上海で勤務しているとき、常に営業で一日何件も走り回っていたため、

ほとんどタクシーか会社の営業車で移動していました。

会社は虹橋地区にありましたが、

浦東の方の事務所や工場に行くことも日常茶飯事だったので、

乗車時間は一時間ぐらいはありました。

今はどうか知らないけれど、4年前は、延安路はよく事故で渋滞し、

一件でも事故が発生すれば、少なく見積もっても、

虹橋から陸家嘴まで40分はかかっていたんです。(事故なければ20分)

 

10時頃のアポイントであれば、9時台には車に乗ることが多く、

たいてい、上海のAMラジオの《990听众热线》を聞いていました。

 
私はこのラジオ番組を超絶愛しています。
この番組は、市民が生活の中で遭遇する様々な問題を、
司会の海波を介してラジオの生放送で解決するという単純な番組なのですが、
これ、上海での長寿ラジオ番組として名高いのです。
いつも運転手やタクシーの運転手と一緒に、
これのラジオを聞きながらあーだこーだ持論を展開するのが本当に面白く、
この時間にタクシーに乗ることがあれば、
必ず、助手席に座ったほどです。(そうじゃなくても、助手席でタクシーのおっちゃんと話すのが好きだった)

 

何がいいって、この司会の海波の司会のうまさ!!

話の切り方も素晴らしいし、悪役に対するじりじりとした論理だった攻め方が素晴らしいのです。

映画や小説やドラマより、生放送でよりリアルなノンフィクションを展開してくれることに感動する番組です。

 

↓こういうお顔だったんですね。

声が本当に渋すぎて、頭の中で黄暁明みたいになってしまうのです。

 

この番組は、上海市民のありとあらゆる問題を、解決しようとする番組です。

遺産問題や、社会保険の所得問題、〇〇といったレアなものを探している、ということやら、

団地の中のごみ処理の問題、漏水、ごみ屋敷問題、騒音問題、
介護保険の問題、遺産相続に関する手続き、住宅の相続手続きに関するごちゃごちゃする問題。

メーカーへのクレームに関しては、ここに電話をした方が対応が早いです。

多くの問題は、家族の問題がかかわってきたり、
近所の人間関係がかかわってくる問題なのですが、それもうまく誘導していきます。

 

最初ほとんどの電話が、うだつの上がらない話し方の上海のおじちゃんおばちゃんで、

論点が不明な相談電話なのですが、

海波は論点をすぐさま明確にすることができます。相手のメンツをキープしつつ。

そして政府の関係各所等に電話で連絡をし、

ラジオ上で問題点に対して回答させ、解決を図っていきます。

番組時間内で回答を得られないことがほとんどなので、

そのような場合は、明日とか来週とかに回答を先送りしますが、

忘れ去られることはありません。
回答日には海波がラジオの生放送中から電話をかけるのです。

「先週の〇〇の件ですが社内ではどうなりましたか?」と。

 

全上海市民の耳が聞いている番組なので、
もし番組内での対応を怠った場合、

大きな社会問題となる可能性が非常に高いのです。

 

大抵、「990听众热线の海波です。

〇〇さんから~という問題について相談がありますが、

御社でどのように対処しますか?」

と電話がかかってきたら、相手は冷えあがるものです

 

でも、たまに、猛反撃で罵声の言葉を浴びせたりするような人もいるのですが、

それをうまくかわし、相手を冷静にさせて、

論壇に上がらせてくるという海波の話術が素晴らしいのです★

タモリが弁護士になったらこんな感じ?

 

この番組、日本語にして、皆さんに聞かせてあげたいと心底思うのです。

(賛同者きっといると思う)

中国では同様の番組がたくさんありますが、海波のこの番組がベストです。

中国はいろいろ情報統制やら一党独裁やらで難しい面もあるのですが、

悪いと決めたことに対しては徹底的に対処するという、一面もあるので、

この番組で悪徳メーカーや悪徳政治家がやり玉に上がれば、本当にスカッとするものです。

 

私が今覚えている一つのケースは、

あるおばちゃんからの保存容器「ロックロック」に関する質問でした。

 

 保存容器ロックロックのガラス耐熱容器を買った。

 100元ぐらいして少し高かったけど、良い品と聞いたから買った。

 でもすぐにプラスチックの蓋が変形して使えなくなってしまった。

 それで、蓋だけ買いたいと思っているんだけど、

 どこに行っても、蓋だけでは売っていない。どうすればいいか。

 

 海波すぐに、ロックロックのカスタマーサービスに電話して、

 おばちゃんと電話対応員と海波の三人で話を始めます。

 

 ロックロック「弊社では、蓋だけの単独販売は致しておりません。

         必ず、容器と一緒に購入してください」

 

  海波「しかし消費者の観点からしても、

     蓋だけ売ってくれないというのはどういうものか?

     環境問題的にも、ガラスの容器がごみになってしまうのはよろしくない。

     消費者保護法の観点から見ても~」

 

このやり取りを続けること数日。

結局ロックロックは蓋だけ販売する方針に転換!

 

海波がかかわるだけで巨大メーカーも耳を傾けてくれるんですね。

市民の弁護士といったところでしょうか。

 

こういう番組、日本でも増えてくれるといいんだけどなぁ。