​​​―神戸市「王子公園再整備基本方針(素案)」を事実上撤回―​ 
​久元神戸市長は対話のできる「神戸っ子市長」か?
 
 

​​「神戸っ子」の定義・神戸市に住む子どもという意味だが、神戸で育った住人の総称としても使われている。国際都市神戸らしく民族や国籍も関係がなく、神戸に住んでいればみんな「神戸っ子」となるらしい。​ 「神戸っ子」だからといって大したメリットはない。飲み屋に行って「神戸っ子」だと言っても安くならないし、八百屋や肉屋に行っても値段を安くしてくれることはない。 「神戸っ子」という言葉にはそれだけの意味しかないのか?ではあの阪神・淡路大震災の時に世界を驚かした被災者同士が助け合う絆の力はどこからきたのだ。 「神戸っ子」の定義の核心には、どんな時でも弱者に寄り添うやさしい心が存在していることだ。​​

 

 

​ はじめに  

 

6月、神戸市は「王子公園再整備基本方針(素案)」の「見直し」を発表した。神戸市の「見直し」に向けた、市の考え方と方向性について」によれば、「見直し」理由を「動物や景観に対する懸念の声」、「王子公園への愛着などから既存施設の存続を望む声が寄せられたことにある」と明示している。「見直し」は大いに歓迎する。老朽化に伴う王子地区の整備は必要だ、特に動物園や遊園地は神戸っ子の心の故郷だ。残され、改善されることは望ましいことである。

 久元市長になって行われたパブリックコメントはいくつかあるが、こんなに短期間にかつ大幅に見直されたケースは無かったのでいささか驚かされた。市民の反対意見が多かったことが理由であるが、それは(素案)がずさんで稚拙、神戸市民の王子地区愛と著しく乖離していたためであろう。

 一方、この「見直し」は久元市長が歴代の神戸市長のように議会の与党、地元有力者の「根回し」を先行させて、市政を進める前近代的政治家でなく、市民の意見を聞く耳をもつ政治家であることを市民に知らしめる結果になったようである。

 今回は「見直し」された内容を簡単に紹介し、皆さんが神戸市に対して神戸市のポテンシャル(潜在能力)を上げるために提言するための参考にしていただくようお願いする。

 

 

 

​​1、神戸市の各施設の「見直し」の方向性​​

 

 

​​(1) 動物園については

① 再整備にあたって、動物園と遊園地をあわせて、現在と同程度の敷地面積を確保します。
② 動物福祉の観点から、「公益社団法人日本動物園水族館協会」が策定している、必要な飼育面積や設備などの事項を盛り込んだ「飼育ガイドライン」に沿った獣舎等施設の更新や展示方法の導入を行うとともに、来園者の利便性の向上を図ります。
③ 動物園の運営においては、種の保存・ 環境教育・調査研究といった、公益的な事業として果すべき役割が大きいため、今後も民営化することなく 神戸市が公の施設として責任を持って運営していきます。
④ 公立動物園として、利用しやすい料金で運営していきます。​​​

 

 

(2) 遊園地について

① 再整備にあたって、動物園と遊園地をあわせて、現在と 同程度の敷地面積を確保します。
② 動物園には種の保存や環境教育などの機能が求められており、レクリエーションを含めた機能を動物園全体で充実させることとし、遊園地については、現在の施設への市民の愛着にも配慮しながら、動物園にふさわしいレクリエーション施設を検討します。​​

 

 

(3) 大学について

① 市内の若年人口減少が進むなか、神戸に住み働き学ぶ若年層を増やすためには、大学誘致は非常に有力な施策であり、「市域全体への貢献」と「近隣地域への貢献」の両立を果たすことができると考えています。
② 市域全体では、王子公園周辺の文教エリアとしてのポテンシャルを活かした優秀な人材の確保・育成・ 輩出、イノベーション機能の強化、国際性・多様性の創出により、都市ブランド力の向上等が期待できます。
③ 近隣地域では、学生・大学関係者など、昼間・夜間人口や王子公園駅の利用者の増加により、 地域商業などへの高い経済効果や周辺地域の賑わいが創出されます。また、高齢化による担い手不足の解消や学生の社会貢献、地域活動への参加、学びなおし(リカレント教育)の機会の提供などが期待できます。​​

 

 

 

​​遊園地の夢・テレビやラジオで聞きなれたテーマミュージックと、人気キャラクターの歌や踊りの中で過ごせるテーマパークは夢の中だが、夢は覚めると人をひどく孤独にさせる。 遊園地では子どもの歓声が聞こえるだけでなく、その表情も見える。子どもからも両親の表情が見えているはずだ。この広さと喧騒の割合は丁度よく心地いい。家族が触れ合える空間である。 なくすな遊園地!家族の絆が弱くなるぞ。​​​​

 

 

 

​2、神戸市の「見直し」に対する「神戸っ子」からの新しい疑問​​ ​​

 

 この疑問については前号の「王子公園を愛する心は阪神・淡路大震災の助け合いの心につながっていることを忘れてはいけない」​​―神戸市の「王子公園再整備基本方針」を検証する―​​と合わせてお読み下されば幸いです。

 

◯動物園について―(素案)では「陳腐な展示」と最大級の批判をしているので、展示方法がどのように劇的に改善されるのか注目しているが、見直しの中では「飼育ガイドラインに基づき」と、ごく普通の表現しかされていないので、改善は期待できそうにありません。

​​  家族で親しめるやさしい王子動物園を守るために動物園に見学に行き、神戸市に改善点を要求していきましょう。

 

◯遊園地について―(素案)では廃止される運命にありましたが、レクリエーション施設として存続することになりました。でも、レクリエーション施設の定義がわかりません。今の遊園地はどう変化するのかわかりません。

 安全・安心、低料金で遊べる遊園地を守るために動物園を見学し、遊園地で遊び、神戸市に改善点を要求していきましょう。

 

◯大学誘致について―(素案)では、王子公園一帯を「歴史や文化が薫るポテンシャルの極めて高い地域」と位置づけ、新しく大学を誘致することで、さらに高めようとするものであった。今回の見直しではさらに踏み込んで、「神戸に住み働き学ぶ若年層を増やすためには大学誘致は非常に有力な施策であり」と、若者が増えることの経済効果を強調している。​ 

 人口が減少し続ける神戸市にとっては大学誘致は苦肉の策かもしれない。しかし、大学誘致を経済効果を高める手段とするのもおかしいが、大学誘致が経済効果を生むというのも短絡的である。少子化と大学の多い近畿圏で新しい大学の需要は下がり続けている。また、交通の利便性の高い王子地区は通学範囲が広い。新しい大学に来る学生を神戸市内に定住させることは難しいのではないか。

 

※詳しい私たちの意見は​「王子公園を愛する心は阪神・淡路大震災の助け合いの心につながっていることを忘れてはいけない​​―神戸市の「王子公園再整備基本方針」を検証する―」​をお読みください。​