ジェンダー・バックラッシュの現状(若桑みどり) | 共同合宿所

ジェンダー・バックラッシュの現状(若桑みどり)

先週、立教大のジェンダーフォーラムで、若桑みどりの「ジェンダー・バックラッシュの現状・未来への展望」を聴いてきた。


ジェンダー・バックラッシュの大きな流れとしては、

従来:ネガティブ・バックラッシュ(単なる批判・ケチ) 

      ↓

現在:ポジティブ・バックラッシュ(安倍政権のもとバックラッシュが政策になっていった)。


という深刻な局面を若桑氏は訴えた。


確かにこれまでは、ジェンダーフリーをフリーセックスと故意に捻じ曲がるような言説を続けるバックラッシュどもを、「何馬鹿言ってんだ~」である程度済まされたかもしれないが、今は、家族国家再編という目標の下イデオロギー集団が形成され、政治の中枢にバックラッシュが入ってきているのだ。

これまでのバックラッシュの流れを見ると、02年に石原慎太郎が東京女性財団を廃止し、04年に東京都教育委員会が、ジェンダーフリーという用語の使用禁止し、05年に「過激な性教育、フェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」(座長:安倍)、06年になって、教科書検定でジェンダーや家族にも検定意見、福井県生活学習館からフェミニズム・性教育関連図書150冊撤去・・・・・ etc枚挙に暇がない。

ここにきて安倍政権になってから、教育再生会議が発足し、教育基本法改正、国民投票案可決、という流れできているが、つまりそれは「家族国民国家の再編」で、男性ー支配者・経済軍事、女性ー産む母性・未来の国民の提供と教育、天皇を中心とする家父長制国家の細胞として家族が機能しなければならない。したがって、夫婦別姓、男女平等、女性の性/生選択の自由決定は停止するのが目標。と若桑氏は言う。(サヨ的解釈と言う勿れ。流れは確かにそういうことになる。イデオロギーのキーワードは「家族」と「国家」。そしてこの二つをつなぐもの=「教育」。)。

安倍の周辺にいる、八木秀次とか、山谷えり子とか、高橋史郎とか、長谷川三千子などの面々がバックラッシュを助長してきたが、彼らはみな神道政治連盟としうステレオタイプなバックグラウンド。

ちなみに、安倍の言う「美しい日本」だが、それに乗じて「美しい日本をつくる会」 なんて発足されたが、その正式名は「美しい日本をつくる会 男女共同参画社会法の廃止をめざして」なのだ(安倍はいないが、八木秀次がメンバーだ)。

バックラッシュ側の言説の誤り、トンチンカンぶり、若桑氏言うところの「彼らの知的レベルの低さに付き合うのは大変」そのものである。しかし、悲しいかな、それが政治の中枢に入ってしまった。


若桑氏は、「ジェンダーフリーという言葉は間違った英語の解釈で誕生した言葉で(行政フェミ二ズム)、学者はあまり使いたがらなかった。しかし、このバックラッシュを戦うために、今後学者達は、敢えて使っていく」と締めた。(講演タイトルにあった「未来への展望」の話は無かった。苦笑)


しかし私としては、バックラッシュはさておき、安倍のこんなポジティブバックラッシュ体制が続くんだろうか?と疑問。

教育再生会議が、親学だなんだと、母乳で育てよ、子供は早く寝かせよ、と言って、母親への家庭回帰志向を要求しようとも、今の時代の現実はそんな精神主義にはそっぽを向くだけだ。

先日、扶桑社だって、つくる会(新しい歴史教科書をつくる会)と決別したし、つくる会も内紛している。

閣僚の失言・不祥事・自殺・・・そして年金データ5000万件紛失事件、、まあ安倍政権にとって追い風でないのは確か。