私の勤務する会社は売り上げが低迷している。市場がシュリンクしているだけではなく、それ以上に何か問題があり、売り上げが競合他社に比べて低迷している。先月も結局全社必達だと大騒ぎして、結局本社と約束した数字は達成したと喜んでいるが、それだって前年比で見れば大げさに喜べる数字ではない。そもそも二桁増のマーケティング計画自体に無理があったというのが私の見立てである。
こういう状況になると、営業出身の部長クラスの考えるのは単純。要するにちゃんと訪問できていないから、売り上げが上がらない。ちゃんと訪問すればお客さんが注文をくれるはずだから売り上げがあがる。だから訪問を年初目標の120%にせよと言い出した。確かに売り上げが上がっている人は訪問回数が多いがそうでない人も訪問回数だけは多いというケースもある。部長たちが期待するような訪問回数を増やした分、売り上げが上がるとは正直思えない。既に今の売り上げの達成に力を尽くした人達は年初目標の120%の訪問をしている。
そもそも、今の営業体制は訪問を前提にしていなかった。大きな店だけを直接訪問して、そうでない店はコールセンターからの電話で対応するという形になっている。だから営業の直接担当店は300軒近く存在し、市区町村ごとに担当を割り振っているから直接の担当でなくても消費者クレーム対応から問屋から仕入れている一般小売店や酒屋への対応も行っている。まだ23区内なら担当は1人1区程度で済む。ところが郊外だと5~6個の市区町村を担当している。もちろん店の数が少ないのだがその分移動距離が長い。
訪問を前提としていない営業体制で、営業に訪問回数を増やせ、というのは一店舗の滞在時間を短くするか、長時間労働するしかない。大抵の場合は長時間労働にならざるを得ない。
確かに昔は小さな小売店でも販売力があった。ところが今は全体的に一般小売店の販売力は落ちている。やる気にも差がある。近隣の競争環境もそれぞれ異なる。むやみに訪問回数を増やすと条件を近隣の安売り店に合わせろ、という無茶な要求にこたえざるを得なくなる場合もでる。それは利益圧迫要因になり、周囲とのバランスを崩すことになる。
確かに定期的に訪問している営業マンに対して情が移り、急に必要なものをお願いしたり、ためしに取ってくれる可能性は否定できない。でもチェーン化した売店や価格志向の強い店舗に対しては訪問回数が増えても売り上げが上がるとは断言できない。訪問したら品だしをしたり作業をすることになるがそれに見合う売り上げを確保できるのだろうか、という点についても論理的な根拠に欠ける。
つまり、メーカー営業は販売店の販売力に依存しているから、いくらメーカーが営業力で押し込んでも販売店が売ってくれなければどうしようもない。数を売りたければ価格で対応するしかないし、価格以外で、ということになればどうしても作業する人間を大量に送り込む等の方法を考えるしかない。いずれもコストアップ要因だ。
販売店にたくさん在庫が積みあがることが目的だったら、訪問回数を増やしてお願い営業でよいだろう。それを売り切らなければ次の納品は出来ない。販売力がある小売店ならばそのための提案を実施してもらうことが出来るかもしれないが、店舗は狭く、自社製品だけを扱っている店舗でないと中々継続的に実施してもらえる可能性は低い。
冷静に考えると訪問体制と販売量の間に必ずしも正相関があるとは言い切れない。訪問回数を増やせ、とはっぱをかければ売り上げが上がるような経済状況でもない。消費者は使えるお金が限られ、その限られたお金で何を買うかを検討している。携帯やコンピュータなど消費者は他に使うものがあるから当然それ以外の支出は減るのだ。ましてや販売力の落ちている一般店、しかも昔良かった頃があった店ほど未だにその頃の考えから抜け出せない、に消費者が来るのかどうか。
現実を冷静に論理的に分析し、どういう対策が良いかを考えなければならない。非連続の成長という割りに、やっていることは昔のやり方。それでは絶対に非連続の成長なんて達成できない。やり方をまったく変えるくらいのことをやらないと、倍の努力で解決する問題でもない。
日本型経営と言う言葉自体がおこがましい。科学でも論理でもない、単なる行き当たりばったりの活動でしかない。そんなものにマーケティングという言葉を使わないでもらいたい。