下村敦史 「アルテミスの涙」(小学館文庫)

 

交通事故により『閉じ込め症候群』となり、四肢麻痺の為一切のコミュニケーションが取れなくなってしまった若き女性・岸部愛華が、深夜突如吐き気を催すなど体調を崩した

当直中の産婦人科医・水瀬真里亜が診察すると、何故か彼女が妊娠していたコトが判明するッ!?

既に10週に入っていたが長期入院中であり、入院以前ではないコトは明らかで、寝たきりで動くコトすらできない彼女が何故そして誰に如何にして・・・

院内が騒然とする中、脳神経外科医で担当医の高森が犯行を自供し逮捕されるガーン

国会議員で彼女の父親は激怒し、やがてコノ事件は報道され世間が知るコトとなるのだが、そんな中、真里亜は本当の真相を探るべく、ある方法を使って愛華の<声>を訊こうとする

人の尊厳と命・そして究極の愛を問うヒューマニズムミステリ

 

 

先ず今回の重要な要素となっているのが、聴きなれない『閉じ込め症候群』なる症状なのだが、『遷延性意識障害』(昔風に言えば『植物状態』の人)と程近く、一切の身動きが出来ず意志の疎通ができない人のコトで、ただ『閉じ込め~』の方は意識はあるのだが身体が動かせず言葉も発生ない・というある意味地獄の様な・拷問の様な状態の方を指すらしい

ただ一か所【瞼】は動かせる為、ソコを利用してコミュニケーションをとるコトも可能らしいのだが・・・

こ~したかなり困難なで特殊なシチュエーションを下村は、今作の舞台に用意した

コノ事により、被害者である患者は全ての犯人・動機などの真相を知ってはいるのだが、ソレを伝える術を持たないというのが、ストーリーを複雑化させ混迷させている

更に付け加えて、そんな被害者が妊娠する・というはてなマークはてなマークはてなマークな問題を提起するのだが、モチロンミステリであるので犯人であるとか動機であるとかが問題ではあるのだが、肝心なのはその先にあるモノなのだ

ソレが今作をただのミステリに終わらせない問題を孕んでいて、故にソレがEdでの感動へと導いているドキドキ

近年、質の低下が叫ばれている「江戸川乱歩賞」なのだが、下村は呉と並んで賞作家としては注目・期待されている作家の一人で、特にココ数年の意欲は素晴らしく良作を発表し続けているOK

コノ調子でいけば、↓の現No1人気作家の後を追う存在となれると思うので、今後はより刮目しなくてわッ花火

 

 

東野圭吾 「虚ろな十字架」(光文社文庫)

中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が下された後に離婚した

数年後、ソノ小夜子が今度は刺殺される すると犯人の町村は直ぐに自首をして逮捕された

中原は死刑を望む小夜子の両親の相談に乗る内に、彼女が犯罪被害者遺族の立場から、死刑制度への反対の立場をとっていたコトを知るショボーン

一方、町村の娘婿である二村史也は、離婚して町村たちとの縁を切る様に母親から懇願されるが・・・彼には誰に言えない秘めたる過去があった富士山

当代人気No1となった東野が捧げる、愛と哀しみの叙情ミステリ

 

文庫化されたのが’17のコトで、コレは新刊ですぐさま購入し、当時やっていたyahooブログの方にUpした作品

よく知恵袋などで「東野のお薦め作品を・・・」というスレを見かけるが、私が答える時には必ず今作を推している

作品自体の出来・というか人気や評価ではそれ程高い・という訳ではないし、映像化もされていないのだが、個人的に思い入れがあったりするのでそ~している

ナニせ舞台がほぼほぼ地元なので・というのがある 正確にはも少し北ッ側の市なのだが、当然見知っている地域だし、馴染みもあるので、より物語に入っていけたんですよ

まぁ~ソレだけ・ッて訳じゃなく、ストーリー的にも東野らしいヒューマニズムを前面に押し出した内容だったし、初期の頃の固っ苦しさもなくなり、適当にマイルドになり非常に読みやすく心に染みいりやすくなっているからでニコニコ

本格派のミステリ好きからすると物足りなさは感じるだろうし、トリック重視な展開ではないのだが、読中読後に色々と考えさせられる問題が提起されているし、何よりミステリ・エンターテインメントとしてある意味、感性の粋に達しかけていると思っているキラキラ

以降の東野の活躍は皆さんご存知の通りだと思われるが、その始まりでも完成でもない、途中経過が良く分かる作品の1つだと思っているので、研究者の方にはかなり参考になるのではないだろうか・・・

ってか・・・研究者とかいるのかって話しですけどネてへぺろ