ヘーゲルには元々興味を持っていたが、

何を主張している人なのかを知らずに来てしまった。

また、「考え抜く力」は自分自身のテーマでもあり、

本書を手に取った。

 

ヘーゲルとカントの認識論に対する共通点と差異の説明を通じて、

正しい認識をどのように得るべきかを考えさせられた。

常にバイアスが存在することを意識しつつ、

情報と知見を更新し、自身の認識をアップデートするサイクルを回し続ける。

 

そして、考え抜くために最も必要なことは

「結論が出ない苦しみに辛抱強く耐える」能力であり、

日々の意識の中に取り入れる必要性を感じた。

 

 

  • 様々な場面で「どっちつかず」に向き合い、それに耐えることは、私たちがヘーゲルに学べる「考え抜く力」の中でも最も重要なものである。
  • 正しい認識に至るためには、二つのことが必要だ。第一に、常に新たな情報を得て、知見を更新し続けなければならない。第二に、経験を通じて自分の認識の誤りを発見し、修正していくことが必要である。自らを成長させること、と言い換えてもよい。
  • 実際には、そのような「バイアスのない真実」など存在しない。正しい認識にたどり着こうとするなら、情報を受け取ることとそれを処理することが不可分であること、それゆえ、全ての情報は、自分の目で見た情報でさえ、「処理済み」の情報、何らかのバイアスが加わった情報であるということを自覚しなければならない。

  • カントにおいてもヘーゲルにおいても、統覚による「振り返り」が重視されていたが、このことは認識論から教訓を得る上で重要だろう。正しい認識に至るためには、新たに得られた情報と、これまで自分が持っていた様々な考えとの整合性を考えなければならない。これを通じて情報を取捨選択し、これまでの認識に誤りがあればそれを正す。これこそが、状況についての正しい認識と、巧みな対応の基礎となるはずである。

  • 「これまでの思考様式をそのまま適用するべきか、それとも思考様式そのものを変えるべきか」をその都度考えるというのもまた、本書で強調してきた「考え抜く力」の一つの形態である。過去の思考様式にこだわって硬直的な思考や行動を繰り返してはならない。他方で、新たな情報に簡単に飛びつきすぎるのもよくない。ここでも「考え抜く力」を持つ人は、安易な結論に飛びつかずに、両者の間で辛抱強くバランスを取って考え続けることができる人なのである。

  • 本質について考えた際には、物事の本質を見極めるためには、結局現れを見なければならないが、しかし現れをしっかり把握するには、本質があると想定しなければならない、という仕方で、抽象的なレベルでもこの「どっちつかず」の思考をヘーゲルが貫いていることも確認した。

  • 私はこのような どっちつかずの姿勢の中に、ヘーゲルの「考え抜く力」を見出したい。ヘーゲルという哲学者の思考は、常にあっちに行ったりこっちに戻ったりしながら、前言撤回を繰り返して進んでゆく。

  • 悩み続ける力を柔軟な発想へとつなげるために重要なことを、ここでは二つ挙げたい。第一に、常に新たな知識を採り入れ続けることである。そして第二に、知り得たこと同士の結びつきを考えることである。

  • アナロジー思考とは、一見すると全く異なるように見える分野の知識の間に似た構造を読み取ることによって、全く新たな発想、ブレイクスルーやイノベーションをもたらすことを指す。