PassCode Zenith Tour 2017参戦記(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日11月12日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

再開後の一曲目は、

6.ONE STEP BEYOND

だった。イントロが始まると同時に、下手から今田夢菜が駆け込んできて、笑顔いっぱいに踊り、グロウルをかます。客席はヒートアップし、クラウドサーフが次から次へと発生。「ONE STEP BEYOND」は、メジャーデビュー後、上り詰めていこうとするPassCodeの苦闘と未来への希望を告げる曲。サマソニではフィニッシュ曲だった。続く、

7. TRACE

は今田夢菜のグロウルを全面的にフィーチャーしている。

「♪トレ・トレ・トレ… Woo!」というリピートが印象的で、「ZENITH」で際立ってきたメタル色を象徴し、疾走感のある楽曲である。

8. rise in revolt

は「♪湧き上がる衝動 次の一手踏み出すんだ 閉ざされた時代ならこの手で開いて 弾けだす感情 あの空へ突き刺すんだ 誰かが泣いてしまう前に 全部倒せ」という強気な歌詞と、途中に入る「ずんずんずんずずっずずん」という印象的なリフで、PassCodeの「確信」を感じさせる。

9. Never Sleep Again

ここで二度目のMC。今田夢菜も舞台袖へ下がることなくステージ上で話をする。

休養中、今田夢菜は、メンバーにしょっちゅうラインをしていたらしい。大上陽奈子に、休養中でもライブを気にしていたことをからかわれ「ホンマPassCodeのライブが好きなんやな」とツッコまれると、今田夢菜は、「だって、好きじゃなかったら、こんなしんどいの、ようやらん」と言うと、客席から感動の拍手と口笛。

それを見て、グッときたらしく、南菜生がライブ再開の煽りを入れる。「パスコード、好きになってくれますか!」「これからも盛り上がって…」と言葉に詰まり、やり直し。

「盛り上がってくれますか?」「もっと盛り上がって行きますか!」「行きますかー!」

ここから怒涛のフィニッシュまで突っ走る。

8月21日のトークライブで、今田夢菜が一番好きだと言っていた

10.Insanity

が始まる。ぼくは「ZENITH」では、この曲が一番好きだ。全編英語だが、途中、「♪Woo woo woo woo woo」という短いシンガロングパートがある。二階席ではちゃんと歌っていた客は少なかったが、1階からはうねりのようなシンガロングが聞こえてきた。今田夢菜のグロウルも全開。「What’s wrong!」という絶叫で気合をまき散らす。

11.bite the bullet

メジャー2ndシングルとしてリリースされた「ZENITH」の代表曲。

「♪憧れていた無欠な人間なんてどこにも居なくてきっと誰もが同じで壁にぶち当たって…」といったピュアな歌詞が、観客の胸に突き刺さる。ここがこのライブのピークだったと思う。

二度のMCを挟んだにもかかわらず、今田夢菜の足元はもうおぼつかない。おそらく治療と二か月弱の安静状態で、ライブをやりきる体力が落ちているのだと思う。少し後ろを向いて息を整えつつ、振り向いて笑顔を振りまく姿に、隣で踊る南菜生が時々目をやる。

12. 激動プログレッシブ

以降は、楽曲と今田夢菜の体力との戦いという凄絶な様相を呈した。今田夢菜は動きを止めて息を整えるところと、きっちり踊るところのメリハリをつけつつ、観客の方を向いた時には笑顔を絶やさない。二階席にまで手を振り、目線を送る。他のメンバーはシリアスな表情で、自分のパートをきっちりこなすことで全体のクオリティを維持する努力をつづけた。

観客はなじみの曲に、的確に合いの手を入れ、シンガロングし、ヘドバンし、常に拳を振り上げ、ハンドパワーをステージに送ってPassCodeを支えていた。

13. Scarlet Night

では、上手お立ち台に立っていた今田夢菜が後ろに着地しようとして転げ落ち、ついに倒れ込んでしまった。なかなか起き上がれない。だが、誰も助け起こそうとはしない。「倒れても手を貸さない」という暗黙の了解があったのかもしれない。フィニッシュ曲は、

14. Seize the day‼

曲終わり、南菜生は、観客に「この4人がPassCodeです。今日は来てくれてありがとう!」と叫び、ライブは終了した。

今田夢菜はそこでまた気を失うように崩れ落ち、ようやくメンバーが助け起こし、大歓声を受けつつ、下手へ退場していった。

20:15。

約1時間強、アルバム「ZENITH」を中心とした14曲。

正直、ライブ評どころではない。DVDが出ているStudio Coastや、ぼくが実見したサマソニ幕張の「圧倒される感じ」には程遠く、ライブ中盤から「夢菜頑張れ!」という雰囲気になっていた。

本来は南菜生の短いMCというか煽りでつなぎつつ、汗だくの全力パフォーマンスの迫力がPassCodeの持ち味だと思う。だが、今回は二回のMCで、まったりしたトークの雰囲気と今田夢菜の体力というリアルな緊迫感のせめぎあいだった。

BABYMETALの場合は、SU-ソロ、BBM、神バンドソロという「休憩」がとれる。2015年の高地メキシコシティでのライブは、その辺を考えたセトリだったが、それにしても大変だった。

PassCodeには、そうした楽曲、セトリ上のバリエーションはなく、4人が常に全力で歌い踊り、MC以外には休めない。ダンスは運動量に加え、曲中でテンポが頻繁に変わるコンビネーションなので手が抜けない。しかも全員歌パートがある。

実は、南菜生も、MCの途中で一度、「疲れた」と言って下手のお立ち台に座った。そういえば今日の南菜生の声も枯れていた。サマソニ幕張の翌日、8月21日に渋谷ヴィレッジヴァンガードのトークライブに行った時もそうだった。

今田夢菜が休養していた間も、残りのメンバーは、フェスや限定ライブをこなしてきた。

メンバーはBABYMETALより一回り上であり、大上陽奈子が唯一SU-より年下なだけである。メジャーデビューしたとはいえ、事務所は従来通り「手作り」で、小箱の単独ライブとアイドルフェス等に出演し続けるほかない。今田夢菜だけでなく、全員体力を削っているのだ。

今回の「ZENITH Tour 2017」は、11月10日を皮切りに、来年2月まで福岡から札幌まで、生バンドを帯同しつつ、全国16公演のライブハウスを巡業する。

広島でも11月23日、中区幟町のCAVE-BEでライブを行う。

南菜生が嬉しそうに言ったように、2月はTSUTAYA O-EAST(1300人)でライブを行うが、基本的には収容人数300名~500名前後の小箱である。チケット代は3500円。ライブ後には、サインや握手をする特典会もある。

BABYMETALの場合、2012年のLegend ”I”から1000人越え(O-EAST 1300人)であり、以降の単独ライブは、小箱といっても2000人前後のZeppクラスで、かつチケット代はPassCodeの2倍~3倍。握手会はもちろんサイン会も、2013年末のLive in Singapore以来、一切やらない。

つまりPassCodeは、楽曲・ダンスなど、ベビメタと同等のクオリティのパフォーマンスをやりつつ、商品構成がローカルアイドルのままなので、ライブをガンガンこなさないといけない収益構造になっている。

ロックバンド/メタルバンドは、基本的にメンバーが演奏し、フロントマンが煽り、歌うだけで、「踊らない」。だから、毎日ライブすることは可能だ。

だが、ベビメタが開発した「メタル+ダンス」は、正直言って相当キツイのだ。しかもカワイイ。だからみんなビックリした。

2014年~2016年に、海外単独ライブツアーをやり、国内小箱巡業は2015年Japan Tour以外やらなかった。だから「箔」がつき、国内フェスでの大動員、国内大規模ライブ(SSA、幕張メッセ、横アリ、東京ドーム)が成立した。

PassCodeには、ハッカーと呼ばれるコアなファン層がいる。

サマソニ幕張にはベビTを着た方が大勢いらっしゃったし、今回もライブ前の喫煙所での会話を聞いていると、メタルネームを持つ方もいて、ファン層は、ぼくもそうだが、ベビメタと若干重なっている。

ベビメタに慣れた立場からいえば、今パスコの運営側が考えるべきは、ファンとの距離が近かったインディーズ時代からの脱皮、「出し惜しみ」「プレミア感の演出」かもしれない。それはBABYMETALにはない「親しみやすい」というラウド系アイドルPassCodeのメリットを脱ぎ捨てることになるので難しいのだが、少なくともこのままでは過酷すぎる。

走り出してしまった今回の「ZENITH Tour 2017」を中断するわけにはいかないだろうが、来年度以降は、海外進出による「箔付け」や大会場への挑戦などで、せっかくのクオリティの高いパフォーマンスの収益率を上げ、「先のこと」を考えていくことが課題になると思う。

急激に冷え込んできた季節。ごまかしながらでも、ライブをこなしていけば今田夢菜の体力もついてくるだろう。とにかく、無事で、ツアーを成功させてほしいと思う。来年2月のO-EASTには再び参戦したいと思う。頑張れPassCode。