宙組『白夜の誓い ―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』 | 愛と青春のじゃぶじゃぶろぐ~男子 in タカラヅカ~

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『白夜の誓い ―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』(宙組/東京)


18世紀コスプレ物でスウェーデン国王が主人公といえば、100周年を機にますます『ベルばら』色を鮮明にしている宝塚歌劇の鉄板もの。ましてや、宙組トップスター/凰稀 かなめの退団作ともなればいやがうえにも相応の期待がかかります。
『ロバート・キャパ』は今一つも『華やかなりし日々』が、ゆーぴーのサヨナラに似つかわしい、良作だったと思っているので“原田先生、お願いしますよ!”的気持ちであえて事前情報ほぼ皆無なニュートラル状態で初見。

ゆうちゃんさんの語るヴァーサ王朝の半ば神話的な物語を幼少のグスタフが親友のヤコブと共に聞いて自分の理想を宣言すると大人のグスタフ(きゃなめ)に入れ替わるという定番シーンを導入にタイトルナンバーから作品世界へ誘われます。インストで聴くといかにも北欧テイストなテーマ曲は歌が入るとどことなく「炎の巫女」風。それなりの数の登場キャラクターたちもおおまかに臣下、敵対グループ、農民などカテゴライズしやすいので相関図的に難しいこともなくストーリーが展開。以下気づいた、気になるポイントを羅列。


●ベルジェンヌ邸での舞踏会、風馬 翔は太い役が板についてきましたね。
お忍びで来ているグスタフの事を声高に話してしまうベルジェンヌに苦言を呈すヤコブ(きたろう)は“夜風に当たりに”場を離れるグスティの背中に大声で

「グスタフっ!!」(笑)
バルコニーで話すグスティとヤコブは同期二人ゆえの自然な空気感。ここで幼い日のナイフを見せる必要は?もったいない!


●クランツ(すっしーさん)ら親ロシア派の大臣たち。まっぷう、おいしいです。『キャパ』でもいい感じに悪いヤツを好演してましたし、原田先生、気に入ってるのかな。

●イザベル役のユーリちゃんはこの手の役が似合います。彼女の屋敷で戦術の本を読んでいるグスティ。先王の訃報が届く前にくちづけのひとつもかわしておけば、もっと“愛しあったふたり”感が印象付けられたろうにな~。

●すっしーさんの領地で二重の年貢に苦しめられているニルス(かいくん)率いる農民たち。かいくん、銀橋での歌も様になってきました。星に行ったらさらに弾けてほしいです。襲撃したグスティ&ヤコブに返り討ちにあい、捨てゼリフを残して逃げるニルスたちを震えながら見守る妹マーヤ(えびちゃん)。グスティに促され、兄たちのもとへ向かい下手から上手へ駆け抜けるえびちゃん、可愛いです。運動会の走りっぷりが甦ります。この場面も、ひとり残ったえびちゃんとグスティの会話をつくり、農民たちの状況、ニルスとマーヤの家族が誰にどうされたか、ニルスの顔の傷のワケなど植Gばりの説明ゼリフで構わないので情報をすりこんでおいても良かったのでは。兄妹の設定も楽しいだけに農民たちのエピソード含めもう少し描きこんだ方がその後の展開に深みが増したのではないかと思います。

●リリホルン(まあさま)がすっしーさんに脅されて操られてる件、説明不足でピンときません。父と兄は何をしたのか、今、どうしているのか、円卓の騎士を例えにもちだすほどの国王への忠誠心が言葉だけで終わっていて何のことやらで思いつめて自殺を図る場面に思いを重ねられず…。フィアンセのラウラ(リサ)は一場面とはいえ、けなげな印象を残します。


●ソフィア(みりおん)とは史実的にも不幸な結婚生活だったとされているようですが、コンビ萌えとはつくづく縁のない二人だったかと。まあさまとはぜひ、しあわせなコンビ愛を。

●グスティとヤコブの“国を思う”価値観、方法論がどんどん乖離し、それが最期の悲劇につながる展開は同期二人の見せ場たっぷりなだけに重ねて記しますが短剣の使い方がつくづく残念。

●書き割り、平面処理が異様に目立つセットはどうなのでしょう?色合いやデザインは良いだけに重厚感が得られずこれまた残念。まさか経費の問題とも思えないので、“あえて”そうしたのでしょうが、どうなんすかね?


●その他、『オスカル編』の画家(さっつん)を思わせる美月 悠ちゃん、花組のふみかさんと同じテイストが気に入っている春瀬 央季ちゃんがグッドでした。(そういえば『ブリドリ』かいくんのパーソナル編での悠ちゃんのツンデレ男子高校生っぷり、面白かったな。)

●wikiより抜粋
“ハンス・フォン・フェルセンを臣下とし、フランスとの友好関係を深めた”

“フランス革命が勃発すると、フェルセンをスパイとして送り込み、
フェルセンが行ったヴァレンヌ事件を裏で手引きしたのもグスタフ3世であり、
革命に対する反革命への情熱は、並々ならぬものがあったと言われている”

“暗殺の黒幕として、フレデリック・アクセル・フォン・フェルセン侯爵
(ハンス・アクセル・フォン・フェルセンの父)が噂されたが定かではない”

“王妃と不仲であった王太后”

“カールとフレドリク・アドルフの二人の弟たちとの関係も良好とは言えなかった”

これらのネタをぜひ盛り込んでほしかった!
特にフェルゼンの登場はマストだったと思います。

色々書いてきましたが、なんだかんだ言ってもこの芝居、嫌いじゃありません。賛否両論とは思いますが、全編にほどこされた凰稀 かなめオマージュ的演出。
『銀英』、『モンテ』な海戦とか、まるでメルシーなゆうちゃんさんとか、僕はとても楽しめました。
国を思う=組を思うで、新しい国(組)を作る礎になったグスティきゃなめのラストシーン、宝塚ならではのお約束“白くなった”世界で歌うテーマソング・リプライズは定石かと。

ショーの話はまた別項で。
宙組宝塚大劇場公演 『白夜の誓い―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』 『PHOENIX 宝.../宝塚歌劇団,凰稀かなめ,実咲凜音
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高画質BDでタカラヅカを楽しめるように!
過去作品もぜひ再発してほしいものです。




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