大嘗祭参列者を天皇陛下が皇居に招き開催された「大饗の儀」

前回の「歌舞」解説に続き、今回は「饗饌(おもてなしの膳)」についてご紹介させて頂きます。

冒頭の画像は、朱塗りの「御台盤(おだいばん)」と呼ばれれる両陛下の御膳


色合いや箸の置き方も含め、中国にルーツを感じる陛下の御膳には、参列者の献立に加えて蒸しアワビなどが並ぶそうです。

一方、参列者に供されたお料理の数々がこちら。
 


 

右側の黒色の箱で供されたお料理が「饗膳」で、左側の八角盆に載ったお料理が「酒饌」です
 


 

酒饌のお料理の多くは毎年の天皇誕生日などでも供されるものですが、この日の鯛は殊のほか立派で体長も30㎝を超え、淡路結びの金銀水引や紅白絹糸が掛けられ、尾には紙飾りが施され、本宴の格式の高さを物語っていました。

実際に食してみても、通常宮中でいただく鯛の姿焼き以上に磯の香りがより芳しく感じられ、大海の恵みを享受していることを強く実感することができました。

また、汁物も他の節会ですと白味噌仕立てで魚は鯉が使われるのですが、今回は赤味噌も使った合味噌で鱧が供されていました。

 
 

「饗膳」は、古くから宮中で行われてきた節会での饗饌の姿を今に伝えるもので、私もいただくのは初めてでした。

献立は左上から時計回りに、塩引鮭、焼雉、巻昆布、鯛鰭、飯(斎田米)。

あくまで想像ではありますが、大嘗宮の儀で天皇陛下が大神様に供されたお料理の数々も、このような姿だったのかしらと思いを馳せてしまいます。

それぞれ(いにしえからの伝承に従い調理されているため、保存技術が発達した現代の料理と比較するとかなり乾燥と塩味が強く、その味わいは野趣に富み、実に素朴で滋味豊か。


軟弱になった現代人にとっては咀嚼するまでかなり顎が鍛えられますが(昔の人々は歯が丈夫だったのだなとつくづく感心させられます)、噛みしめる度に素材の風味が滲み出して山海の恵みへの感謝を実感することができ、“神代”と繋がったかのような感慨を深くしました。 


 

神代と繋がったと言えば、最も神を近くに感じられたのが、土器(かわらけ)の酒器で供された白酒(しろき)黒酒(くろき)


悠紀田と主基田、それぞれの斎田米をブレンドし、斎場院の中に設けられた白酒殿(白木をもって構える)、黒酒殿(黒木をもって構える)でそれぞれ醸したままの原酒を漉したにごり酒で、赤土で作られた素焼きの瓶子から直径10㎝ほどの盃に注いで供されます。


一口含むと米の馥郁とした香り・甘みが口中いっぱいに広がり、それは鼻腔を抜け、やがて脳内に達し、これまで経験したことのないような清々しくも神々しい幸福感で全身を満たしていきます。

“五臓六腑に沁み渡る”というお酒の表現がありますが、それはあくまで身体的な感覚であって、白酒や黒酒がもたらす作用は、精神や魂といった人間の深部にストレートに働きかける霊的なパワーを持っているようで、その言い知れぬ感覚が神を近くに感じさせてくれました。

ちなみに大嘗祭の黒酒は、白酒に()()()の灰を加えてつくったものだそうですが、一般の神社でも神事の際に白酒・黒酒が奉じられ、その際の黒酒には藁灰が使われるそうです。

更に詳しい内容をお知りになりたい方は、宮中で配布された「献立」をご覧下さい。
 

 

 

 


この献立もそうですし、当日の乾杯に使用された大盃など、大嘗祭をめぐる様々な品々には「鳳凰」があしらわれています。
 


 

古来中国では、聖天子(徳のある優れた王)が即位すると、瑞兆である鳳凰が現れると伝えられてきました。

 

令和の時代に舞い降りた鳳凰が、多くの吉報を日本に、そして世界に世界に(もたら)してくれることを、心から願って止みません。

 

 

 

※「御台盤」と「饗饌」の掲載画像は、宮内庁より公表されたものです。