な原因によります)が原因で、冠動脈が狭窄していまい、運動(心臓に負荷がかかる状態)になると、心筋に必要な酸素量が供給されないため、心筋が虚血状態(血液が足りない状態)となり、患者様は、胸痛(胸が痛い)、胸部圧迫感、息切れなどが生じるのです。糖尿病患者様は、その管理が不十分であると、冠動脈硬化症の進展が急で、冠動脈狭窄が、1本で無く、2本、3本と、たくさんの狭窄部位(多枝病変と呼びます)が生じて、重症の狭心症(不安定狭心症)になる患者様が多いのが特徴です。また、糖尿病患者様は、胸痛などの痛みがでない場合が多く(痛みの神経の伝達障害が有り、痛みを感じにくく成ってしまう)ことがあり、発見が遅れて、狭心症から心筋梗塞になってしまうケースが多いのも特徴です。また、前述しましたが、糖尿病患者様の冠動脈は、多枝病変が特徴であり、冠動脈のプラーク(冠動脈内にコレステロールの蓄積した状態)量が多い事も原因で、心筋梗塞の発症頻度が高率で、一旦発症すると、心筋梗塞範囲が広範囲で、重症化しやすい事が報告されています。つまり、死亡率が高いという事です。人生100年時代クリニック 院長 中込 明裕https://jinsei-100nenjidai.com/