岩場を抜け、とぼとぼと道を歩きながらようやくシェプシは口を開いた。
< 名前は何と言うの? >
それはきわめてありきたりの質問だったのに、詩人は奇妙なことを聞くとでも言いたげに
顔をわずかに歪めふっと嗤った。
長い髪がさらりと揺れてシェプシの頬を撫でた。
< そんなものはありません >
思わず詩人を振り仰いだ。
< 名前がない!?>
そんな、まさか生まれたばかりの仮子でもあるまいし。
問い返した声があまりにも高かったので、詩人のほうがかえって驚いて
一瞬目を大きく見開くとこの小さな連れを眺め返した。
< 産みの親、育ての親がつけてくれた名はありましたけれど、捨てたのです >
名前を捨てることなどできるだろうか、物ではないのに。
< どうして? >
< わたしを名前で呼ぶ必要は、誰にもないからです >
容姿に似合わない皮肉めいた微笑が浮かぶ。
シェプシはそれがどういう意味なのか考えた。
「紫の砂漠」 ハルキ文庫 【砂漠から来るひと】P80-81より抜粋
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この何気ないシーンは後々大きな意味を持ってシェプシの胸に、心に、何度も突き刺さります。
そう、続編の「詩人の夢」でも…。
それとは別に、この「詩人さんの髪がシェプシの頬を撫でた」シーンにときめいてしいまう私です
さらさらのシルクみたいな、少しひんやりとした感触なんだろうな~。
羨ましいぞ、シェプシ!
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