吾輩の猫が親になるのかもしれない -2ページ目

吾輩の猫が親になるのかもしれない

他猫を一切寄せ付けない孤高の黒猫クレオの記録。

クレオの中にいた命は、
子猫になってくれませんでした。



今か今かと待っていてくれた皆様、
いつもコレを楽しみに読んでくれていた皆様、
どうも有難うございました。
そして、嬉しい報告が出来なくて本当に申し訳ないです。


昨日の事。


前日からの出血と、
妙な落ち着きの無さが気になって動物病院に電話。
事情を説明すると、今なら空いているから診せに来てくださいなとの事。
意気揚々、と言うよりは一抹どころではない不安を胸に、一路最後の審判へ。

前回『妊娠宣言』をしてくれたのとは違う先生だったが、
ここは獣医二人体制の医院なので、この先生に診てもらったことも何度かある。

クレオを診始めてまず仰ったのが、

『臨月のねこちゃんのお腹にしては小さいわねぇ。本当に妊娠してるの?』


はい,そのつもりですが・・・。


検査の流れは,
まず綿棒で子宮から流出してる液体を拭い、
スライドグラスに載せてプレパラートを作る。
同時進行で、お腹の毛をバリカンで剃り超音波検査の準備が始まった。
あれよあれよと言う間に、真っ黒だったお腹が真っ白に。
とてもカッコ悪い。

『じゃあ,見てみましょうね。』

真っ白な上にジェルを塗られて葛きりのようにテラテラなクレオのお腹。
あの,バーコード読み取り機みたいな奴でお腹をぐりぐりすると
画面にグレートーンのモヤモヤ映像が映し出された。
正直,見たくはなかった。
これを見てしまったら,決定的に,もう逃れようもなく事実を突きつけられる。

素人には何の事やらさっぱり分からないモヤモヤ画像。
でも,そこに居るはずのモノが居ない事だけははっきり分かった。
先生も一生懸命探してくれている。

『63日目なら,エコーで見逃す事なんてできない程大きくなっているはず。
これだけ探して居ないと言うことは・・・残念だけど途中で流産してたのね。』


ああ、そうですか。


『でも今日来てくれてよかった。子宮内膜症になっているわ。
古くなった子宮の内膜が化膿してお腹の中に溜まっているの。
少しづつ排出されていたみたいだから良かったものの、
そうでなかったら,子宮が破裂して命が危なかった。』

ああ、そうですか。


『きっとお腹が痛くて苦しかったと思うわよ,人間でも子宮内膜症って大変でしょ?』


ああ、そうでしたか。そうですよね。


そうか,子猫が途中から膿に変わっていたのだ。
大きなお腹の正体はそれだった。

採取した液体も、顕微鏡で見せてもらった。
バクテリアと、壊れた白血球の残骸がウジャウジャ。

その後、抗生物質と痛み止めの注射をしてもらった。
一日二回飲ませなきゃいけない錠剤の抗生物質を一週間分と、
痛み止めシロップを手渡された。
そう,手渡された。

手渡されてしまった瞬間が一番キツかった。




振り返れば,思い当たる節はいくつもある。
さらに振り返れば,どの瞬間から子猫がいなくなっていたのかも思い出せる。
ある日突然,そこにあった火がまるで消えてしまったかのように、
彼女の中に命を感じる事が出来なかった日があった。
こういうのを女の直感?と言うのだろうか。
ただ、『いない』と思ったのだ。
でも、その直感をどこか遠くへ追い払って鍵をかけ、
気が付かなかった事、見なかった事にしていた。

今思えば,だ。

『振り返れば』から8行で書いた事は、
今思い付いた事ではなく、頭の中に常にあった8行。
でも,それは言葉になる前の段階で,
アルファベットのスープみたいなモノだった。
拾い上げて組み立てなければ,意味を持ち得ない。
それを拾い上げる代わりに、夢中になる事に専念する方を選択してしまった。
子猫は生まれる。
ブログを更新する度に,不確かな幻が確かな事実へ変わっていく、
そんな錯覚にも囚われていた。

今思えば。

こうなってみると,
このブログのタイトルさえ,全てを暗示していたようで何とも皮肉なものだ。
女の勘は,最初から働いていたのだろう。

今思えば。

そう,私はとてつもなくがっかりしている!
これは否定しようもない事実。
面倒くさい事を書き殴っているが,これも今の私に必要なプロセス。
読んで下さっている方には大変申し訳ないが,お許し願いたい。

昨日,今日で色々と考えた。
子猫を欲しがっていたのは,私。
クレオではなく,紛れもなく私だ。
クレオは別に子供など欲しくなかったのではないだろうか。


流産が分かったとき,先生が仰った一言がストンと心に落ちた。

『これが自然[Nature]よ。』

自然。

そうだよなぁ。
ヒトはいつから、自然に介入してモノ申せる程にまで偉くなったのだろうね。



生まれるとは何と狭き門よ。
命は奇跡。


よし、がんばろう。