TEATの中では最も使用頻度の高い方法が「筋パルス」です。

 

また、筋パルスを練習することは、体表解剖学のイメージが明確になる利点があります。つまり、体表にあるランドマーク(骨の指標)を目安に、筋肉の位置を探り当てることが容易になります。

 

さらに、筋パルスの練習時には、特に、目的の筋肉を収縮してもらい、膨隆した、もしくは、硬くなった筋肉を刺入のポイントにします。これにより、筋肉の作用を実践的に理解することができます。

 

さらに、さらに、浅層から深層の筋肉まで立体的に、その重なりを理解できますし、その他の組織、例えば、神経や血管との位置関係も明確になってきます。いわゆる局所解剖のイメージがつくわけです。

 

色々な部位に刺したり、刺されたりして、どのような感じ方をするのか?、また、どの部位に刺すと良く収縮を起こせるのか?を練習で身に着けていく事が臨床上重要になってきます。

 

この練習を重ねていく事で、知識・技術不足により起こる事故を防ぐことができますし、何より、適応の範囲がかなり広がるのです。

(よく、実技授業の練習中に、知識・技術が無いために、怖くて鍼がさせない学生さんを見てきましたが、その学生さんの多くは、卒後、刺さない鍼を実践されているか、あマ指治療に専念されていると思います。本人の好みと言えば好みですから、どちらでも良いのですが、これだけの武器を(少しの努力で身に着けられるのに)身に着けないのはもったいないと感じます。

 

それでは、筋パルスの方法について説明します。

 

方法
鍼を目的の筋肉に2本刺入したら、クリップを鍼に装着し、周波数、波形などをセットし、タイマーで時間を設定します。そして、筋が収縮するまでゆっくりと電圧を上げる。痛みがないことを患者に確認し、収縮している筋が目的の筋肉であることを確認します。開始後30秒はその部位を観察し、筋の収縮の程度が大きくなるようであれば出力を下げて、再度、痛みの確認をします。その後も数分毎に確認するようにします。

 

周波数の選択基準

コリ、慢性痛、筋痙縮、筋短縮には1Hz、急性痛や急性炎症には30Hzを選択します。

  • 例)1Hzでは、肩こり、首のこわばりや痛み、五十肩、腰背痛、脳卒中後の痙縮、関節リウマチの一部
  • 例)30Hzでは、急性腰痛、スポーツ後の筋肉痛、関節リウマチの一部

期待する効果

  • 1Hzでは筋肉内循環を高め、筋肉内温度を上昇させます。これは筋ポンプ作用によるものが最大と思われますので、骨格筋に通電した時、(痛みによる)逃避行動が起こらず、十分な筋収縮が得られることが条件です。
  • 30Hzでは血管透過性の是正や消炎作用が主なものです。

実際の刺鍼部位の選択方法

  1. 目的とする筋の位置と走行を確認し、筋に圧を一定にかけながら、筋線維の走行に対して垂直方向に動かすと、以下に述べる硬結や圧痛を探しやすいです。
  2. 筋硬結部と圧痛点を探します。筋全体もしくは一部が硬く緊張している状態を筋硬結と言い、術者が押圧した時、周囲よりも痛みを感じやすい敏感な部位を圧痛点といいます。
  3. 目的とする筋の硬結部および圧痛点を刺入点とします。

触察のコツ

表面から触りにくかったり、他の筋と間違えやすいものでは、抵抗運動を利用します。患者さんのどのあたりに圧痛や硬結が出現しやすいかを意識しながら触察することが重要です。
 

通電中の痛みの原因(主なもの5つ)

  • 鍼が曲がって刺入されていて、皮膚の神経を刺激している。
  • 鍼の深さが浅すぎて、皮膚の神経を刺激している。

以上の対策は、筋層までまっすぐ刺入し直すことです。

  • 電流量が強すぎる。

これに対しては電流量を下げることで解決します。

  • 神経の知覚枝の近くに鍼が刺入されている。
  • 炎症部位や過敏な部位に鍼が刺入されている。

以上の対策は、刺入部位を変えることで対応できます。