今回のお話は、戦争の仕組みと歴史です。

世界と日本の歴史の流れを同時進行で進めていただき、江戸末期から明治にかけての世界の動きがとても明確に感じることができました。

 

 

  江戸時代の鎖国政策により、日本は世界の中でも遅れていると考えられてきましたが、本当にそうだったのでしょうか。

 江戸時代、世界の情勢は、東アジアでは比較的平和な時代であったようです。これは、冊封体制といわれ、圧倒的な力を持つ中華(中国)が周辺諸国(ビルマ、タイ、ベトナムなど)を臣下として君臣関係を結び成立させた国際秩序によるものだといえます。周辺の国々は中国に貢物をすることで軍事援助などのお返しを中国から受けられるため、均衡が保たれていました。

 その一方、ヨーロッパでは、ローマ教皇への反逆や、独立戦争、革命などの宗教戦争が長く続き、教皇権が失墜したことで、各国の君主は誰にも従属しない最高権力(主権)を持つようになりました。これをウェストファリア体制と呼び、1648年ごろからこの体制が出来上がってきたようです。それぞれの国(君主)が「主権」を持ち、対等な外交関係を結ぶというルールです。現代もこの考え方を踏襲しています。

 

しかし、この形では、超国家的な帝国がなく、国家間で戦争が起こった場合、調停者がいないため絶え間なく戦争が起こる危険をはらんでいます。こうした事態を最小限度に抑えるために「国際法」が生まれました。そして戦争抑制のために、主権国家の法の上に自然法(神様の法律)を想定しました。

生命、自由、平等、財産(所有権)は神によって守られているという考え方です。また、「海」に対する国家主権の在り方も想定されています。

 

国際法では

①主権国家:明確な理由やケースを視野にその成立条件を考える

②独立:どの段階で主権国家と認めるか

③政権交代:国際条約の有効性

④戦争:開戦・終戦の合図、戦場の規定(時間、場所、人など)

などが決められています。しかし、この国際法も、何度も戦争が起こり、その経験と反省の積み重ねからできあがったものです。アメリカ独立戦争では国際法を援用し、条約の手続き、特命全権大使・公使の常駐など、外交儀礼(プロトコル)がほぼ確立されました。

戦争をコントロールする技術を身につけるのに200年という時間を要したのです。

 

 

 植民地化を進めていた時代の西欧諸国では、国際法の適用範囲が決められており、日本は未開の国と位置付けられていましたが、国際法をよく理解し、厳格に守ることで独立を認めさせ、文明国の一員とならなければなりませんでした。

 

 江戸末期、非常に優秀で気概あふれる若者がヨーロッパへ行き、その考え方、技術を日本に持ち帰ったことは江戸幕府の近代化政策を押し進めます。

 

オランダの協力で長崎に海軍士官学校が開設され、軍艦の操練、航海術、西欧医学などを学んだ勝海舟は神戸に海軍操練所を創設。ここで学んだ阪本竜馬が海援隊を設立するなど、時代のうねりを感じざるを得ません。

 また近代化を進める中で、忘れてはならない人物が「西周」です。国際法(万国公法)を訳した人物です。この時代の日本になかった「ことば」「概念」を生み出しました。今ではごく普通に使う「政治」「経済」「社会」「哲学」などの言葉は代表的なものです。

 

 薩長同盟と幕府軍との軋轢が増し、武力抗争になれば諸外国からの干渉も考えられる危機的な状況の中で、国際法をよく理解し、日本という国を守るために奔走した若者たちのおかげで、江戸無血開城とよばれる大きな節目を迎えることができました。

 

 

 鎖国という特殊な社会の中において、江戸から明治という転換期に若く情熱を持った人々が智慧と工夫と勤勉な国民性を如何なく発揮し、近代化を進めてきたこと、国内だけを見ていたのではなく、学びを通して世界を知っていたことが今の時代につながっているのであれば、日本が世界から遅れをとっていたとは言えないように思います。

 

 普段何気なく過ごしている私たちですが、この国がいかに独立を維持してきたか、どのように戦争を回避してきたのか、耳を傾ける必要があるのではないかと思います。戦争は平和に関する人々の無知が生み出すものかもしれません。

 

 

 世界から日本を見なければ歴史は分からない。世界史を知ることで日本史の動きが見えてくる。と先生がおっしゃいましたが、その通りで、私たちが知らない歴史がまだ多く眠っているように感じた勉強会でした。

 

文責 村上

 

これまでの活動

 

1.奪われた日本の歴史を取り戻すことの意義 神谷 宗幣

2.近世からの500年の歴史を振り返ると見えてくるもの  神谷 宗幣

3.日韓の歴史問題についてのワークショップ 神谷 宗幣

4.大東亜戦争は本当に終わったのか? 吉重 丈夫氏

5.人種差別から読み解く大東亜戦争 岩田 温氏

6.日本国憲法の制定過程を学ぶ 岩田 温氏

7.日本人はどのように学んできたか~学問と国史~ 久野 潤氏

8.大東亜戦争とインドネシアの独立 長谷川司氏

9.グローバル化の歴史と失われる日本の強み 施 光恒氏

10.歴史に学ぶ日本人の気概 久野 潤氏

 

11.情報戦の歴史  北野 尚人氏

12.日本の国体論と戦後教育 吉重 丈夫氏

13.阿波古事記と日本人の幸福感 、失われた倭国  三村 隆範氏

14.神話から学ぶ、日本の歴史 中東弘氏

15.GHQの検閲政策 岩田温氏

16.薩摩の原動力となった郷中教育と西郷隆盛 西郷隆夫氏

17.「歴史戦」はオンナの闘い 杉田 水脈氏

18.日本はなぜ大東亜戦争に敗れたのか〜経緯と原因〜 久野  潤氏

19.台湾と日本の交流の歴史と今後の展望 李久惟(ジョー・リー)氏 

20.「金融支配体制の歴史とマインドコントロール」 池田 整治氏

 

21.沖縄問題の起源:講和条約と沖縄の処理 ロバート・D・エルドリッヂ氏

22.沖縄返還と日米関係 ロバート・D・エルドリッヂ氏

23.尖閣問題と日米関係 ロバート・D・エルドリッヂ氏

24.日米同盟の形成と展開 ロバート・D・エルドリッヂ氏

25.日本人が知っておくべき「戦争」の話 京本 和也(KAZUYA)氏

26.自由民権運動の真実   黒田 裕樹氏

27.世界を動かす共産主義とグローバリズムの歴史 吉重 丈夫氏

28.近現代史を学べば日本人の意識は変わる 神谷 宗幣

29.「国難を救った明治の大政治家」小村寿太郎の情勢判断能力と  胆力  林 英臣氏

30.大日本帝国憲法の真実 黒田 裕樹氏

 

31.「明治維新の世界的意義」~西郷兄弟物語~ 中島 剛氏

32.「大河ドラマを横目に改めて学ぶ西郷隆盛」  久野 潤氏

33.「日本の歴史のターニングポイントを確認する」 神谷 宗幣

34.「日本の歴史と日本の精神」   神谷 宗幣

36.「十七条憲法と創生の神々」   小名木 善行氏

37.「イザナギ・イザナミと古代の朝鮮半島情勢」   小名木 善行氏

38.「大航海時代と大国主」   小名木 善行氏

39.「唐の皇帝と日本の天皇」   小名木 善行氏

40.「稲作の歴史と古墳のお話」   小名木 善行氏

 

41.「武士道の日本史」   倉山 満氏

42. 「家族の日本史」   倉山 満氏

43. 「お金の日本史」   倉山 満氏

44.「たまには真面目な憲政史 ~日本における近代政党の実験と挫折~」  倉山 満氏