笑うと健康にいいアイドル | 谷口礼子オフィシャルブログ「じゃこのおもしろいこと」

笑うと健康にいいらしい。

 

もう6年くらい「帰ってきたキューピッドガールズ」というのをやっていて、月に2回くらいメンバーで集まってミーティングをする。内容は、次回のメニュー決めや、数ヶ月先の月間スケジュール決め、それと練習。

役者の稽古というのは普通は主に夜おこなわれるもので、それは多くの役者が昼間はアルバイトをして、夜稽古をするという生活をしているから。

でも、帰ってきたキューピッドガールズの柱は、「子どものいる女優が、子育て中でもできる限り人前に出て研鑽を積める」ということなので、ミーティングは昼から夕方にやる。

私は子どものいる立場ではないけど、女性としてはこの活動にとても協力したいと思うので、昼間の稽古でも参加している。必然的に、女子しかいない。

 

女性が集まると、とにかくうるさい。どうでもいい話が止まらない。やたらと笑う。大爆笑が起きる。

ちょっとした事を決めるのに物凄い時間がかかる。

どうやらこの状態を男性が見るととてもついていけそうにないようだ。

劇団のメンバーですら、敬遠している。

そりゃ、口を挟める隙もないし、同じ話を何度も聞かなきゃいけないし、男性からしたら苦行かもしれない。なんだって男と女はこんなに違うんだろう。

女性はこの、一見無駄のような時間を積み重ねることで、お互いを信頼して理解して、ひとつのことを一緒にできるようになる。

 

帰ってきたキューピッドガールズを始めた時もまあそうだった。

そもそも劇団なのに商店街で何かやるとか、お客さんからチケット買っていただかないで青空で無償でやるとか、毎週やるとか、誰もピンと来なかったし。

アイドルやるなんて嫌とか、こんな服は着たくないとか、こういうスタンスでは出たくないとか、喧々諤々しながら、でもいつしか「これどう?」ということで盛り上がって、「それならできるかも」と思い始め、全員が納得するまでそのミーティングは続いた。

みんなが納得しなきゃ、始めても意味ないと全員が思っていたから、全員が納得してからはスムーズだった。やたらと時間のかかるミーティングの中で、それぞれが気にしていることや、大事にしているものがなんとなく見えたから、その先「これ、○○さんは楽しめないかもしれない」とか「これは○○さんに聞いてからやったほうがいい」とか、そういうことが分かっていた。

最初に提案された「商店街で」「アイドル」ということを、私たち小劇場の女優なりに噛み砕いて噛み砕いてもう一度「商店街のアイドル」というのを構築した感じ。

それと、「子どもが熱を出して急遽休まなくちゃいけなくなっても、なんとかなるステージ」でないといけなかった。それはすごく大事だった。

ほんとうに、毎週やるって半端ないんだけど、6年目の今も続いているのはその最初の時間があったから。デビュー日も、みんなが納得してからみんなで決めた。それでよかったなあとつくづく思う。

 

今も、ミーティングは大笑いしながらだらだらと開催される。

だらだら、というとマイナスイメージかな、と思うけど、まあ、みんな大口を開けてだらだらと喋って、「大変、時間がない!」と言っては練習を始めるので、事実である。

なので、帰ってきたキューピッドガールズの合言葉「時間がない!」は事実である。

タイムリミットが来ると、それぞれ、子どものお迎えや晩御飯作りに散っていく。でもそういう女性だって、自分の夢や好きな場所を、持っていていいと思う。それが道行く誰かの為になるならなおいいじゃない。

 

笑うと健康にいいらしい。ほんとうに、笑わないより絶対に健康にいいと思う。

そんな私たちが、とにかくお客さんと一緒に笑えればいいやと思って毎週やっているステージ。

お金とか、肩書きとか、名誉とか、そんなものにはちっとも引っかからないし、責任感とか義務感とかプロ意識とか、そういうのは(あるけど)あまりメインじゃなくて。

帰ってきたキューピッドガールズは、もはや「笑うと健康にいい」というライフワークみたいなものだ。役者としてどうなのとか、仕事としてどうなのとか、そういう次元とはなんだか違う。

でも、おかげさまでわたしはそういう時間を積み重ねてこられたことで、役者としてもちょっと階段を登れたと思う。なんだかんだ、初めてのお客さんの前で毎週なにかのパフォーマンスをできるという機会は、小劇場の役者にとってはありえないシチュエーションだから。

 

ただ、演劇は「作品」を通じてお客さんとコミュニケーションをとるけど、
アイドルは「アイドル」自体を通じてコミュニケーションするので(「歌」とか「踊り」とか「コント」ではなく)、
だからなおさら、自分たちが心から楽しく笑っていられることは大事なのかもしれない。
むむ。アイドル論はわからないけど、たぶんこれもひとつのアイドル論。
役者がアイドルを6年弱演じて、気づいたことであります。