誰が言い出したのか、食欲の秋とはよく言ったものだ。

たしかにエラ暑い夏から、今は朝夕だけでも若干涼しくなり、

少しずつ過ごしやすくなってくると、睡眠もとれるし、

それに比例して食欲も増してる気がする。


一方で誰が言い出したのか、おしゃれの秋というのもある。

夏はなかなかおしゃれはできない。

たいがいTシャツにパンツだから、限られたおしゃれしかできない。

おしゃれというとすぐにジャケットを思い浮かべてしまうのは僕だけだろうか。


そこでやっかいなのは、

この食欲の秋とおしゃれの秋は両立しないということなのだ。

食欲の秋を重視すると太る。

太るとほぼいろんなおしゃれな服が似合わなくなるのだ。


街を歩いていてよく見かける光景がある。

いかにもお金持ちそうな人が高そうな服を着ているものの、

太っているためにスーパーの安物の服にしか見えなかったりするのだ。


スーパーモデルの体型が極度なやせ型なのも理由のあることで、

きっとどんな服でも背が高くて痩せている方が似合うのだろう。

唯一の例外は着物かな。

着物はある程度恰幅がある方が似合うような気がする。

でもどうだろう…。

スリムな女の子の浴衣姿はかわいいから、そうとも言えないのかも。

恰幅あるおばはんの浴衣姿見て心底綺麗だと思ったことないので、

やはり着物でもスリムな方がいいのかもしれない。


なのに街を歩いていると、中年のおっさん、おばはんが、

でっぷり太っているのを気にすることもなくノシノシ歩いている。

多分徐々に太っていったので、気付かないうちにああなったのだろう。

そんなおっさん、おばはんは、ほぼ全員身なりに気を使っていない。

そのまま寝巻として寝れるくらいのラフな格好だ。

実際そのまま街中で寝てしまっても、誰も注意しないだろう。

彼らは人の眼なんてどうでもいいのだ。


彼らが周りの世界を意識しないように、

周りの世界も彼らのことを意識しない。

彼らはほぼ性別などどうでもよい存在に進化していて、

性別は彼らにとってほぼ意味のないものとなっている。

実際旦那のお古の服を着ている年配のおばはんもいるらしい。


かく言う僕もいずれそういうおっさんに進化する日が来るのだろう。

際限なく食べ続けることが気にならなくなり、

際限なく腹が出てもへっちゃらになり、

ヨレヨレのTシャツに短パン、サンダルでコンビニに向かい、

弁当とお茶とコーヒーとおやつのシュークリームをとり、

レジに並ぶ前にアイスクリームをとり、

レジに並びながらレジ前のバームクーヘンをとり、レジを済ませる。

そのくせ異性への関心だけは衰えることなく、

となりの女子高生のミニスカートをチラチラ見たりしてしまう。

「こいつキモっ!」という彼女の視線を受けつつも、

「あ、この子俺の方見てる。気あるのかも」と無理やりな勘違いをする。


あ~いやだ、いやだ。

そんなおっさんにはなりたくない。


だからもう少しだけ抵抗しよう。

今年は食欲の秋ではなくおしゃれの秋を選ぼうっと!!