山中伸弥教授 トークセッション(前編) | 畑恵オフィシャルブログ

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 iPS研究所所長の山中伸弥教授をお迎えし開催した「ビジョン・デザイン・セミナー」。

 

記念講演に続いて行われたトークセッションでは、iPS研究に関する最新情報はもちろんのこと、医療の本質、生命倫理、さらには教育論まで、他の講演会ではまず聞くことのできないような山中先生の深く、また多岐に亘るお話を伺うことができました。

 

 

実は当初、山中先生が受賞されたノーベル賞にちなんで「科学技術がもたらす光と影」をテーマに、トークを展開するつもりでいました。

 

ご存知の通り、ノーベル賞の生みの親であるアルフレッド・ノーベルはダイナマイトの発明で大富豪となり、その遺産のほほすべてを費やして同賞を創設しました。

 

ダイナマイトは、平和的に利用すれば採掘や土木工事の効率性や安全性を向上させ人々の幸福に寄与しますが、兵器として使われれば多くの人を瞬時に殺傷します。

 

まったく同じ研究開発成果が、その利用の仕方一つで、薬にもなれば毒にもなる。

 

それが、科学技術の宿命です。

 

アルフレッド・ノーベルは次のような言葉を残しています。

 

“この世の中で悪用されないものはない。

 

科学技術の進歩は常に危険と背中合わせだ。

 

それを乗り越えてはじめて、人類の未来に貢献できるのだ。”

 

ノーベル文学賞受賞者であるカズオ・イシグロ氏も、授賞式直前のインタビューで、

 

“文学の重要な役割は…(中略)…新たに発見された「知識の使い方」を考える道筋を示すことです。”

 

と語っています。

 

「人類を幸福に導くため科学技術はいかにあるべきか?」

 

そんな(いささ)か壮大過ぎるテーマを議論するため、導入として使用するパワーポイントまで用意していたのですが、山中先生の講演を拝聴しているうち、気持ちが変化して行きました。

 

大テーマを振りかざすより、山中先生が今一番話したいこと、伝えたいことを話していただき、自分も今一番山中先生に聞きたいことを聞こう。

 

きっとそれが、会場の皆さんにとっても一番良いトークセッションになると。

 

 

というわけで、徒手空拳でスタートしたトークセッション。

 

まず冒頭は、自らの研究時間を犠牲にしてもその実用化のため日夜奔走する、山中伸弥という研究者の偉大さを今一度知って頂きたかったので、敢えて次のような不躾な質問をさせて頂きました。

 

 “基礎研究者であるはずの山中先生

 が、なぜ一日も早くより安価に研究

 成果を患者さんに届けるため、かくも

 全力を傾注し責任を負われるのです

 か?

 

 正直、基礎研究だけやっていれば

 良かった、と思うことはないんです

 か?”

 

これまでのノーベル賞受賞者はおそらく全世界で900名程度かと思いますが、その中で自分自身の発明・発見が万人に幸福をもたらすまで責任を持って尽力された科学者というのは、かなり限られているのではないかと思います。

 

山中先生の答えは、是非YouTube動画でお確かめいただければと思いますが[https://youtu.be/lNFlWzCQvXY]、肝炎で亡くなったお父様を医師として救えなかった思いや、日本ではほとんどの研究成果が国内で実用化できず海外に流出してしまっている実態など、ご自身の堅固なビジョンが築かれた背景について語って下さいました。

 

 “「一日も早く」ということと、

 「より安価に」という条件が、

 反比例することはないんですか?”

 

という少々意地悪な質問もさせて頂きました。

 

どんな質問をされても一つとしてはぐらかすことなく、まずはご自身の心に真摯に向き合われた上で、精一杯の誠実さで答えて下さるところが、山中先生のすごいところだと思います。

 

この質問には、外科医として体験された、目の前の患者さんを救えた時にしか得ることができない、何にも代え難い感動について語って下さいました。

 

そしてその流れで、話はiPS細胞を作成し保存する「iPS細胞ストック事業」へ。

 

山中先生は、この事業はまだ企業には任せられず、免疫抑制剤を使用せずに患者さんへ投与できる環境が整うまではiPS研究所で行なわねばならないことを、強く主張されました。

 

 “医療は、ある部分は利益とは無関係

 な「公益」でなければ。

 

 中でもiPSストックや難病治療などは

 絶対に公益事業であるべきです。”

 

iPS細胞は通常、移植されると免疫による拒絶反応が起こります。

 

けれどごく稀に、拒絶反応を起こしにくいタイプの人がいて、現在iPS研究所ではそうした人たちの血液からiPS細胞を何種類か作成することにより、2020年までに国民の50%を拒絶反応が起こりにくいiPS細胞でカバーできる体制を構築中です。

 

ちなみにiPS細胞は、現在iPS研究所から一株10万円で大学や研究機関に提供されていますが、作成のコストは約3000万円かかっています。

 

この価格差は、国からの補助金で埋められていますから、もし企業がiPSストック事業を行なえば相当な価格高騰が起こり、潤沢な資金のある個人や組織でなければiPS細胞を活用できなくなります。

 

一方、価格を抑えようとすればコストを削減しなければならず、作成するiPS細胞の種類を減らすこととなります。

 

1種類のiPS細胞しか移植できなくても、免疫抑制剤を投与すれば、拒絶反応は抑えられますが、それは患者さんの身体に大きな負担を与え、新たな病気を誘発します。

 

特に、再生医療を受ける患者さんは高齢者が多く、免疫抑制剤の使用は大きな危険を伴います。

 

「木を見て森を見ず」

 

この言葉で、山中先生は医療現場の不条理を表現されました。

 

 “局所の病気は治すが、かえって患者

 さんの状態を悪くしている。

 

 元臨床医としては、忸怩たる思いが

 あります。”

 

さらに、次のように続けられました。

 

 “もし自分が投与されたら、自分の子

 に投与されたらどうかという視点で、

 医療行為は行わないと。”

 

私事で恐縮ながら、今年初めに心不全で倒れた父にも、投薬ドミノの疑いがありました。

 

82歳まで医療保険のお世話になったことが一度もなかった父に昨年、ごく初期の前立腺がんが見つかりホルモン療法を始めたところ、半年を過ぎたある日、心不全でICUに搬送されました。

 

その後、半月以上入院した病院では、突然に腸壁に穴があくほどの腸炎を発症。

 

いずれも、薬の副作用による疾患という明確な証拠が得られたわけではありませんが、80歳過ぎてもすこぶる健康体だった父が、ホルモン剤を投与してからというもの、命に関わるような病を短期間に発症していることは事実です。

 

父のことは余談でありましたが、山中先生とのトークセッション、この後にもiPS研究めぐる世界の動きや、生命倫理、さらには教育論まで、さらに興味深い話が満載ですので、続きは次回のブログで紹介させて頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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