国会に初当選以来、主催して来ました政策研究会「ジャパン・ビジョン・フォーラム(JVF)」が、今年で設立25周年を迎えることとなりました。

 

これまで変わらぬご支援を下さった皆様方に、心から御礼を申し上げます。

 

これを記念して先週、東京大学宇宙線研究所長で、ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章先生をお迎えし、記念講演会を薫風吹きそよぐ綱町三井倶楽部で開催しました。

 

 

最も小さいと考えられる素粒子であるニュートリノに質量があることを発見してノーベル賞を受賞された梶田先生は、ご自身の分野のみならず基礎科学全般の重要性を熱心に発信して下さる研究者としても知られています。

 

現在、私が教育と並行して取り組んでいる自民党政務調査会での「科学技術基本問題小委員会」でも、昨年末にご講演いただきました。

 

党本部へのご出講のお願いに研究所へご挨拶に伺った際も、ほぼ初対面であったにもかかわらず委員会の趣旨をお伝えすると即座に快諾の上、その場で梶田先生ご自身が手帳を出され日程調整して下さったことには本当に感激しました。

 

党本部での講演でも、スーパーカミオカンデやKAGURAといったご自身の研究活動については一切触れず、基礎科学の普遍的な重要性と、国立大学の運営費交付金の削減により多くの研究者たちが直面している窮状を訴えるためだけに、すべての時間を費やされました。

 

 

基礎科学を守るーただその目的のために全エネルギーを傾注する徹底した潔さと誠実さ。

 

基礎科学の重要性に懐疑的な自民党議員や科学技術政策担当官僚を目の前にしても、一歩も引かずブレない姿勢には、心の底から感服しました。

 

実は梶田先生とは、もう一つご縁があります。

 

私どもの作新学院大学の前学長である太田周名誉教授が、小柴昌俊先生(カミオカンデでニュートリノの観測に成功したことにより2002年ノーベル物理学賞を受賞)の研究室で、梶田先生とは兄弟弟子だったのです。

 

そのようにご縁が重なったこともあり、25周年という節目の年に、梶田先生に記念講演会をお引き受け頂くこととなりました。

 

 

当日の演題は「日本の基礎科学の現状」。

 

昨年、同じ会場で開催した山中伸弥先生の講演と同様、作新学院の高校生もスカイプで参加していたこともあり、ニュートリノやスーパーカミオカンデといった宇宙物理学に関する初歩的なお話も冒頭にして下さいましたが、小一時間の基調講演の主眼は日本の基礎科学が置かれている厳しい現状についてであり、客観的なデータをその都度示されながら懇切丁寧に解説されました。

 

具体的な講演内容については、梶田先生からのご了解を頂戴した上で、また別の機会にご紹介させて頂ければと思います。

 

 

基調講演に続くトークセッションでも、引き続き基礎科学を中心にした科学技術イノベーション政策全般について、先進各国との国際比較なども交えてディスカッションさせて頂きました。

 

ただ、科学技術や政策論といった固い話ばかりが続いてしまったので、終盤に少しお人柄のしのばれる話題をと思い、

 

「ノーベル賞受賞の決め手は何だったんでしょうか?」

 

と無茶振りをさせて頂いたところ、

 

「とにかく僕はカミオカンデを作って行く過程が楽しくてたまらなかった。そういう大好きなことに出会えた。それが全てです。」

 

 

そうは言っても、カミオカンデやスーパーカミオカンデを建設して行く過程というのは相当過酷です。

 

厳寒の中でも、神岡鉱山の鉱夫の人たちと一緒に早朝トロッコに乗って地下1000メートルという深さまで潜り、日がな一日「光電子倍増管」という装置を巨大な水槽の壁一面に取り付けて行く(スーパーカミオカンデの場合、なんと13,000個も!)という、きわめて地味で地道な作業の繰り返しのはず。

 

では、その地味で地道な作業の行く末に、世紀の大発見が予見されていたのでしょうか?と伺ったところ、

 

「いやいや、まったくそうじゃなくて、ただ毎日カミオカンデが出来上がっていくのが、嬉しくてたまらなかったんです。」

 

これにはさすがに呆気にとられ、

 

「まぁ~、そんな赤ちゃんのような笑顔を見せられると何も言えませんが…。

先生、大変申し訳ありませんが私、全然理解できません!」

 

と答えると、会場ごと温かな爆笑の渦に包まれました。

 

 

よし、もうこのまま本音で伺ってしまおうと思い、

 

「だって、カミオカンデのような建築物を作りたいなら建設会社にお勤めになったって良いわけですし…。

あの、小柴先生のプロジェクトを引き継がれて、プレッシャーなどは無かったんですか?」

 

と伺うと、いつも淡々とされている梶田先生のテンションが珍しく高くなって、

 

「えーっ、なんでプレッシャーなんか受けるんですか?

そんなの全然ないですよ!」

 

と、さらに楽しくってたまらないという笑顔。

 

 

本当ですか?!という気持ちで、

 

「でも、ノーベル賞を受賞された時には感動されましたでしょう?」

 

と質問すると、

 

「小柴先生が受賞された時には、とっても嬉しかったです。」

 

「で、ご自身の(受賞の)時には?」

 

と畳み掛けると、

 

またもや赤ちゃんのような満面の笑みで、

 

「ビックリしちゃいました!」

 

 

数百億円という国費を投入されたビッグサイエンスを成功に導き、師匠である小柴先生に続きノーベル賞をその手にされた梶田先生の、宇宙まで突き抜けんばかりに透徹した「シンプル・マインド」を垣間見させていただいた瞬間でした。

 

          (後編につづく。。。)