・◆鞘納法/円神と巻刃◆・
・◆鞘納法/円神と巻刃◆・
天眞正自源流兵法開祖≪小瀬與左衛門尉長宗公≫は、其の刀剣操法の教えの中に於いて、御流儀の蘊奥を三つに区分し、それを天地人三段の法形として成立した。
日本武道の根本義は、形に内在される意味と、その意味を現わす・・表現する様式美と共に形式化された各流派の伝承形である。
近年、古流居合術に於ける『血振り』の所作では、香取神道流に代表される納刀前の「動作」を「回転血振り・・血ふるい・・」等と呼称するSNSが散見されるので、一考を要する必要があろう。
まず、日本剣法(居合術・剣術)の最終動作となる『血振り動作』で、本当に刀身に付着した血を振り払う事が出来るか・・については不可能である。
現代に伝承される各流派の居合術に於ける『血振り動作』は、形の区切りであり、残心の一部である。
天眞正自源流兵法に伝承される極秘剣の龍虎【曇耀/電光】には、『血振り動作』というものは、基本的に存在しない。
電光の形動作に於いては、身体動作の完結と同時に、切っ先三寸が鞘の内に有り、曇耀に於いては、刹那と称する斬撃を終えた後の動作そのものを定義していないのである。
故に、御流儀の形動作における『血振り動作』は、全て納刀前の儀之形式であって、実戦から生まれた流儀の形動作に対する感謝の気持ちを込めた儀礼である。
天眞正自源流兵法開祖≪小瀬與左衛門尉長宗公≫は、天地人三段の法形を御流儀蘊奥の領域として、香取神から授かった極意皆伝の蜻蛉傳書一巻を基に御流儀を開眼創始された。
自源流相傳書巻に於ける『鞘納法』とは、『神変童子尊形の三界万物自然の法に従うべき、神術之元至也』と御教示されており、「血振り納刀」と総称してはいないのである。
この天眞正自源流兵法の『鞘納法』は二法有り「円神鞘納法」と「巻刃鞘納法」である。
【円神】は、形の残心の最後に左手を鯉口に、同時に右拳で刀を頭上で回転させる『鞘納法』である。
【巻刃】は、左手柄内を緩めると同時に、右手にて刀柄を右に廻し、一回転して右手掌拳にて柄を打ち、そのまま逆手で納める『鞘納法』である。
太刀の刀身を巻く所作から「巻刃」と称するのであって、日本剣術に於ける最も古式の『鞘納法』である。
何れの『鞘納法』も、儀礼であり、様式であり、ひとつの形動作に於ける残心の終わりであり、そこに御流儀尊祖に対する感謝と尊崇の思いを込めて、稽古する事が大切と心得る。