車中ウォッチング【おばさん】

梅雨寒で、この季節なのに長袖を着用している方が目に付く。

ラッシュが終わった昼下がりの電車の中。

オレンジ色のブラウスをお召しの女性が、あたふたと駆け込んでくるなり黒い荷物を荷台に放り上げた。

そして、何やら始めた・・・。

両手を「イチニ・サン」と親指から広げたり折ったり熱心に指の体操。

電車にアセアセしながら駆け込んできて直ぐの行動・・・。

ん？まぁ、慌ただしい動きをするお方だ事！　

と、つい目が行く・・・。

それが済むと今度は肩を左右にゆすり、柔軟体操。

おまけに、首を前後に曲げだした。

後ろに立っていた若いお嬢さんの鼻のあたりに、体操女史のもじゃもじゃ髪が遠慮も無く襲い掛かる。のけぞるお嬢さん。

体操女史の、しっかとした清潔そうな装いといい、キリリとした潔癖感に支配された美しい顔立ちといい、縁無しメガネから見える涼しげな目といい、完璧に清潔好きの奥様風。

寸暇を惜しんでの彼女の自己鍛錬は、ぐーたらデブちゃんの私には耳が（目が）痛い風景。

と・・・

私の左隣に座っていた方が中腰になって降りるそぶり。

・・・

何気なく目を上げたら、体操女史と視線がバッチリ合ってしまった。

その時！

何と！

私にその体操女子がにっこり微笑みかけて来たではないですか！

えっ！えっ！えっ！

今まで座ったままこっそり上目遣いで観察していた私の視線を知っていたのか・・・。ひぇ！

どぎまぎしながら曖昧な表情でかわす私の目に映った彼女の行動・・・。

先ほど荷台に放り上げた黒い袋を慌てて引きおろしている・・・。
ということは・・・。

そこで「えっ？　えっ？　えっ？」という頭の中の疑問が解決！

彼女の「にっこり」は、私に左隣の席を確保してぇ！という合図だったのだ！

・・・、が・・・！

気が付いた時は既に遅し。

体格満点の若い男性がどっこいしょ！と座席を揺らして座った後だった！

だって・・・。彼女は右の方に立っていたのだから、私の左隣の席まで辿り付くには、三人の人を乗り越えて来なくてはいけないのよね・・・。

あり得ない・・・！(''ω'')；；

あれほど寸暇を惜しんで柔軟体操に励んでいた方が、

目くばせしてでも、何としてでも「座りたい」！だなんて・・・。

？？？

当てにした私の隣の空席が埋まるのを見ると、引き下ろした黒い袋を投げやりにまた荷台に放り上げた女史。　プイ！　と。

その後の彼女の観察はもうストップ。
一度も振り返らないで目的地で降りたことだった。

それにしても、あれだけ熱心に自己鍛錬運動をしていたら、何人もの人を乗り越えた空席確保など必要ないと思うなぁ・・・。

★
その風景を頭に「スケッチ」して挿絵を描こうとしたが、なかなかいい画像が描けなかった。

描かないとこの記事が完成しないので、これから描いてみようと思うが・・・。

もう、随分昔の風景なので、描けるかな・・・。

やっぱり描きにくい・・・。　　（恥）　　　下手！　（笑）

昔の「車中ウォッチング」から 体操おばさん