ココロの中は・・・ | 爺庵独語

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爺庵の独善的世相漫評

某月某日
 あれっ、何だこの記事。ぼくちゃんのところの高校の生徒が自殺したって? それもクラブの顧問に体罰を受けて? こりゃ大変だ。ちゃんとコメントしないと。もうすぐ安倍さんが来るから忙しいのに、なんてこった。よし、実態解明をぼくちゃんが責任を持ってやるって言おう。教育委員会に直接指揮命令できるようにするために、条例制定するってのもいいかも。首長が教育行政からオミットされている現状をぶっ壊すのに、ちょうどいい材料だし。

某月某日
 昨日のぼくちゃんのコメントはなかなか良かったよなぁ。「体罰禁止というスローガンだけで、何の対応策もない」なんて、ぼくちゃんにしか言えないコメントだろ。「手をあげてしまうことがあるとの前提で対処方法を考えるべきだ」っていう部分は、きっと教員からも絶賛させるだろうな。だって、それがみんなのホンネなんだから。あれっ? なんだかメディアの論調が変だぞ。ぼくちゃんのコメントに批判的な感じの記事になってるじゃん。おっかしいなあ。

某月某日
 今日のコメントはきっと絶賛されるだろうな。「正直僕は、クラブ活動の中でビンタをすることは、ありうると思っている。きちっとルール化できていなかったのが問題だ」なんて、役人に操られている政治家じゃ、絶対言えないもん。「保護者も含め、ある程度のところは教育的な指導だという暗黙の共通認識があったのではないか。にもかかわらず教育委員会が体罰禁止とか、手を上げることは絶対にありえないという、うわべっ面のスローガンだけで事にあたっていたことが最大の原因」だなんて、すごい本質に迫ったコメントだもんね。きっと「手を上げることを前提とするルールをつくるのか」って日教組とか共産党とかが批判するだろうけど、そんなザコ相手にしてやんないもんね。

某月某日
 おっかしいなあ。あっちでもこっちでも、ぼくちゃんのコメントに対する批判ばっかりだ。世の中頭の悪い連中ばっかりで、ぼくちゃんがどんだけ素晴らしいコメントをしてるのか理解できてないのかなぁ。けど、このままじゃヤバイから、今日はちゃんと真相解明に全力を挙げるって言っておこうか。そうだ、100人態勢でやるって言おう。教育委員会はそんなに人手を出せないって言うかもしれないけど、そう言ってくれたら反対勢力にして叩けばぼくちゃんの人気につながるし。ほんとに100人態勢にならなくったって、言ったもん勝ちだかんね。誰も担当者の数を数えたりしないし。弔問に行くっていうのもいいかも。ちょっと気が重いけど、秘書に日程調整させよっと。党の内部はガタガタだし、この件をうまく乗り切ってまた人気を盛り上げなきゃな。

某月某日
 あーあ、やっぱり自殺した子供の遺族を弔問するのは気が重かったなあ。けど、体罰容認発言がボコボコに批判されてるから、とりあえず撤回するにしても何かのきっかけがないといけなかったし、遺族に会って考えが変わったことにできたから、仕方ないか。ウソでも「考え方を改めないといけない。反省している」って言っとかないと、ぼくちゃんの人気がこれ以上下がったら大変だもん。今日の取材では、涙もみせられたし、きっと共感を呼んだだろうな。テレビはちゃんとそこを流してくれるかなあ。

某月某日
 よーし。そろそろ体罰容認発言で傷ついたぼくちゃんの人気を取り返しに行くぞ。そうだ、校長は全部公募にするって言ってやろう。人気回復のついでに、出世の道を閉ざされた教師の泣き顔もみれるし、一石二鳥ってやつだ。それにこの問題を起した教師はずいぶん長いこと転勤してなかったっていうし、それも批判してやろうっと。

某月某日
 すごいアイデアがひらめいたぞ! 今年の入試は中止! すっごいインパクトがある。これで行こう。きっと大騒ぎになるから、そしたら得意の詭弁で学校やら保護者やら生徒やらの意識改革のためにはそれぐらいの荒療治が必要なんだって叫んでやろう。うん、これだ。ワクワクしてきた。久しぶりにスポットライトを浴びれるシチュエーションになってきたぞ!

某月某日
 やったぜ! あんのじょう、大騒ぎになり出した。教育委員会もマスコミも猛反対じゃないか。ぼくちゃんの読みがバッチリ当ったぞ。この調子で二の矢を用意しておかなきゃ。そうだ、あの高校の教師を総入れ替えしろって言おう。きっと教育委員会は猛反対。いいぞ、いいぞ。そうなれば教育委員会を悪者にして、ぼくちゃん得意の劇場型政治に持ち込める。うーん。ぼくちゃんって、なんて頭いいんだろ。

某月某日
 予想通りの大反響! ぼくちゃんは注目の的! 受験しようと思ってた中学生が泣いてるとか、大人の失敗の責任を中学生に負わせるなとか、意味のわかんないことを言ってるやつらがいるけど、関係ないもんね。けど、ちょっとこいつらへの反論のフレーズを考えとこうっと。「生徒、保護者の意識を変えないと再生できない」。うん、なかなかかっこいいな。「校風、体質を一回ゼロにする」。うん、グレートリセットじゃん。ぼくちゃんにぴったりのセリフだ。「同じ校名でも、完全に違う高校として再生したとき、生徒を新しく迎えるべきだ」。これもいいなぁ。よーし。片っ端から言いまくってやるぞ。

某月某日
 そろそろクソ教育委員会にとどめを刺してやろうっと。入試を中止しなければ予算執行を停止する! どうだ、これ一発で降参するだろ。なんたって人間は札びらで顔をはたいてやるのが一番効くんだから。そうだ、人件費予算の執行を止めるって言ってやろう。これが一番効く。給料を貰えないようになるかも、っていう恐怖感が、公務員を奴隷にするためには一番いいんだ。ぼくちゃんがこの5年間で覚えた最大のテクニックだもんね。

某月某日
 今日の記者会見は腹が立ったなあ。まるでぼくちゃんが無茶苦茶なことを要求してるみたいなことばかり言いやがって。あんまり腹が立ったから「僕が間違っていたら選挙で落とせばいい」って啖呵を切ってやったぞ。でもぼくちゃんの任期はまだあと3年もあるから、選挙で落とすの、無理だもんね。これって、窮極の決めゼリフだろ。なんか、以前女子高生が私学助成の見直しに文句を言いにきたときに、「あなたが政治家になって国を変えろ」とか「あなたが選挙で落とせばいい」とか言ってやったのとおんなじ。筋が通ってるし、おまけに実行不可能。やっぱりぼくちゃん、天才だわ。

某月某日
 なんか、ちょっと風向きが・・・。公明党がほかの野党と一緒になって入試中止に反対し始めちゃったよ。文部科学大臣にも批判されたし。昨日「受験生は生きてるだけで丸儲け」って言ったのもよくなかったかなぁ、真実なんだけどなぁ。保護者からはいっぱいぼくちゃんの方針に反対の意見が来てるっていうし。よーし、今日は思い切って「中学浪人もありだ」って言って見よう。けど、これでまた人気が落ちたら困るし。こんなとき頼りになるのはオカンなんだけど、コスプレ不倫がばれてからというもの、相談に乗ってくれないもんなあ。ちょっと困ったなぁ・・・