ジェラルディン・ブルックス 「古書の来歴」(創元推理文庫)

 

いまだ内戦の傷痕が癒えぬ’96のサラエボで発見された奇跡の1冊の書物は、どの様にして生まれ、幾多の困難と危機を乗り越え現存したのかッ!?

伝説の古書で稀覯本の『サラエボ・ハガター』が発見され、銀行の貸金庫に厳重に保管されており、ソノ古書の鑑定にシドニー在住でオーストラリアNo1との評価が高いハンナ・ヒースに依頼の電話が深夜に鳴り響いた

ユダヤ教の聖典をイスラム教徒が守り抜いた・・・僅かに残された痕跡を辿り、コノ貴重で厳格な本は、どの様な困難に・迫害に・市政者や民衆の思惑を・そして歪んだ宗教観による焚書・数多くの戦火を逃れココにあるのかッ爆弾

蝶の羽・ワインのシミ・血と塩の結晶が物語る、人間のドラマとは如何にッびっくりマーク

第2回翻訳ミステリ大賞に輝いた、壮大なロマンに彩られた傑作ベル

 

 

去年の11月に文庫化されたのを年末に購入し、そして今読了した1冊で、そもそもは10年以上前に単行本が刊行されているが、広くお目見えしたのは多分今となってからだと思われる

事実、『第2回翻訳ミステリ大賞』を獲ったのはソノ時らしいが、殆ど話題になっていないし、ソノ賞自体も周知は余りされておらず・・・

*当然、単に私の「無知が原因」とも言えますが・・・ガーン

が、受賞に恥じない・というか値する価値と内容のストーリーで、現代パートで主人公のハンナがハガターを調べ、科学的アプローチを経て推理するシーンと、ソレに基づく歴史的出来事のパートが交互に並ぶ形式となっている

そして、ソノ「歴史パート」の部分が傑出して面白ろくハラドキさせられるし、悲惨で悲哀に満ちた来歴にえーんさせられる

正直、私らにすると「ユダヤ」というのは理解が難しく、宗教観も含め人種が辿って来た苦難の歴史は分かりにくく、同情だったり友好なども得にくかったりする

ソレはキリストにしてもイスラムにしても同様で、600P近くにもなるVolがほぼそ~いった内容で〆られている為、読みにくい部分も確かに多々あったりはする

が、そ~した面を除いても非常に面白かったし、ミステリの名に悖るコトのないシーンもあるし、ラブラブロマンスシーンやファミリアなパートも充分な衝撃を以って描かれている

創元推理文庫ならではの「みっちりした」形式には少々疲れはするが、本好きな方ならば満足出来ると思う、そんなお薦めの1冊拍手

 

 

角田光代・岡崎武志 「古本道場」(ポプラ社文庫)

神保町・早稲田・荻窪・鎌倉・・・人が集う場所には【必ず】古書店が存在するッはてなマーク

か、ど~かはさておいててへぺろ、古本者には、ならではの「掟」があり、古本道を究めようと決意したからには、ナニをさておいても掘り出しゾッキ本と古書市以外は精進しなければならないのだグー

売れっ子小説家の角田は、上記の様な固く熱い決意の元、師匠と崇める岡崎氏を訪ね、薫陶宜しく今日もせっせと街を・古本屋を訪ね歩く日々アセアセ

そんなんで原稿の方は大丈夫なのかッ絶望

売れっ子女流作家と元編集者にして古書関係の書籍を何冊も上梓している現ライターの二人の古本を巡る珍道中絵巻本

 

古本のガイドにもなっているし、古本屋街のガイドになっていて、巻の中にはたくさんの現場の写真やMapも添えられていて、「古本者」にはソレだけでニヤニヤしてしまう必携のガイド本

作者の一人で新たな弟子となった角田は、皆さんも~ご承知の売れっ子作家で、代表作に「八日目の蝉」などがある *と偉そうに語っていながら実は未読という・・・びっくり

その彼女が、古本系ライターの元を訪ね、一緒に店に街に行き、ブラブラと彷徨い迷っては、棚から平台から店頭の100均ワゴンから、「これゾキラキラ」の1冊を掘り出すというモノ

面白おかしい愉快な珍道中にお気軽エッセイも楽しいし、そして遂には海外の古書店にまで進出するという、ある種の悪ノリが、も~楽しくって仕方ないのですヨ爆笑

文庫化は’08と少し古く、確かコレは他のポプラ社文庫を購入した際の、中に入ってる広告栞に記載されてたので、急いで注文して取り寄せた1冊

そしてソコまでして手に入れて充分に満足した記憶があり、ソノ証拠にコレはしっかりと覚えているのに元の方はサッパリ・・・というのがナンともですワzzz